さまざまな分野で人手不足が深刻化する中、注目されているのが、扶養に入りながら働く短時間労働者への働きかけだ。一定の年収を超えると手取りの収入が減ってしまう、いわゆる「年収の壁」を意識し、労働時間を調整する人は少なくないだろう。
現在も「扶養の枠内で働いている人」は8割以上
所得税や社会保険料の支払いを考慮し、扶養内で働く人が多い(「リバティーワークス」調べ)

(「リバティーワークス」調べ)
そもそも、いわゆる「年収の壁」とは、パートやアルバイトとして働いている人が一定の金額を得ると、税金や社会保険料の負担が生じる、または変更になる基準の金額を指す。たとえば、所得税の課税がかかる103万円、社会保険料の対象になる106万円や130万円などのことで、年収がそのラインを超過すると手取りが減少する…という現象から「年収の壁」と呼ばれている。
株式会社アントプロダクションが運営するWebメディア「リバティーワークス」は、扶養に入った経験のある男女にアンケート調査を実施し、その結果を公表した。「2023年度の年収見込み額」は、現在収入を得ていない人も含めて年収103万円以下と回答した人が77.1%だった。
また、扶養の枠内である201万円以下と回答したのは82.4%であることから、現在も扶養の枠内で働いている人は8割以上いるということになる。扶養内であればさまざまな控除が受けられることから、扶養から外れて働こうと思う人は少ないのだろう。では、年収の壁がなければ、働き方は変わるのだろうか。
年収の壁がなければ、長く働きたい人が約7割も存在!

手取り額の減少がなければ、より長く働きたいと考える人が多いようだ(「リバティーワークス」調べ)
現在扶養内で働く層に「年収の壁がなければ、今後働き方を変えるか」尋ねたところ、「より長く働きたい」が23.3%、「多少は長く働きたい」46.5%だった。このことから、扶養内で働いている人の約7割が今よりも長時間働くことを希望していると判明。長時間労働を希望しながらも、年収の壁が足かせとなっている人が多いことがわかる。

(画像は「厚生労働省」公式サイトより引用)
そこで、厚生労働省は2023年10月20日より、労働者の手取り額減少を防ぐ目的で「年収の壁・支援強化パッケージ」という思い切った施策を打ち出した。
だが、この制度は一時的なものであるため、国からの補助がなくなれば、また従来通りとなってしまう可能性が高い。企業側としては、このような制度を利用しつつ、いずれ社会保険料を負担しても赤字運営にならないような仕組みを構築して、長時間労働を希望する人たちを受け入れる必要がありそうだ。
出典元:【アントプロダクション株式会社 /ネタもと】
引用元:【厚生労働省】