稼働中のサウナ室の中で映画を上映するという前代未聞のイベントが、茨城県常総市の温浴施設で開催されました。果たしてのぼせずに最後まで見終わることができるのか? 実際に体験してみました。
イベントを開催したのは、茨城県常総市の温浴施設「常総ONSEN&SAUNA お湯むすび」。館内にある大型サウナを会場に、室内に設けられた横幅4mの大型スクリーンを使用して映画の上映が行われました。

「常総ONSEN&SAUNA お湯むすび」は、昨年秋にオープンしたばかりの温浴施設です。今回会場となった大型サウナには、館内着のままくつろげるラウンジスペースが。まるでホテルのような非日常気分がテンションを盛り上げます。

「演むすび」と名付けられた大型サウナは、館内に10か所あるサウナの中でもっとも広い空間。熱波師やアウフギーサーなどによるパフォーマンスを楽しみながら入れる「劇場型サウナ」となっています。
入室した時点でサウナ室の温度計を見ると、52度ほどを指していました。一般的なサウナの温度帯は85度前後が多く、それに比べるとかなり低めではありますが、それでも室温としてはなかなかの温度です。

主催者側からは、「上映に合わせてサウナ室の温度は低めに設定してある」としたうえで、こまめに水分補給を行い、無理をしないようアナウンスが。水分補給用として500mlのペットボトル入りの水も配布されるなど、安全面への配慮がしっかりされていたのが印象的でした。

■ 1セット目、登場人物がドリンクを飲むシーンに思わずノドが……
今回は18分の映画作品が、5分のインターバルを挟んで2本上映されました。

1本目の「銀河健康センター」は、水風呂の枯れた砂漠のサウナ施設で働く主人公のもとに、大量の水を持ったサウナ好き星人の宇宙船が不時着。

砂漠が舞台とあって、カラカラ灼熱のサウナで見ると、まるで映画の中に入り込んだような没入感。作中で主人公がドリンクを飲んだり、大量の水を浴びるシーンでは思わずゴクンと喉が鳴ってしまいました。


18分というコンパクトな時間もあり、大きな辛さは感じなかったものの、体感温度はなかなかのもの。自分の頭を見ると、大量に吹き出た汗で水をかぶったような状態になっていました。

かなり暑くなっているのでは、と思いつつ、サウナ室の温度計を見ると、わずかに4~5度上がったかどうかというところ。

ここで数分間の休憩が挟まれ、参加者の人たちは隣接するラウンジでゴクゴクと美味しそうに水を飲んでいました。
■ 2セット目、上映中のロウリュで「手に汗握る」展開に
2本目に上映されたのは、先程の続編にあたる「銀河健康センター -2SET-」。

究極のサウナストーンを求めて銀河を旅する主人公が、熱波師として活躍する星人と出会い、その魅力に開眼。そのころ、地元の星に居着いたサウナ好き星人のマナー違反がひどくなっていて……というストーリー。サウナ好きとしては身につまされる内容でした。


劇中、激しくロウリュを行うシーンになると、スクリーンの両脇に備え付けられたサウナヒーターに施設スタッフがアロマ水をかけ、実際にロウリュを実施。サウナ室の湿度がいっきにぐんぐん上がり、むせかえるほどの熱気に包まれました。


ロウリュをしながら「この映画は『4DX形式』でお楽しみいただけます!」と、スタッフさん。もちろん本来の意味での「4DX上映」ではなくジョークではありますが、映像や音声とともに、劇中のサウナを想像させる熱気をリアルで感じられるのはなんともユニーク。
先程にも増して、すごい量の汗がわき上がってきました。体感だけで言うと80度近い感じ。顔も真っ赤になり、リアルな意味で「手に汗握る」展開に……。

相当室温も上がっているのではないかと思いきや、針は60度からまったく動かず、思わず二度見。湿度が高くなると、より熱く感じるということがわかります。

同時にそれは、身体にそれだけ熱が蓄積しているということ。意識して水分補給やこまめなクールダウンを行うことの大切さを、改めて感じました。
■ 生粋のサウナー好きが集まり作品を制作 サウナ愛ゆえの「葛藤」も
この日は映画上映後、サウナ室では坂田監督と熱波師・アウフギーサーの鮭山未菜美さんによるトークショーが開催されました。

鮭山さんは、アウフギーサーの大会「Aufguss Championship Japan 2025」で団体1位に入賞し、イタリアで開催される世界大会への出場が決まっている超有名熱波師。「銀河健康センター -2SET-」では、熱波師役としてカメオ出演しています。
トークショーでは、鮭山さんの登場シーンをふくめた、撮影の裏話がたくさん。十数秒の熱波シーンが2時間かけて撮影されたことが明かされると、驚きの声が上がりました。
坂田監督いわく、制作陣キャスト、スタッフともにサウナへの熱い思い入れを持つ人々だそう。サウナ室でマナーの悪い振る舞いをするシーンを演じた役者さんは、撮影に際して「こんなことをサウナにするなんて……」と激しく葛藤していたなど、ディープな話が飛び出しました。
映像制作会社で社員として勤務するかたわら作品づくりを行っている坂田監督、1シリーズの制作には1年ほどの準備時間をかけているそう。トークショーの終盤には3作目の制作構想について言及する場面もあり、会場を大きく沸かせました。
サウナ好きならではの視点がギュッと詰まった映画を、贅沢なロウリュサービス付きで楽しむ体験。
イベントに参加するまでは正直半信半疑な気持ちでしたが、実際に体験してみると、普段映画館では刺激されない熱感覚や触覚、嗅覚が刺激され、とても立体的で奥行きのある映画体験を楽しむことができました。
「サウナでロードショー」、ちょっと新しい映画上映のムーブメントになるかも。もちろん無理せず、自分の体調をしっかり見極めたうえで、次回もあるなら体験してみたいと思いました。
<取材協力>
常総ONSEN&SAUNA お湯むすび
映画「銀河健康センター」
(天谷窓大)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 天谷窓大 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2025062204.html