■「“使い捨て=環境負荷が大きい”という単純な図式を変えたかった」
神戸市と連携し、同社が2025年にスタートした「使い捨てカイロ回収プロジェクト」。市内の福祉センターなどにある資源回収ステーションに回収ボックスを設置し、実証実験では3.3トン、枚数にして約6万6千枚(※1枚約50g換算)のカイロが集まったという。
「当初は「1トン集まれば上出来」と考えていましたが、実際に回収されたのは3.3トンで、想定の約3倍にあたる量でした。ここまでの量が、2025年2月から5月末までという限定的な期間で集まったことに当社も驚いており、多くのお客様から関心を寄せていただいていることを実感しました」(小林製薬株式会社中馬章考氏)
同社がカイロ回収を始めたきっかけは、「使い捨て」に対する視線が変わりつつあることが関係していた。
「一番には、資源を循環させたい思いがありました。カイロの中身には鉄粉が含まれていますが、使用後はそのまま焼却や埋立処分されるのではなく、再資源化することができないかと。また、GHG(温室効果ガス)視点でも、製造から廃棄までの製品ライフサイクルにおいて、廃棄におけるGHG排出量は少なくありません。
近年は繰り返し使える電子式カイロも登場し、サステナブル志向が高まるなかで「使い捨て」そのものへの視線も変わりつつあります。カイロの市場を守るためにも、“使い捨て=環境負荷が大きい”という単純な図式を変えたかったんです」(中馬氏)
■厳冬と猛暑が繰り返される“二季化”、体温調整アイテムとしての需要増
使い捨てカイロの回収ボックスは、神戸市内の福祉センターなどにある資源回収ステーション「エコノバ」に設置した。
「神戸市ではカイロは「不燃ごみ」扱いで、月2回しか出せません。回収ボックスの設置により「いつでも出せる」状況を作れたことは大きいと感じます。
近年、カイロの使用シーンも広がっています。防寒用途だけでなく、肩こりや腰痛の緩和、夏場のエアコン冷え対策など、通年利用する人も少なくありません。厳冬と猛暑が繰り返される“二季化”のなかで、体温調整アイテムとしての需要はむしろ増しています。実際に、利用者様のアンケートでは「通年で回収してほしい」という声が多数寄せられていました」(中馬氏)
これを受け、2026年からは期間を1年に延長。データ取得の意味も込めた“第2期”がスタートしている。
「資源循環を全国に広げていきたい理想と、コストがかかる現実との間で試行錯誤しています。回収ボックスの設置、輸送、分別作業、再資源化処理…と、すべての工程でコストが発生します。現状は回収量が増えるほどに、費用も増える構造です。企業活動として費用面でも持続可能な体制を目指したい。
■持続可能な活動としていけるかが課題「簡単ではないのですが、それでも一歩ずつ、確実に進めていきます」
同じ市内でも「不燃ごみだと思っていた」「普通ごみに出している」など回答はバラバラ。行政のウェブサイトを確認すれば分かるとはいえ、日常的にそこまで調べる人は多くない。
「自治体ごとにルールが異なり、メーカーとしては「お住まいの自治体のルールに従ってください」と案内するほかないのが現状です。仕様の統一は容易ではないでしょう。だからこそ、回収という“第三の選択肢”を提示する意味は大きいと考えています。ペットボトルのように、“使ったらリサイクルボックスへ”というインフラが整うのが理想です」(中馬氏)
回収されたカイロは、異物を取り除く分別工程を経て、中身の鉄粉を取り出し、ペレット化される。さらに高炉で処理され、鉄鋼原料へと生まれ変わる。
橋や建材、車両部品など、生活を支えるさまざまな製品の一部になる可能性があるという。
「現時点ではペットボトルのような水平リサイクルは実現していません。3.3トンの回収量といってもまだ規模は小さく、カイロ由来の鉄のみでの鉄鋼原料化、安定供給、トレーサビティーにおいて課題があり、仕組づくりが必要です」(中馬氏)
さらに規模を拡大していくことを想定し、同社が実施したアンケートでは、「学校」「公共施設」「小売店」に加え、「駅」に回収ボックスがあれば便利という声が多く寄せられた。カイロの回収においては、“使ってすぐ捨てられる場所”へのニーズが高いことが分かる。
「今後は様々な方と連携し、実証実験にて持続可能な活動にできるか検討を進めていく予定です。ただし設置場所ごとに管理体制や安全面の確認が必要で、簡単ではないのですが、それでも一歩ずつ、確実に進めていきます」(中馬氏)
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