八乙女は、先日宮城県・亘理町を訪れ、震災から15年経った今でもまだ完全に復興していない現状を目の当たりにし、「前は漁師さんがいたりごちゃごちゃとしたイメージでしたが、きれいになってしまった。そこに少し虚しさを感じました」と語った。
堺は岩手県の漂流ポストを訪れ、漂流ポストに投函された亡くなった方への手紙の中に「会いたいです」と書かれた言葉に胸を打たれたと語った。
演出の鈴木氏は本作を楽しみにしている人へ「元々ダメ人間だった晃が、震災によりダメ人間に拍車がかかってしまった。その彼が周りの人たちに助けられて前向きになれました。一緒に挫けずに生きていこうよというお話ですので、ぜひ多くの方にご覧いただきたいです。」と語った。
最後に八乙女は「震災から15年たった今、大きなプロジェクトに参加することに対してやる気に満ち溢れております。この作品が未来につながる復興の一助になればいいなとカンパニーみんなとこの作品をより多くの人に届けたいと思います」とあいさつした。
本公演は、東日本大震災から15年、震災を風化させずに語り継ぐ舞台として、昨年末に逝去した脚本家・内館牧子さんによる同名小説を原作に脚本をG2氏、演出を鈴木氏が手がけ、主演を八乙女が務める。30日からの東京公演を皮切りに、福島、大阪、岩手、愛知、宮城にて5月22日まで上演される。
■登壇者コメント
▼八乙女光
僕が演じる谷川晃は、いちご農家の長男で、震災当日は東京にいて、津波で家族全員を失います。時間は経っても家族との時間は止まったままで、そこに悩みを抱えながら、それでも前を向いていくという役柄です。
僕は宮城出身で小さいころから亘理町に行ったことがあるんですが、「きれいになってしまった」という印象でした。震災前は、漁師さんがいたり船があったり町がごちゃごちゃとしていたんですが、復興の現れではあるが少し虚しさを感じました。
そして、舞台のテーマ曲として、作詞作曲をさせていただきました。鈴木さんとも話し合いをかさねて作ってきました。3回ほど歌詞を書き直し、この作品に寄り添った作品になっていると思います。見に来てくださる誰しもの心に響くように、ゆっくりなテンポで、ことばが伝わるようにあったかいものを作りました。作詞作曲したのに、劇中で聞いていると自分でもうるっとくるので、お客さんにも伝わっていたらいいなと思います。
そしてこの作品を見ていただくことで、東北震災のことを思い出して欲しいですが、明るい未来に繋げるため、そして備えることの大切さを感じてほしいです。震災当時何もできなかったが、あれから15年経った今、大きなプロジェクトに参加することに対してやる気に満ち溢れております。
▼堺小春
美結は晃の恋人役なんですけれども、仙台の幼稚園で働いていて、職場でひょんなことから晃と出会い愛を深めていくんですが、こういう境遇の恋人を持ってどうやったらこの人は幸せになってくれるんだろう?と思い悩んでいて、それと同時に、自分の幸せもどういうところにあるんだろう?と悩みながら生きている女性です。
先日取材で漂流ポストを見にいきました。そこで実際に投函されたお手紙に「会いたいです」という文字にされた言葉を見て、胸打たれました。この漂流ポストはその人たちの気持ちを浄化してくれるような場所なのかなと思いました。
▼福田悠太
晃の幼馴染の親友で、小さいころからの絆が深いんですが、震災をきっかけに今までの関係が崩れてきて、思い悩みながらも晃の近くで寄り添いながら葛藤する男性の役です。稽古中は集中力を高くあげてくださる鈴木さんの演出で、僕も身が引き締まる思いです。自分の中で、嘘がなくセリフが言えるように、聞けるように心がけております。
▼藤井直樹
晃の弟なんですけれども、一言でいうと優秀で、いちご農家も継ぐのが兄ではなく自分なんです。おそらく勉強もできて楽器も弾けるような子で、家族の中での兄との関係性やどう影響するのかという注目して見ていただけたらと思います。
僕は、谷川家の中の場面が多いので、じいちゃんと一緒にいたり、家族のみんなに助けられながら、優秀という部分をどうやって家庭内で、どう表現するかセリフだけでなく行動で何ができるか考えながらやっています。
稽古中、八乙女さんから、セリフのアドバイスをもらったり、福田さんは温かく見守ってくれます。
▼斉藤暁
晃のおじいちゃん役で、家庭の中の晃を心配している家族を見守るキーパーソンの役柄です。僕は東北の震災の時に、何もできなかった。しかし、今回の舞台に出演して、何か少しでもお役に立てることができるのならうれしいと思います。
▼演出・鈴木裕美氏
今まで震災にかかわる演劇に参加したことがなく、今回が初めてなんですが、非常に多才な俳優さん、スタッフさんにお集まりいただき、この機会に何らかの形で関与ができるというのをとてもうれしく思っております。とにかく誠実に真摯に想像力を使って、いい加減なことはしないで役に向き合おうねということをお話し、お稽古に励んでいるところです。
現地に訪問したときは、ものすごくお天気が良く青い空が本当にきれいでした。役場の方が元はもっとごちゃっとしていたのだけれど、震災で何もかもがなぎ倒されてしまってこのように何もなくなってきれいになってしまったとおっしゃったことにぐっとくるものがありました。漂流ポストに届いたお手紙も拝見しました。ものすごい量のファイルがぎっしり詰まっていて、何万人もの人の想いを重力となって感じました。
■囲み取材
▼八乙女への質問
――原作者の内館牧子さんとお話しする機会はありましたか?また舞台化する上で、内館さんに聞いてみたかったことはありますか?
八乙女:お会いすることはできなかったですが、原作、台本ともに読ませてもらって僕の演じる晃がダメダメな性格で、いちご農家の長男なのに継がず、東京の大学に行って、弟に託してばっかり。そんなダメな男をどう演じたら良いのかを内館さんに聞いてみたかったです。
――晃が感じた喪失感とご自身の故郷が震災で変わってしまったことへの気持ちを重ね合わせた部分はありますか?
八乙女:重なる部分はありますね。でも主人公の晃の凹み具合は僕よりも人間くさくて、不思議なことでも起きない限り立ち直れなかったんじゃないかなと思いました。
▼斉藤への質問
――福島出身の斉藤さんが、この作品に出演する意義をどのように感じていらっしゃいますか?
斉藤:内館さんの作品に再び出演することができてうれしく思います。震災の時に特に何か自分ができることはできなかったが、主人公の晃のように残された人で、心がついていかず前を向けない人に舞台を通じ、祈りをこめて東北のために復興に寄与できればと思っております。
▼堺への質問
――主人公晃を励まし支える役ですが、周りの方を励ましたり支えたりするときに意識していることはありますか?
堺:普段から相談されることが多いんですが、一旦その人の気持ちになってみることを心がけています。今回の舞台に関して、私が演じる美結は主人公の晃を励ますシーンがたくさんあるんですが、震災で甚大な被害を受けた人の立場を完全に理解するのはとても難しいなと思って稽古しています。
▼藤井・福田・鈴木氏への質問
――この作品を通じて伝えたいメッセージは?
藤井:震災によって家族を亡くした主人公の晃の姿に共感できる人もたくさんいると思います。舞台を見た後に一緒に前を向けるように少しでもなってくれたらうれしいと思います。
福田:八乙女さん演じる主人公の晃がダメ男なんです。晃の親友役として向き合ってますが、ダメ男っぷりを尊く感じる時があります。そんな晃の姿を見ていただきたいです。
鈴木:震災がバックボーンにある舞台ですが、晃の人間味あふれるシーンも見どころの一つだと思っています。

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