東京都大田区西蒲田の住宅街の中にぽつんと立つ、ツタに覆われた一軒の家。「須山文具店」という看板が掲げられたそこは、一見すると閉店しているかのよう。
しかし一歩踏み入れると、待っていたのは人情味あふれるお喋り好きな店主と、色濃く息づく昭和の歴史でした。
■ 蒲田の住宅街にポツリとたたずむ文具店 中は昭和アイテムがところ狭しと並ぶ“資料館”
東急池上線の「蓮沼」や「蒲田」からほど近いところにある住宅街。蒲田駅周辺の喧騒から外れた街の一角に、須山文具店はたたずんでいます。
実はこのお店はただの文具店ではなく、昭和のグッズ・アイテムが多数保管されている“資料館”だというのです。
平成生まれ平成育ちの筆者ですが、子どものころに山崎貴監督の映画「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズを見て以来、各地のレトロテーマパークや博物館に足を運ぶなど、昭和という時代にほんのりと憧れがあります。
生の昭和を体感できるという須山文具店に興味が湧いたので、電話で連絡を入れてみたところ、店主の須山さんは「どうぞ。時間を言っていただければお待ちしてますよ」と取材を快諾してくれました。
ただ、電話口で須山さんが強調していたのは「扱っているのはコレクションではない」ということ。店内にあるのはあくまで自分や家族が使っていたものや、文具店で取り扱っていた商品、人からもらったものだといいます。
■ 資料館のようになったのは6~7年前から
ごめんください、とガラス戸を開けて中に入ると、奥から須山さんが出てきて早速案内が始まりました。
説明によると、店内が今の資料館のような形態になったのは6~7年前ほどのことだそう。羽田空港が近いこともあり、海外の方も多く訪れているそうです。
置かれている品物はどれも貴重な資料に見えますが「売らないわけじゃない」と須山さん。実際に海外から訪れた人が店内のショーケースを指で示して「ここからここまで全部ください」と言ってきたこともあるのだとか。
ただ高額転売される恐れもあるため、初対面の人には売らない、と話していました。
「うちは歴史を残したいのであって。転売をするというのは本当に欲しがっているわけじゃないじゃないですか」として、熱意が感じられないと売らないとのことでした。
■ 次から次へと出てくる昭和アイテムたち「日本の闇文具」と呼ばれたものも……
店内の細い通路をあちこちへ移動して「こういうのがあるよ」「これ面白いよ」と言いながら出してくれるのは、昭和世代の人なら漏れなく「懐かしい」と声を上げそうな、味のあるアイテムの数々。
鉛筆を鋭利に削れる金属製の鉛筆削りや文具セットなどは、筆者も「あったなあ」と思わされます。
その一方で当時の狭い学校机でも勉強がしやすくなるよう、教科書を立てかけておくことができる変形筆箱や、赤シートではなくページの半分を切り取って暗記する英単語帳など、知らないものもたくさん。
とりわけ驚かされたのが、須山さんが「日本の闇文具」として出してくれた「昆虫採集セット」。中に本物の注射器が入っており「今では考えられない」と話していました。
話しているうちに須山さんが渡してくれたのは、小学生用の名札。表面には名前と学年を書く紙が挟まっており、裏側には電話代の硬貨をしまっておけるポケットが付いています。
さらにトンボ鉛筆が鉛筆の付録として配っていたというザ・ドリフターズの鉛筆キャップや、今はもう作られなくなってしまった虫の写真が表紙に使われているジャポニカ学習帳なども次々見せてくれました。
筆者からすれば「これ結構レアものなんじゃ……?」と思わずにはいられない品々ですが、特に気にせずポンポン出してくる須山さん。昭和の人情のようなものを感じました。
■ カメラや玩具……そして怪しげな手帳 店舗でしか見られないディープな昭和も
文具店なので文具がメインかと思いきや、初期のフィルムカメラ、ポラロイドカメラ、ビデオカメラから始まり、音響機器、自転車など展示されているアイテムは多岐にわたります。
店内の高いところでケースに入れられている天体望遠鏡は、須山文具店の歴史の中でもかなり古いもの。約68年前、須山さんがまだ小学生のころに父親に買ってもらったものだとか。
店頭には同じく父親に買ってもらったという、1965年製のスポーツ自転車も置かれていました。
また玩具も豊富。今もなお根強いファンがいるというスロットカーの初期モデルや、最初期のチョロQなどが置かれています。
天井を見上げると、三角形のビニール凧が目に入ります。目玉のようなデザインが特徴的で、1970年代に日本でブームを巻き起こしたアメリカ生まれの「ゲイラカイト」と間違える人も多いそうです。ですが、実は別物。日本のメーカーが製造した「UFOカイト」なのだといいます。
そのほか昭和の雑誌や電話の払込用紙、電報の申し込み用紙、記念きっぷ、地図、テレカなど紙の資料も出てくる出てくる。
さらに戦時中の国債や、太平洋戦争で出兵した須山さんのお父さんが持っていた「徴兵検査の心得概要」など、太平洋戦争にまつわる資料も。
外観は文具店ですが、中にはレトロ文化にとどまらない“昭和史”が詰まっていました。
話が盛り上がってくると、須山さんは店の奥からかなり踏み込んだアイテムも見せてくれました。
筆者の前に置かれたのは、一見するとただの革張りの手帳。しかし中を広げれば、そこにはかなりディープな昭和が広がっています。
中身をお見せすることは事情によりできないのですが、その手帳と同じ箱に入っていたのが「春画」だったということをお伝えすれば、ある程度予想がつくのではないでしょうか。
■ 店内のアイテムは基本的に触ってOK!話も楽しく、時間はあっという間に過ぎていく
また、須山さんの話も魅力的。アイテム紹介の合間に挟まれる昭和あるあるや文具メーカーの裏話など、ここでしか聞けないであろうエピソードの数々も面白いです。
通常の資料館や博物館の場合、展示品は基本的にはショーケースの中。どれだけ間近でもその手触り、さらにはにおいまでは分かりません。しかし須山文具店の品々は、基本的にはすべて触ってOK。
事前の電話で須山さんが言っていた「コレクションではない」という言葉を、ただの謙遜だと思っていた筆者。しかし店内の品々はおそらく須山さんにとって本当に「コレクション」ではなく、今もなお「日用品」。そのため五感で昭和を体感させてくれるのです。
時間も時代も忘れて須山さんと話し込んでしまった筆者。店に足を運んだのは昼の12時くらいだったのですが、気がつけば夕方の5時になっていました。
あらゆる便利がそろう令和の時代。大抵のことはスマホ1台で済ませることができ、わからないことがあれば、検索エンジンや生成AIを使えば一瞬で答えが出てきます。
昭和のアイテムは1つのアイテムに1つの機能を搭載したものが多く、今の時代からすれば非常に不便だったかもしれません。
しかし今の時代の「スマホがあれば大丈夫」というのは、裏を返せば「スマホが使えなくなると全部おしまい」とも言えるのではないでしょうか。
完璧な時代などはどこにもなく、令和には令和の良し悪しが、昭和には昭和の良し悪しがあるはず。
今の時代の流れに疲れを感じたときには、須山文具店でお手軽なタイムスリップ体験をしてみるのもよいかもしれません。
なお、お店は不定休で、須山さんが常に在店しているわけではありません。見学を希望する場合は、必ず事前に連絡のうえで訪れるようにしてください。連絡先は、インターネット検索で確認できます。
<記事化協力>
須山文具店
(ヨシクラミク)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By YoshikuraMiku | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2026021903.html
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