■生活が回らないことに気づいた大学時代の一人暮らし
発達障害の母と一緒に暮らしていて困ることは? と聞かれた高岡千絵さんの息子さん。「そうだな…」と考え込み、「(お父さん以外の)家族全員が発達障害。そういう生活が当たり前になってきているから、ピンとこない。希望がないわけじゃない」と、ハキハキとした姿勢で、「楽しく暮らしている」とコメントする様子に「息子さんすごくしっかりしていて素敵です」「それが当たり前って言葉に出来る息子さん素敵」などと多くのコメントが寄せられていた。
――反響のあった動画について、コメントや視聴者の反応を受けての印象を教えてください。
「多くの反応に驚きました。『みんな広い意味では発達障害』『個性の一つ』という前向きな声も多く、一方でさまざまな立場や感情があることも改めて感じました。発達障害は努力不足や甘えではなく、日常生活で困りごとを抱えるからこそ支援が必要なものです。
息子を動画に出したことで『子どもにラベルを貼るな』という批判も受け、戸惑いもありました。
――息子さんの「特性として捉えることで落ち込むことが減った」という言葉について、どう感じましたか?
「立派だなと思いました(笑)。診断で『名前が付く』ことで整理でき、必要以上に落ち込まず対処法を考えられるのは大きなメリットです。診断名やラベルには注意が必要ですが、使い方次第で自分を理解し助けを求めやすくする道具になります。
息子の言う『名前が付くと仲間が見つけやすい』という経験からも、困りごとを共有する大切さを感じました。日常的に特性について話すことは、自己肯定感や『助けて』と言える力にもつながっています」
――お母さま自身の発達障害について、きっかけや診断、向き合い方を教えてください。
「大学で一人暮らしを始めたとき、生活がうまく回らず、朝の支度が進まない・忘れ物を繰り返す・食事もとれず体調を崩すなどして受診し、ASDとADHDの特性があると分かりました。社会人になっても作業手順が守れない、予定を忘れる、書類が見つからずパニックになるなどの失敗が続き、自分を責めていましたが、息子の発達障害の可能性をきっかけに改めて学び直しました。受診や服薬、ライフハックの導入、周囲の支援を受けながら働き続け、『特性があっても工夫と支援で続けられる』という自信につながりました。今は診断名や検査結果を、自分を縛るものではなく『どうすれば楽に暮らせるかの地図』として活用しています」
■発達障害を知る“知能検査”は対策を考えたり…「困りごとがでた時の“地図”」になる
――知能検査で発達障害が分かったことで、ご自身の生活や子育てに変化はありましたか?
「特性を意識できるようになり、自分の困りごとに気づきやすくなりました。特にマルチタスクの苦手さには長年気づかず、運営している理科実験教室では複数の生徒から声をかけられたときに強い焦りを感じ『何から手をつければいいか分からない』状態になることも。これも周囲の一言で初めて気づきました。
段取りや時間管理も苦手で、意味や必要性が分からないことに取り組むのは負担になります。そのため、一般就労よりも自営業のほうが過ごしやすいと感じています。子育てでも中断の多い作業が続くと余裕を失いやすく、普段は夫に生活面を支えてもらっています。『苦手な環境』と意識するだけでも、徒労感や自己嫌悪が減り、「どうしてご機嫌でいられないんだろう?」というモヤモヤ解消の方が効果としては大きいと思っています」
――別の動画では、習い事の向き不向きにも特性が関係すると話されていました。子育てで、“知能検査”が役立つ場面はほかにどのようなものがあるのでしょうか。
「勉強だけでなく、日常生活で『なぜできないのか』を整理し、対策を考えるのに役立ちます。例えばお風呂上がりに体を拭き忘れる子には、叱るのではなく特性を手がかりに工夫します。順番で理解しやすい子には手順を細かく区切り、全体像で理解しやすい子には絵や見える化が有効です。つまずく原因が分かるだけで対策の方向性が見えてくると思います。知能検査は評価のためではなく、親子で困りごとの攻略法を見つけるための道具で、こうした経験は子どもが将来困りごとに直面したときにも、「どう工夫しよう?」と前向きに考える土台に繋がると感じています」
――動画を見ると、小学5年生の息子さんは自己理解や言語化がとても優れている印象です。知能検査はいつ受け、結果を知る前後でどのような変化や成長がありましたか
「小学2年生で知能検査を受け、検査結果は困りごとが出たときの“地図”として活用しました。検査中は集中して頑張ったので、『よく頑張ったね』と伝え、結果が出た後には得意・苦手の傾向を一緒に確認しました。
■「支えて下さっていることに感謝」 工夫や支援と共に自分に合った“回る形”を一緒に作っていきたい
――息子さんが「今は自分は結構幸せだと思っている」と話したことについて、お母さまはどう感じましたか。
「そう言ってくれて、私も幸せに感じました。息子の幸せは私だけで作れたものではなく、これまでの支援級の先生や友だちなど、周囲の温かい関わりや環境のおかげだと思っています。実は、転校で環境が変わったりなど心配もありましたが、この言葉が安心にも繋がりました。これからも、息子が安心できる環境をどう作るかは、親として大切にしていきたいと思っています」
――発達障害のある方、またその周りの方に伝えたいことはありますか。
「発達障害の特性を持つ方へ。生きづらさにはどうにもならない部分もあり、それがしんどいと思います。診断名や検査結果は“レッテル”ではなく、『困りごとの地図』として使ってほしいです。努力不足や価値の問題ではありません。工夫や支援を借りながら、自分に合った“回る形”を一緒に作っていけばよいと思います。
身近に発達障害の方がいる方へ。
――これからの向き合い方と、社会に望むことがあれば教えてください。
「私は特別支援教育士として、当事者として『発達障害があっても工夫と支えで生活を組み立てられる』姿を見せたいです。発達障害のある子どもが、昔より“見える化”されるようになってきた分、いろんな生き方が認められる社会になっていってほしいと思っています。
それから知能検査ももっと身近に、結果を“丁寧に活用できる文化”が育ってほしいです。服薬だけで終わりではなく、結果を地図として読み解き、生活の作戦会議を定期的に行える社会になってほしい。そういう心理士さんの継続的なコンサルティングなどが、もう少し当たり前になったらいいなと思っています。そして支援が続く社会にするには、支援者が安心して働き続けられる土台も必要だと思います」
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