「うちの本棚」、今回は一条ゆかりの『ティー・タイム』をご紹介します。 個人的には『デザイナー』と共に好きな作品で、京子さんというキャラクターが実に魅力的に描けてるなあと思うのであります。
『ティー・タイム』は『5愛のルール』打ち切り後連載された作品(間に『ママン・レーヌに首ったけ』『こいきな奴ら3』の読み切り2作がある)。 『5愛のルール』が掲載誌の対称読者層とは離れたオトナのドラマであることを理由に打ち切られたためか、本作の主人公は高校生。とはいうものの、冒頭から主人公への想いが断ち切れずに実の姉が自殺しているというヘビーな展開な上に、主人公の親友ふたりも含めてドロドロな恋愛ドラマがいくつも平行して描かれる。主人公紫苑(しおん)は、小説家の父、元モデルで現在はモデルクラブを経営するフランス人の母との間に生まれた金髪が美しい美形男子。姉は母のモデルクラブの売れっ子モデルだった。実家を離れ、ひとりで洋館に暮らしていた姉と、同じ生活をすることを目的に、紫苑もこの洋館に越し、高校も姉が通っていた学校に転校。そこで中学時代の悪友、惣と薫に再会する。洋館には家政婦の京子がいるが、乱暴な言葉づかいで紫苑を圧倒する。その京子の妹は、紫苑と同じ高校の後輩で、紫苑に憧れているのだが、この舞という娘には薫が思いを寄せている。また惣は自分の父親が好きな年上の女性に恋をしているという、これだけで独立したストーリーが描けるような設定となっている。
紫苑は、姉の想いを受け止められなかったことを悔い、姉の生活をトレースするように暮らし始めるが、そこに姉のモデル仲間ルシエンヌが訪れ、自分も彼女を愛していたと告白する。紫苑は姉の代わりとなって、ルシエンヌと接することになるのだが…。
同時に収録された短編は、いずれも初期作品で『ティー・タイム』当時の絵柄とはまた違うものばかり。一条の初期の絵柄は、どちらかといえば水野英子調といえるだろう。 『彼…』は、かなりシリアスな作品で、初出の昭和46年には衝撃的な内容だったのではないかと思う。また一条が、初期からシリアスな男女の恋愛を描いていたことも再確認できる。 『ジルにご用心』はコメディ調のものだが、根底には父親のいない寂しさなど、深いテーマが描かれている。登場人物たちがうまいこと結ばれていくご都合主義は、この際目をつぶっておこう。 『花嫁はいかが!?』もコメディ調の作品。
初出:ティー・タイム/集英社「りぼん」昭和51年5月号~11月号、彼…/集英社「りぼんコミック」昭和46年3月号、ジルにご用心/集英社「りぼんコミック」昭和45年9月号、花嫁はいかが!?/集英社「りぼんコミック」昭和44年4月号、夜のフェアリー/集英社「りぼんコミック」昭和44年7月号、ゆかりのミニミニめるへん/描き下ろし?
書 名/ティー・タイム(前・後編) 著者名/一条ゆかり 出版元/集英社 判 型/新書判 定 価/各320円 シリーズ名/りぼんマスコットコミックス(RMC-101、102) 初版発行日/前編・1977年3月10日、後編・1977年4月10日 収録作品/前編・ティー・タイム、彼…、ジルにご用心、後編・ティー・タイム、花嫁はいかが!?、夜のフェアリー、ゆかりのミニミニめるへん
(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/)
※「【うちの本棚】261回 ティー・タイム/一条ゆかり」はおたくま経済新聞で公開された投稿です