主人公は、複雑な家庭環境で育ちながらも、祖母の期待に応えて教師になるという夢をかなえた篠宮真唯子(黒島)。ある日、教え子・佐伯章子(山崎)のもとに一通の手紙が届く。差出人は「20年後のわたし」。半信半疑のまま返事を書くことで、父を亡くした悲しみや、心を閉ざした母との孤独な日々に耐えていた章子だが、母の新しい恋人からの暴力、壮絶ないじめ、そして信じがたい事実が彼女を容赦なく追い詰めていく。深い絶望の中、章子は唯一心を通わせる友人・亜里沙と「親を殺す」という禁断の計画を立てるのだった。
そんな章子を救おうと真唯子は、残酷な現実と社会の理不尽さに押しつぶされそうになりながら、それでも手を差し伸べようとするが―。“未来のわたし”からの手紙が導くのは、希望か。それとも、さらなる絶望か。
解禁されたカットには、真唯子が、物語の行方を大きく左右する“手紙”を静かに見つめる姿をはじめ、次々に襲いかかる過酷な現実に呑み込まれそうになりながらも懸命に生きる少女・章子が、声にならない想いを叫ぶ瞬間が捉えられている。
さらに、章子と母・文乃(北川)が夜の街を必死に駆け抜ける姿や、まるで生きる希望を失ったかのような文乃の表情も刻まれ、観る者の胸を強くざわつかせる。
また、真唯子が鋭い眼差しで教え子の口を塞ぐ、息を呑むほどの緊張感に満ちた瞬間も収められている。
一方で、真唯子を包み込むように優しく抱きしめる恋人・原田勇輝(坂東)や、何かを見据えるように静かに佇む章子の父・良太(松坂)の姿もあり、登場人物それぞれが抱える絶望と安らぎ、相反する感情が複雑に交錯していく様子が印象づけられる。
監督を務めるのは、『ラーゲリより愛を込めて』『護られなかった者たちへ』などで知られる瀬々敬久。人間という存在の明と暗を鋭く表現してきた監督が、声にならない痛みを抱えて生きる人々の“見えない声”に寄り添い、社会の陰に潜む痛みとかすかな光を鮮やかに描き出す。
映像化のたびに大きな反響を呼んできた湊かなえ作品。直近では、禁断の衝撃作『人間標本』のドラマ化も話題を集めている。そんな数ある湊かなえ作品の中でも、複雑な構成ゆえに映像化は困難と言われてきた本作の映画化について、湊は「社会問題を深く、鋭く、温かい目で描かれる瀬々敬久監督に映画化していただけることになり、心から感激しました」とコメント。さらに、原作に込めた思いが余すことなく掬い上げられた完成度の高さに、「いち鑑賞者として感動し、泣きました」と最大級の賛辞を寄せている。
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