本作は、主演・杉咲と監督/脚本・今泉力哉氏のタッグで贈る“考えすぎてしまう人”のためのラブストーリー。主人公・土田文菜(杉咲)がこれまでに経験してきたさまざまな別れや、かなわなかった恋などから、人を好きになることにどこか怖れを抱いていて、「大切な人とはつきあわないほうがいいのではないか?」「そもそも恋愛とはなんなのか?」などと逡巡しながらも前に進んでいく物語となる。
ゆきお(成田凌)の誕生日、文菜とゆきおは2人が初めて出会ったコインランドリーで待ち合わせをする。そして、2人はゆきおが目星をつけていた初めての喫茶店へ。事前のメールのやりとりで、お互いに「話したいことがある」と伝え合っていたが、文菜から先に切り出す。それは、別れを切り出されるかもしれない、と思った文菜のある種の防衛本能なのかもしれない。
文菜は、ゆきおに隠していたことを一つひとつ話していく。浮気していたこと、他の人よりもすぐ人のことを好きになってしまえること、いつからか1人の人ときちんと付き合うとができなくなってしまったこと。ゆきおはその言葉を一つひとつかみしめるように聞いていく。文菜は、名前こそ隠したものの、ゆきおに話せないことを話していた相手がいて、相談に乗ってもらっていた山田(内堀太郎)のことも話す。「はっきりさせると必ず終わってしまう」とどこかで真剣に人と向き合うことを躊躇していた文菜が、明確に一歩踏み出すことを決めた。そして、鞄から手編みの水色のマフラーを取り出してゆきおに渡す。
「お誕生日おめでとう」と言われたゆきおはほほ笑んで、「あれじゃん、色。温泉ズブルー」とつぶやく。そして、今度は逆に自分の想いを一つひとつ話していく。
互いの心の内をさらけ出し合った2人は、ゆきおの美容室に向かう。「(店では)なるべくくだらない話、意味のない話をしよう」という文菜。美容室に到着した2人は、まるで出会った日のように、シャッターを開けて店内へ。ゆきおは、ふと温泉旅行の夕食時に話した「口の機能」についての話をする。あの時は正解に辿り着けなかった、もう一つの口の位置について。そのあともいろいろと考え続けていたゆきおは、あることに気づき、その話を文菜にする。その言葉を受けて、文菜は再び、自分の中にある想いや悩みについて、さらに吐き出していく。
1話から9話まで、まっすぐに人と向き合うことが怖かった文菜が、山田でも、小太郎(岡山天音)でもなく、恋人のゆきおに対してここまで心を開けた。そして、杉咲はその苦しさを本当に自分の痛みとして体現。
監督の今泉氏は「泣く芝居には大きく分けて2種類ある」と話す。1つはそれを見た人がグッとくる芝居。もう1つはちょっと引いてしまう芝居。その違いは、演じている俳優にいかに余裕がないか、が鍵だという。このシーンの杉咲には一切の余裕が感じられない。泣く、というよりも、自然に泣いている。
まっすぐ好きと言えなくなっていた文菜が、それでも真剣に話し合うこと、さらけ出すことを選んだ。しかし、それは見方を変えれば、ただのわがままで身勝手な行動なのかもしれない。伝えることが本当に正しいのか。相手のためになるのか。それでも、そうせざるを得なかった文菜は、やっぱり真面目で正直なのだ。
果たして、文菜とゆきおが決めた2人のこれからとは。

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