俳優の内野聖陽(57)が舞台『リア王 -King Lear-』で主演を務めることが発表された。ウィリアム・シェイクスピア四大悲劇の一つ、老境を迎える王が、権力も領土も娘たちの愛も全て失って転落するさまを描く傑作で、内野は、名だたる名優がその晩年に演じてきた難役に挑む。
ウィリアム・シェイクスピアの名作悲劇が、9月21日~10月4日に東京芸術劇場プレイハウスほか、新潟、愛知、兵庫、岡山、福岡にて上演される。

 昨年WOWOW連続ドラマW『ゴールドサンセット』で、シニア劇団で『リア王』を演じる謎の老人を演じた。それ以来この役に寄せる熱い思いが、今回の出演につながった。内野は2017年に同劇場で、同じくシェイクスピア四大悲劇の『ハムレット』を演じた。シェイクスピアの主人公の中でも最も聡明な、全てを知りつつ破滅する若いハムレットを48歳で演じ、今作上演時には58歳にして、最も愚かで無知なまま滅びていく老境のリア王を演じる。四大悲劇の両極にある二大ヒーローを10年のうちに演じることとなる。

 四大悲劇の『ハムレット』は”復讐”、『オセロー』は”嫉妬”、『マクベス』は”裏切り”をモチーフとする傑作だが、『リア王』は”老い”を描くという意味で世界が超高齢化を迎えるいま非常に切実な作品。近年日本でもこの戯曲の上演頻度が顕著に高まっている。

 今回、内野と組んでこの傑作に挑むのは、日本演劇界をけん引する演出家の森新太郎氏。ミュージカルから古典劇まで幅広く手掛ける作品はいずれも現代性、社会性が透徹しており、特にシェイクスピア劇の演出で見せる鮮やかな手腕は高く評価されている。内野とは、『THE BIG FERRAH』『東海道四谷怪談』に続く3度目のタッグ。共に熱量の高い2人が、悲惨な結末に突き進んでいく、救いようのない人間たちのドラマをいかに描きあげるか、期待が高まる。


■内野聖陽コメント

なぜいま「リア王」を演じるか?それは、自分が納得いくリアという作品を見てみたいからです。17世紀のシェイクスピアの時代も21世紀の現在も、人間ってのは大して成長してないなということ。そして、非常事態の中で見せる人間の本音の絡み合いは、やはりワクワクするものがあること。そういう作り手のワクワク感をお届けしたいのと、やはり、創作過程で自分たちが思いもよらなかった景色が見えて来たら最高だなと思っています。何よりリアという作品を、今、初老の段階に入っている自分なら、どう演じるのかをみてみたいという感覚があります。

この企画を立ち上げたときはこんなにも『リア王』ラッシュが続くとは思いもよりませんでした。『リア王』には現代に生きる我々が直面している問題が多いからなのではと思ってます。国のトップの覇権争い、親子・血縁・側近のディスコミュニケーション、そして、老いや健康寿命の問題などなど…またリアかよと思われるかもしれませんが、森新太郎演出のリアは、絶対に面白くなる予感がします。

まずはテキストを深く掘り下げて内野ならではの感性でリアを自由に羽ばたかせたい。そして才能ある共演者の皆様とのセッションで面白い景色をたくさん発見したいです。森新太郎さんという現代演劇の気鋭の才能に、演者としてたくさん提示して創造的なセッションがたくさんできれば、きっといい結果が生まれると信じてます。
ご期待ください。


■森新太郎コメント

リアという一人の王の破滅だけでなく、一つの世界秩序がいとも簡単に、凄まじいスピードで崩壊する様を描けたらと考えています。人間をこうまで無知無力、虫けら同然だと感じさせるシェイクスピア作品を私は他に知りません。新時代への希望などほとんど…あるいはまったく謳われていない終幕だからこそ、この劇がいま必要なのだと思う次第です。魂の俳優・内野聖陽さんと共に、“リア王の荒野”に力強く分け入っていきたい。
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