◆300円超え商品で“50円市場”への殴り込み 玩具メーカーの強みを生かした挑戦と勝機
――まずは商品の開発経緯と、ネーミングの由来について教えてください。
【小笠原麻里さん】 企画が立ち上がったのは1999年頃です。当時『チョコエッグ』などの食玩市場が拡大していたことを受け、「入浴剤でやってみたらどうだろう」というアイデアから始まりました。コンセプトは親子の入浴コミュニケーションの促進と、今までにない驚きの提案です。商品名は、お風呂から何かが生まれる「卵」の要素と、驚きの「びっくり」を掛け合わせたのですが、よりインパクトを持たせるため、当時の時代背景も含めて「びっくらこいた」という言葉から「びっくらたまご」と名付けられました。
――入浴剤市場においてバンダイは後発だったと思いますが、どのような勝算があったのでしょうか。
【小笠原麻里さん】 弊社は入浴剤や日用品の専業メーカーではありませんので、普通の商品化では勝算がないのは確実でした。しかし、バンダイには「おもちゃ」「遊び」「エンタメの提供」「造形の技術」という強みがあります。単に入浴剤を売るのではなく、入浴剤とおもちゃを組み合わせ、「バンダイらしい遊びの要素」で戦えば、他社にはない価値を提供でき、勝機があると考えました。
――発売当初、社内での理解はすぐに得られたのでしょうか。
【小笠原麻里さん】 「お風呂で遊ぶ」という企画自体の理解は得られましたが、最も難航したのは「価格」です。
◆大人もハマる推し活と“風呂キャンセル”回避の救世主 「入浴のイベント化」で新たな体験価値提供へ
――近年、お風呂が面倒な「風呂キャンセル界隈」の人々からも、入浴の動機づけになると支持されています。
【小笠原麻里さん】 私たちもSNSなどの声で気づかされた部分が大きいのですが、仕事で疲れた大人の方々にとって、入浴準備やドライヤーの手間は憂鬱なものです。そんななか、『びっくらたまご』があることで「お風呂に入らなきゃ」ではなく、「この体験をしてみたいからお風呂にお湯を溜めよう」という意識の変化が起きているようです。
【片野裕太さん】 私たちはこれを「入浴のイベント化」と捉えています。「お風呂に入りたい」と思ってもらうというより、「この実験的な体験をしてみたい」という欲求が先に来ます。最近では、泡風呂になったり色が変わるギミックを含め、入浴剤が溶ける過程にストーリーを持たせています。単なる入浴ではなく「体験価値」を提供できていることが、結果として「風呂キャンセル界隈」の方々の背中を押すことにつながっているのだと思います。
――かつての子ども向けから、ターゲット層が大人へと広がっていますね。
【小笠原麻里さん】 少子化やコロナ禍の巣ごもり需要を受け、2022年頃から大人をターゲットにした「ドラマチックお風呂シリーズ」を強化しています。例えば『ONE PIECE』や『ドラゴンボール』などのハイターゲット向け商品では、単にマスコットが出るだけでなく、作品の世界観を重視しています。「悪魔の実を食べている能力者は海に沈んでしまう」という設定に合わせてあえてマスコットを沈む仕様にしたり、入浴剤のデザインが一星球から七星球までドラゴンボール型 全7種となっており、集めるストーリー性を高めたりしています。
【片野裕太さん】 アーティストコラボの影響力も凄まじいです。Mrs. GREEN APPLE様とのコラボでは、これまでメインだったお子様を持つ親世代だけでなく、ご年配の方の購入比率も高く驚きました。IP(知的財産)の力によって、幅広い年齢層の方に『びっくらたまご』を手に取っていただけるようになっています。
――通常より高価格帯の商品も増えていますが、ユーザーの反応はいかがですか。
【小笠原麻里さん】 例えば「ANNA SUI(アナ スイ)」とのコラボ商品は1個1000円(税抜)を超える価格帯でしたが、非常に好評でした。ブランドの世界観を崩さないよう、ANNA SUI様監修のもとオリジナルの「ティーローズの香り」を開発し、お湯の色も紫にラメが輝く仕様にしました。マスコットもステンドグラス風の高級感ある仕様にするなど、こだわり抜いたことで、価格以上の「体験価値」を感じていただけたと考えています。
――「びっくらたまご」はバラエティに富んだ品揃えですが、リピートしてもらうために工夫した商品はありますか?
【小笠原麻里さん】 集めて積める「つむまる」シリーズや、入浴剤からでてくるプレートをマグネット状の額縁に入れて飾れる「マグネットミュージアム」など、集めることでより魅力が高まるシリーズ・企画の工夫も行っています。
――入浴剤としての安全性についてはどのような基準を設けていますか。
【小笠原麻里さん】 浴用化粧品として肌に触れるものと子ども用のおもちゃとの組み合わせであるため、品質の安心・安全を最優先としています。法令(薬機法)で定められた基準に加え、長年お付き合いのある生産メーカー様と共同で、原料の安全性・肌刺激性・製品の安定性などを確認する独自の品質基準を設けています。新しい香りや処方を開発する際には、一定期間の検査や試験を行い、安全性を確認の上、慎重に商品化進めています。
【片野裕太さん】 コラボのお話をいただいた際、スケジュールの都合で「●●月に出したい」と言われても、この検査期間だけはどうしても短縮できないため、泣く泣くお断りすることもあるほど、安全性にはこだわっています。
◆特許取得も…技術で描くIPの世界観とグローバル展開への展望
――製品化する上で、特に技術的に困難だったシリーズはありますか。
【小笠原麻里さん】 映画『JAWS』とのコラボ商品です。「ドラマチックお風呂シリーズ」の第1弾として、ターゲットを大人に振り、価格も高単価でした。仕様面では、お湯が海のような青色に染まった後、ジョーズが出てくる瞬間に赤色が広がるのですが、色が青から赤へ変化するタイミングの調整が技術的に非常に困難でした。
【片野裕太さん】 社内でも「もっとリアルに」とこだわり抜いた結果、想像以上のエンタメ性が生まれました。また、日々悩ましいのがマスコットのポーズです。かっこよく手を伸ばしたポーズなどは、入浴剤を固める「打錠」という工程の圧力で割れてしまうことがあるため、企画と生産の現場で「やりたいこと」と「できること」のせめぎ合いが常にあります。
――「進化系びっくらたまご」など、新しい技術開発にも積極的ですね。
【小笠原麻里さん】 入浴剤が溶けると、様々なモチーフの形をした「バスペタル」が散って広がる技術などは特許も申請・取得しています。他にも、湯面にシャワーを当てると泡風呂になるものや、溶ける過程で色が変わるものなど、入浴剤が溶ける時間そのものにストーリー性を持たせています。
【片野裕太さん】 最近では「エビフライ」の形をした入浴剤からマスコットが出てくる商品など、企画チームが「揚げているみたいで面白いよね」と盛り上がったアイデアを形にすることもあります。こうした技術の進化が、キャラクターの世界観を広げる武器になっています。
――最後に、今後の海外展開や展望についてお聞かせください。
【片野裕太さん】 売上の約30%をインバウンドのお客様が占める小売店様もあり、さまざまな店舗で、海外の方にお土産として購入いただくケースが増えています。これを受け、日本文化をテーマにした商品開発も進めています。例えば、日本の四季をイメージしたバスペタルが舞う入浴剤で、中から富士山やお城のマスコットが出てくるような商品です。現在は台湾などのアジア圏での展開が進んでいますが、今後は北米市場への展開も強化し、日本発の「お風呂エンタメ」で世界中のお客様を驚かせ・喜ばせていきたいと考えています。
【小笠原麻里さん】 『びっくらたまご』は、来年で25周年を迎えます。クローズド仕様でのコレクション性も大切にしつつ、子どもから大人まで、そして世界中の方々へ、お風呂の時間を特別な体験に変える商品をお届けしていきたいです。
(文/磯部正和)
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