アニメ映画『劇場版 転生したらスライムだった件 蒼海の涙編』が公開中。本作では堂本光一が、物語の重要なカギを握る劇場版オリジナルキャラクター・ゾドン役を担当しており、ORICON NEWSは、2006年放送のテレビアニメ『獣王星』以来20年ぶり、さらに劇場版アニメの声優に初挑戦となる堂本にインタビューを実施。
俳優・アーティストとして唯一無二の存在感を放つ堂本に、20年ぶりとなる声優業への思い、作品との意外な“巡り合わせ”アフレコでのエピソード、意外な憧れ、そして自身の人生観まで聞いた。

■「アニメ見ていますよ(笑)」 『転スラ』との出会いと20年ぶりの声優業

 『転生したらスライムだった件』は、通り魔に刺されて死亡し、気がつくとスライムの姿で異世界に転生していたサラリーマン・三上悟が、リムルというスライム人生を得て、「種族問わず楽しく暮らせる国作り」を目指す物語。獲得したスキルを駆使しながら、知恵と度胸で仲間を増やしていく姿を描く。

 2018年10月にテレビアニメ化され、今回の劇場版は原作・伏瀬による原案&完全監修のストーリーで、水竜を守り神と崇める海底にある国【カイエン国】を舞台に、巫女・ユラを救うため、海底で渦巻く陰謀に立ち向かうリムルたちを描いた完全新作となっている。

 本作への出演について、その背景には偶然では片付けられない、本人の言葉を借りるなら「すごい巡り合わせ」があった。

 「このアニメが放送されているときに偶然、第1話を観ていたんです。とても印象的だった。アニメを見ているのが意外ですか?普通に家でアニメ見ていますよ(笑)」

 穏やかな口調で『転スラ』との最初の出会いを語り始めた堂本は当時、スライムが主人公という斬新な設定に「すごく面白いなと思って見ていた」という。「まさかこうやって自分がその世界に入っていけるとは全く思っていなかった」と口にし、オファーが来たときの喜びはひとしおだったと語る。

「お話いただいてすごくうれしかったですし、すごい巡り合わせだなと感じました」

 アニメ声優としての仕事は20年ぶりとなる。歳月は空いたが、自身の中では「20年ぶりという感覚はそんなになかった」と語る。むしろ、「機会があればまたやりたいなと思っていた」と、声の仕事に対する意欲を常に持ち続けていたと明かす。
そして、なぜ自分に白羽の矢が立ったかに対し冷静に自己分析する。

 「歌手や舞台…声を使う仕事をしていることについて変わりはない部分はあると思う。そこで自分としてできるものを捧げられたらいいな、という思いでやらせていただきました」

■悪役の声はいかにして生まれたか?――シェイクスピアの経験を声に乗せて

 今作で堂本が演じているのは、物語の重要なカギを握るゾドン。本人も「ずっとアニメに出ていたキャラクターではない」と言及したとおり、劇場版オリジナルキャラクターをどう捉え、役作りしたのだろうか。

 「声に対して、この人はどういう人生を送ってきたのかが乗っかってくると思うので、そこは意識しました」

 キャラクターの背景にある人生を声色で表現すること注力したと話した堂本。「見た目も自分よりもダンディなので、どうして自分に(笑)」と謙遜しつつ、自身の経験を注ぎ込んだと語る。

 「ハムレットやリチャード三世などシェイクスピアの作品に携わってきなか、第一声からその人物がどういう人物なのかを表現しなきゃいけないという感覚を、声優としても乗せることができたらという思いはありました」

 特に自分には「全く似合わない」という髭を生やしたキャラクターを演じることが楽しみだったと話す。「実写版だと髭のキャラクターがハマらなくても、アニメの世界でなら演じることが可能なのがアニメーションの良いところだと思います」。

 ヒール役へのアプローチを聞くと、普段よりも「ちょっと低めの声」を心がけたと回答。そして、「ヒール役って演じている人ならきっと一度はやりたいと思う役なのでは。そういう意味ではうれしかった」と笑顔を見せる。

■「風邪の声」絶賛に困惑

 役者として演じることと声優として演じることの違いについて、堂本は「舞台は全身表現。
それに対して声優は、録音する時に情景が見えづらい中で、いかに声だけで表現できるかが難しい」と語る。画が完成していない段階での収録も多く、キャラクターのテンション感や相手との距離感といった細かなニュアンスは、現場で監督と密にコミュニケーションを取りながら一つひとつ作り上げていくなか、あるハプニングに襲われたと明かす。

 「リハーサルのとき風邪をひいてしまっていて。ただ、そのちょっとかすれた感じの声を監督から『いいですね』と言われちゃって(苦笑)。本番にこの声は出ないし困るなと(笑)」

 偶然が生んだ絶妙な悪役の声だったが、どう再現するか悩むなか、堂本はリハーサル時の感覚を頼りに、声の「鳴らすポイント」を意識的にコントロールして難題に対応えたという。風邪が治っていてもつかんだ響かせ方を再現する表現力は、長年自身の声と向き合い続けてきたからこそ可能な、職人技と言える。

■堂本光一の哲学「転生はしたくない」 今の人生を生きる意味

 本作のタイトルにもある「転生」は、現代のエンターテインメントにおける一つの大きな潮流でもある。テーマを入り口に転生願望があるか聞くと、堂本は「皆さん転生願望あるんですか?」と素朴な疑問を口にし、自身についてはきっぱりと断言する。

 「ありがたいことに自分の仕事は演じることが、ある意味、疑似体験するようなもの。あまり深く考えたことはないですけど、自分自身はあまり転生したくないかな。今の人生を胸張って生きられるように生きようと言い聞かせています」

 この言葉は、単なるポジティブな自己肯定ではない。その裏には、「できた人間じゃないから」と自身の弱さへの自覚と、それを乗り越えようとする強い意志が見え隠れする。


 「そう自分に言い聞かせないと道を外しそうになることもある。そうならないためにも、そう思うようにしています。胸張れないかもしれないけど、そうやって頑張るだけです」

 そんな誠実さへの探求は、現代のコミュニケーションにも及ぶ。「今の世の中って誠実であることが大事じゃないですか。でも、そうなっていけばいくほど、『この人の本心がわからない』という逆の恐怖を感じることも。自分としてはそういう言葉もあまり上辺なものにはしたくないなとか、誰かが喋っていることにも言葉にある裏をしっかり読み取りたいなとか普段感じています」。

 コミュニケーションの難しさがあふれる現代だからこそ、時には「汚い言葉を使うこともあるけど、その方が人間味ある」とする堂本。「誤解をされることもあるけど、そういう人はそういう人なのだなと思うことにしている」と持論を語る。

 最後に作品にちなみ、「使ってみたい魔法やスキルは?」と投げかると、少し考える素振りを見せた後、即答した。

 「瞬間移動できたらいいな~。移動するの、面倒くさいですからね(笑)」

(撮影:上野留加/文:遠藤政樹/編集:櫻井偉明)
編集部おすすめ