今作の主人公は吉井雄太(通称ユン/反町)、藤巻肇(通称チェン/大森)、菊原紀介(通称キンポー/津田)の3人。中学生時代に映画研究部で熱い青春を過ごした同級生だが、51歳となり、それぞれが人生の迷子に。ひさびさに再会した3人が、かつての映画研究部顧問教師の謎の失踪事件を追いながら、もう一度“青春の輝き”を取り戻す「1988青春回収ヒューマンコメディ」。
今作の舞台は、現代。人生に迷いながらも、ふとしたきっかけで1988年の記憶に立ち返る主人公たち。実はその“あの頃”は、古沢氏自身も中学生として青春を過ごしていた時代そのもの。自身の“原点”である青春期の記憶に立ち返りながら、これまで培ってきた“革新”の語り口を融合させた今作は、独特なユーモアとテンポ感に、ちょっぴり謎めいた展開で笑って泣けて、心がじんわり動き出す…これまでの古沢作品の中でも群を抜く新感覚のドラマとなっている。
――本作のストーリーは何がきかっけで生まれたのでしょうか?
1980年代の中学生の話はやりたいと思っていたんです。『スタンド・バイ・ミー』みたいな。そこから、大人のスタンド・バイ・ミーもいいなと。50代になって、人生につまずいたり迷ったりしている人たちって多分たくさんいるだろうとも思ったので、そういうおじさんたちのスタンド・バイ・ミーをやろうと。それと、80年代の自分たちの少年時代の話と並行してやっていきたいっていう、そういうアイデアから始まってきました。
――本作は80年代カルチャーがちりばめられていますが、それは古沢さんが大切に思っていることを取り上げているということなのでしょうか?
自分と同世代の主人公たちにしたので、ほぼ僕の記憶で書いています。あと、単に本筋と関係ない80年代トークで盛り上がる場面がありますが、意外と本筋に関わっています。
――3人のキャラクター設定はどのように考えましたか?
等身大のキャラクターにしたかったということが1番大きいです。普通に生きてきた人って、50になると、つまずいたり、人生に迷ったりするということがたくさんあると思うんですね。
がむしゃらに頑張っていた若い頃があり、失敗しても笑って許してもらえたり、こっぴどく叱ってもらえたり、目をかけて育ててやろうと思ってもらえたりっていう時代っていつの間にか終わっていて、誰も怒ってくれないし、失敗も許してもらえないし。多分そういう年代になっても、そこでまだ自分の中に燃える情熱のようなものを持てている人は恵まれている人。たぶん、多くの人は若い頃のエンジンみたいなものはすでに「ガス欠」になっていて、この後どう生きていけばいいのかってわかんない人ってたくさんいるんじゃないかなと思っていて。そういう大人たちがもう一度前を向くために忘れ物を取りに行くっていう話にしたかったんですね。
その時に、こいつは俺だって思ってもらえるように、あんまり突飛なキャラクターにせず、どこにでもいそうなキャラクターにするっていうことを心がけました。3人とも大体、僕の部分がありますね。
――3人のキャラクターを反町隆史さん、大森南朋さん、津田健次郎さんが演じることへの期待を教えてください。
反町さん演じるユンは、80年代って「オタク」っていう表現がすごく差別的な言葉というか、蔑まれていた言葉で、今みたいにポジティブにあんまり捉えられてなかった。
「オタク」として見られるということがすごく恐怖だったし、僕自身はそうだった。僕は今思えばすごいオタクだったんだけど、オタクと見られたくなかったし、スポーツもやったりしていたんで、体育会系っぽいふりしていたんです。もっと素直にオタクライフをしとけばよかったなって今思ったりするんで、そういうキャラクターを作りたいと思っていました。
本当に最近の反町さんは素敵だなと僕は思っていたので、そういう普通の小市民的な男を、スターとしての道を歩んできた人だからこそ、魅力的に演じられるんじゃないかなと思っています。
大森さん演じるチェンは、こじらせている。チェンが言いそうなことは僕が中学ぐらいの時に多分ほとんど言っていた言葉なんです。サブカル臭みたいなのを大森南朋さんは自然とまとってらっしゃるので、それを期待しています。
津田さん演じるキンポーは漫画を描くのがうまい。僕も漫画家になりたかったんですけど、そういう道に進むかどうかって、結構人生の中で怖いことで、決断しなきゃいけないことじゃないですか。僕はそんなの気にせずやりたいことやってきたけど、多分そういう道に一歩踏み出さなかった自分っていう人生もあったんだろうなって思っていて。
それをキンポーには託した。優しくて周りに気を使うキャラクターを、津田さんがめちゃくちゃ魅力的にやってくださっているなと思っています。
――近年80年代を描くドラマが増えているかと思います。改めてこの時代が取り上げられる理由や面白さをどう感じていていますか?
自分としては、みんなが同じような生活をしていて、同じテレビを見ていて、ヒット曲はお年寄りから子どもまでみんなが歌えて、流行もみんなが知っているっていう、ちょっとしたマニアックなセリフでも意外と多くの人がわかってくれるので、そういう題材として80年代が魅力的なんだろうと思います。
あと、例えば僕よりずっと先輩の作家たちで言えば、戦争を経験していたりとか、戦後の何もない時代をリアルタイムで経験した人とか、そういうのはもう本当に時代が大きく変わった転換点みたいなものを経験していらっしゃるから、それをドラマとかで描いてきた作家ってたくさんいると思うんですね。それは、作家としてすごく大きな武器を持っているなってずっと思っていたんです。
僕らはもう国が成熟した後の世代だから、そういうものがないなと思っていたんだけども、冷静に振り返ってみると、80年代と今は全く違う。それはインターネットの登場で大きく時代が変わったんだと思うけど、そういう大きく時代が変わったっていうものを書ける題材が、実は僕たちも経験していたっていうことに気がついたんじゃないかと。
――令和の時代の視聴者にどんな受け止め方をしてもらいたいと思っていますか?
あの頃は良かったっていう風に言いたいわけじゃない。今の方がいい時代だと思っています。自分自身はあんまり80年代のバブル真っ盛りの頃は、流行っているものとかも、あまり好きじゃなかったんです。
その頃、日本人が壊してしまったものとか失ったものって多分あるんじゃないかなって。いろんなものを手に入れた代わりに捨ててしまったものもあるんじゃないかなって思って、漠然とした話ですけど、そういうものを、取り戻そうとする気持ちみたいなものを見ながら感じてもらえたらいいなと思っています。

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