夜の雪山「捜索できない」常識を覆す ドローンが変えた救助と残...の画像はこちら >>


 近年、各地のスキー場では「バックカントリー」と呼ばれる非整備・非管理区域での遭難事故が相次ぎ、社会問題となっています。


 管理の及ばない区域では天候の急変や雪崩などの危険が常に伴い、とりわけ夜間は視界不良や低温により二次災害のリスクが高まるため、「夜の雪山では捜索できない」とされてきました。

救助に向かう側の安全確保も大きな課題です。



 そうした前提を技術の力で打ち破った事例が明らかになりました。一般社団法人Japan Innovation Challenge(JIC)は2月10日、北海道富良野スキー場で1月に発生したバックカントリー遭難事案において、設置型ドローンを遠隔運用し、夜間に人が山へ立ち入ることなく遭難者7人全員を発見、救助につなげたと公表しました。

■ 衛星SOSから12分でドローン離陸

 事案が起きたのは2026年1月15日16時07分。富良野市上御料付近で外国人スキー客7人が遭難し、携帯電話が圏外となる中、衛星経由の緊急通報で警察へSOSを送りました。


 情報は警察から富良野スキー場を通じてJICに共有され、連絡からわずか12分で、ゴンドラ駅舎に設置されていたドローンポート「DJI Dock 3」から機体が離陸。東京および北海道上士幌町からの完全リモート操作で夜間捜索が開始されました。


夜の雪山「捜索できない」常識を覆す ドローンが変えた救助と残る課題
写真:捜索マップ


 ドローンは可視光カメラと赤外線カメラで上空から撮影を行い、AI解析によって遭難者の位置を特定。情報共有から28分後には遭難者の姿を捉えることに成功したといいます。


夜の雪山「捜索できない」常識を覆す ドローンが変えた救助と残る課題
可視光カメラが捉えた遭難者 黄色枠の中


夜の雪山「捜索できない」常識を覆す ドローンが変えた救助と残る課題
赤外線カメラが捉えた遭難者 中央の赤い箇所


夜の雪山「捜索できない」常識を覆す ドローンが変えた救助と残る課題
救助隊到着直前、遭難者が同じ場所に留まっていることをドローンで確認


 発見した位置情報や画像は救助隊に共有され、警察がSOSを受信してから約5時間後となる同日21時05分には救助隊が遭難者と接触。全員の無事が確認されました。


 また、捜索中にはスピーカーを使い、「ドローンで捜索しています」「見つけました。その場にいてください」「今夜救助がきます」といった呼びかけを遭難者の母国語で実施。


 心理的な安定を促し、救助隊の夜間出動判断も支援したとしています。ライト照射も救助隊の目印となりました。

■ 設置型ドローンが変えた夜間捜索

 雪山での捜索はこれまで、視界不良や二次災害の危険性から夜間は中断し、翌朝以降に再開するのが一般的でした。


 今回の事例では、設置型ドローンポートにより操縦士が現地へ行く必要がなく、離発着から飛行まで事前設定で自動化されていた点が大きな転換となっています。


 富良野スキー場の伊賀裕治総支配人は「先進的な取り組みとして進めてきたドローン活用が、実際の夜間捜索で成果につながったことは大きな一歩です」とコメントし、来季以降の運用体制構築を検討する考えを示しました。

■ 技術の成果とバックカントリーの危険性

 今回は、事前に備えられていた設備が功を奏し、最悪の事態は免れました。しかしバックカントリーは、雪崩対策や巡回パトロールが及ばない管理区域外であり、本来は立ち入ること自体が大きな危険を伴う場所です。


 最新技術によって救助の可能性が広がったとしても、「助けられる」ことと「安全である」ことは別問題。十分な装備や知識があったとしても、自然環境の厳しさを完全に制御することはできず、遭難リスクがなくなるわけではありません。


 今回の事例は、これまで困難とされてきた夜間捜索に新たな選択肢を示す象徴的な成果といえます。一方で、遭難を未然に防ぐためには、バックカントリーの危険性を正しく理解し、安全意識を徹底することが改めて重要であることも浮き彫りになりました。


 特に訪日観光客が増加する中、日本人に限らず、すべての利用者が管理区域外へ安易に踏み込まない慎重な行動を取ることが求められています。

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By おたくま編集部 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2026021202.html
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