■約20%になんらかの支援が必要、“書き”が苦手な子は学習意欲を失う恐れも
特別支援教育や発達支援を専門とする赤塚めぐみ先生は、活動の一環として「読み書き障害」の子どもたちの学習支援にも携わっている。「読み書き障害」とは「教科書がスラスラ読めない」「書き取りに時間がかかる」など、読み書きに困難が見られる特性のこと。教育における階層的支援モデルでは、全体の約20%の子どもがなんらかの支援を必要とする状態だという。
「そのうち専門的な支援が必要な子どもは5%ほどで、15%は補足的な支援で十分に改善する可能性があります。ちなみに日本は比較的、“読み”が苦手な子どもは少ないとされています。特に昨今はYouTubeなど、音声と文字情報(テロップ)を同時に視聴する場面が増えているためか、かつて以上に“読み”の習得が早まっているのを感じますね。ただし、短文は読めても、長文の読解は苦手な子どもが増えているのは課題かもしれません」
一方、“書き”が苦手な子どもは、その特性から学習意欲を失うことも多いため、なるべく早く克服させたいところ。そのためにデジタルツールが有効な場面もあるようだ。
「書き間違いを消しゴムで何度も消しているうちにノートが破れたり、クシャクシャになったりして『もう嫌だ!』と心が折れてしまうんですね。そういう子どもにとって、一瞬でキレイに書き直せるデジタル教材は精神的な負荷の軽減にもなりますので、取り入れてみてもいいかもしれません」
ただし、簡単に修正ができるデジタルならではのメリットは、特に成長段階にある子どもにとっては一長一短があるようだ。
「紙に手書きしたものは簡単には修正できないですよね。そのため、手書きをしている時の脳は、無意識的ながらフル活性している状態です。書く前にまず頭の中で『プランニング』、書きながらうまく進行しているかを『モニタリング』、書き終わったものを確認する『フィードバック』──という3つのサイクルをリアルタイムで回すことで習得できる能力は、様々な学習に応用されます。ただ、デジタル入力ではその習得機会が減ってしまいます」
特に学習意欲の土台を作る上で、「手書き体験はとても大切」と赤塚先生は強調する。
「学習意欲の源は、未来への期待にあります。これをしたらどんな楽しいことが起こるのかな? とワクワクする気持ちが学び続ける力になるんですね。簡単に修正ができない手書きは、少し先の未来を予測しながら行動する練習にもなっているんです」
■小学校入学までにどこまで必要? 懸念は「学びの土壌」格差の広がり
教育はもとより、子どもの遊びにもデジタルが浸透する今、赤塚先生が懸念するのが小学校1年生のスタートラインにおける「学びの土壌」格差の広がりだ。
「未就学の頃に色鉛筆やクレヨンでたくさん遊んできた子どもは、比較的スムーズに学習に入っていけるケースが多いです。ところが最近は、お絵描きや塗り絵もデジタルで遊ぶものが多いためか、筆記具を使い慣れていない子どもが目立ちます。そして、いざ書(描)いてみたら、面倒くさい、疲れる、だから勉強は嫌い──となってしまう子どもが増えていくのは非常に心配なところですね」
小学校入学前までに、「ひらがなだけは覚えさせよう」と躍起になる親は多いだろう。しかし、赤塚先生は学習を強要するよりも、少しでもたくさんの「書(描)く楽しさ」や「ワクワク」を経験させるほうが効果的だと語る。
「私が関わっている書き障害の子どもが、カラフルなペンで書き取り帳を書いてきたことがあったんです。
それ以来、読み書き障害の子どもの学習支援にはたくさんのカラーペンを用意するようになったという。
「特に、水性カラーペンは紙との摩擦が鉛筆よりも強いためか、トメ・ハネ・ハライが苦手な子どもでもキレイな字を書けるんです。いろいろ試しましたが、中でも『クリッカート』というペンだと色の種類が豊富で、書き心地もよいことから、『上手にかけて嬉しい』という子どもが多かったですね」
成長段階の子どもが“書く”という感覚や文字の形を体感として落とし込むためには、「書き心地はとても重要」と先生。親が一方的に買い揃えるよりも、親子で一緒に文具店で試し書きをするなど「子ども自身に選ばせてあげてほしいです」とアドバイスする。
「子どもにとって、自分で選べるのはとても嬉しいことです。筆記具メーカー・ゼブラが主催する子ども向けワークショップ『kakuwakuプロジェクト』でも、たくさん用意された筆記具をワクワク選ぶ子どもたちの表情が印象的でした。また、大きなオブジェに全身を使ってお絵描きをするなど、様々な趣向で書(描く)楽しさを伝えているイベントの様子を見ながら、改めて『子どもの心と体の成長に、書(描)く行為は欠かせない』ことを実感しましたね」
たしかに、各家庭ではたくさんの筆記用具を揃えることは難しいし、子どもの好きなように大きく書(描)かせる、という機会も用意しづらい。先生は「書(描)く行為は1人で行うことが多いですが、こうしたイベントを活用するのもいいでしょう。みんなで1つのものを創り上げ、目的に向かって刺激を受けながら書(描)く経験は大事」と語る。3月28日~29日にはkakuwakuプロジェクト第4弾が開催(東京・二子玉川ライズ中央広場/当日参加制/無料)。
■その子に適したデジタル/アナログの使い分けを、必要なのは親子のコミュニケーション
これからの未来を生きる子どもたちにとって、デジタルを扱うスキルが欠かせないのは間違いない。一方で、従来のアナログ学習でしか育めない力もたくさんあることがわかった。それだけに、子どもにどのようなバランスでデジタル/アナログの学習環境を与えるべきか、悩む親も多いだろう。
「大前提として、成長段階にある子どもは、身体性を伴うことで学びを定着させていきます。たとえば漢字を覚える時には、書き取りの練習帳に何回も書きますよね。最近は機会が減ったことで、大人でも『読めるけど書けない漢字が増えた』という方が増えていますが、これから新たな情報を習得する子どもにとってはなおさら、『手を動かして書く』ときに得られる指先の感覚が、文字の習得には不可欠です」
また、身体が発達段階にある子どもにとって、デジタル画面を見続けることの様々な弊害は広く知られている。とはいえ、赤塚先生はデジタルを全否定しているわけでもない。
「もしもお子さんが学習でつまづいていたら、『何に困っているのか』『どうしたら克服できそうか』をよく聞いてあげてください。冒頭に紹介したような読み書き障害の子どものように、デジタルツールによって学びの背中が押される事例もありますし、あるいは、自分にとって書きやすい硬さの鉛筆に出会ったことで“書き”困難を克服する子どもも少なくありません。その子に適したデジタル/アナログの使い分けをするためにも、大切なのは親子のコミュニケーションではないでしょうか」
2030年度に全面施行される次期学習指導要領で、デジタル教科書が正式な教科書として採用されることが決まったように、学校教育におけるデジタル化はもはや不可逆だ。親が選択して与える学習環境が、子どもの発達に与える影響はますます大きくなりそうだ。
<赤塚めぐみ先生>
常葉大学 保育学部 保育学科所属。准教授/静岡基礎教育センター副センター長。専門分野は特別支援教育、発達支援。臨床発達心理士、公認心理士、特別支援教育士SV。
(文:児玉澄子)
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