最新のWi-Fi規格は「Wi-Fi 7」ですが、その前の規格である「Wi-Fi 6」や「Wi-Fi 6E」とは何がどのように違うのでしょうか? そして、今すぐWi-Fiルーターを購入するなら、やはり最新規格のWi-Fi 7にしたほうがいいのでしょうか……。
まずはWi-Fi規格の基本をおさらいしておこう
無線LAN(Wi-Fi)には複数の規格があり、何がなんだかよく分からないという人も多いでしょう。そもそも無線LANの規格は「米国電気電子学会(IEEE・アイ・トリプル・イー)」で定められたもので、業界団体の「Wi-Fi Alliance」が互換性を認定した製品には「Wi-Fi」ロゴの表示が認可されています。
●Wi-Fi Alliance(公式)は→こちら(英語)
最新版Wi-Fi 7ロゴ(画像はWi-Fi Alliance公式サイトより引用)
たとえば、IEEE 802.11n規格は「Wi-Fi 4」、IEEE 802.11ac規格は「Wi-Fi 5」、IEEE 802.11ax規格は「Wi-Fi 6」と呼ばれています。
2019年に登場した「IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)」は、2.4GHz帯と5GHz帯の2つを利用しており、すでにiPhone 11/12/13/14や、5G対応のAndroidスマホでも広く使われています。
そのWi-Fi 6を機能拡張したのが「Wi-Fi 6E」です。これはWi-Fi 6に6GHz帯を追加することで、実効速度がさらに高速化しているのが特徴です。
そのようななか、2024年には最新規格Wi-Fi 7が登場しました。これは「IEEE 802.11be」という規格になり、Wi-Fi 6E同様に2.4GHz/5GHz/6GHzの3帯域を利用しますが、Wi-Fi 7では最大理論値で46Gbpsまで高速化することが可能となっています。
■Wi-Fi規格まとめ

こちらがWi-Fi規格をまとめた表です。Wi-Fi規格は年々高速化しているのが分かると思います(表は筆者が独自に作成)
「Wi-Fi 7」はなぜそんなに速いのか?
現在、市場では主に「Wi-Fi 6」「Wi-Fi 6E」「Wi-Fi 7」の3つの規格に対応したWi-Fiルーターが販売されています。当然、新しい規格に対応する高性能な製品の値段は高く、いったいどれを買っていいのか悩んでしまう人も多いでしょう。
まず、「Wi-Fi 6」と「Wi-Fi 6E」の違いは6GHz帯が追加されたことです。これにより6GHz帯で新たに20MHzで24チャンネル、40MHzで12チャンネルなどが利用可能となったため、混線や速度低下の可能性が低くなりました。
次に、「Wi-Fi 6E」と「Wi-Fi 7」の違いですが、いずれも6GHz帯に対応しているのに、最大速度が9.6Gbpsから一気に46Gbpsまでスピードアップしています。その秘密は主に以下の3つの技術にあります。
■Wi-Fi 7の高速・安定化技術
・帯域幅が160MHzから320MHzへ2倍に拡張(6GHz帯)
・2.4GHz/5GHz/6GHzの複数の周波数帯を同時利用できる「MLO」
・電気信号の変換効率が向上し通信効率が20%向上する「4096QAM」
まず紹介するのは「帯域幅(バンド)」です。
次に、複数のアンテナを使ったストリーム数も2倍になります。Wi-Fi 6/6Eが8ストリームだったのに対し、16 × 16 MU-MIMOによってWi-Fi 7では16ストリームに増やせるため、こちらも伝送速度は2倍になります。もちろん、これは理論上のフルスペック状態の話であり、それぞれのWi-Fiルーターによって対応状況は異なります。

Wi-Fi 7では一度に利用できる帯域幅が、160MHz幅から320MHz幅(6GHz帯のみ)に拡張されており、Wi-Fi 6Eより理論上2倍の高速化が可能です(図は筆者が作成)
次に、Wi-Fi 7では「MLO(マルチリンクオペレーション)」が採用されています。これは、2.4GHz/5GHz/6GHzのなかから複数の帯域とチャンネルでデータを同時に送受信できるようにする技術。これにより、通信容量が拡大して速度が向上するほか、ひとつの帯域で遅延が発生しても、ほかの帯域でカバーできるため、送受信速度が安定する効果もあります。

Wi-Fi 6Eでは2.4GHz/5GHz/6GHzのいずれかひとつしか利用できませんでしたが、Wi-Fi 7ではMLO技術によって同時に複数の帯域を利用可能となります(図は筆者が作成)
また、Wi-Fi 7では電気信号の変換効率が向上しています。Wi-Fi 6Eでは1024QAM(10bit)だったのに対し、Wi-Fi 7では4096QAM(12bit)に増加しており、理論上の伝送速度が20%ほど向上しているのです。
QAMとは”Quadrature Amplitude Modulation”の略(直交振幅変調)で、電気信号と電波を変調する方式のこと。この数値が大きい方がより多くのデータを一度に転送できて効率が良くなるんですね。

Wi-Fi 6Eでは1024QAM(10bit)だったのに対し、Wi-Fi 7では4096QAM(12bit)になり、一度に処理できる情報量が20%ほど増加しています(図は筆者が作成)
今すぐWi-Fi 7にすべきなの?
ここまでの説明で、Wi-Fi 7のほうがWi-Fi 6Eよりもかなり速度の向上や安定性が見られることがお分かりいただけたと思います。
それなら、やはりWi-Fi 7対応のWi-Fiルーターがオススメかと言われると、現状ではそうとも言えません。
たとえば、バッファローのWi-Fi 7対応「WXR18000BE10P/N(Amazon.co.jp限定)」はAmazonの実勢価格が6万4,980円。Wi-Fi 6E対応の「WXR-11000XE12/N(Amazon.co.jp限定)」は実勢価格で4万4,980円と、2万円もの価格差があります(24年7月20日時点)。

こちらは最新規格Wi-Fi 7に対応するバッファロー「WXR18000BE10P/N(Amazon.co.jp限定)」ですが、Amazonの実勢価格は6万4,980円と、かなり高額です(画像はAmazon公式サイトより引用)
●バッファロー「WXR18000BE10P/N【Amazon.co.jp限定】」は→こちら(Amazon)

見た目はよく似ていますが、こちらはWi-Fi 6E対応の「WXR-11000XE12/N(Amazon.co.jp限定)」です。価格は4万4,980円でWi-Fi 7対応機とは2万円ほど安くなります(画像はAmazon公式サイトより引用)
●バッファロー「WXR-11000XE12/N【Amazon.co.jp限定】」は→こちら(Amazon)
そもそも、自宅のネット回線が100Mbpsや1Gbpsでは、高価なWi-Fi 7を導入してもオーバースペックです。少なくとも自宅が10Gbpsの高速回線でないとWi-Fi 7対応機を購入しても、その性能を実感するのは難しいでしょう。
しかも、現状ではWi-Fi 7に対応できるデバイス(クライアント)もあまり販売されていません。
たとえば、iPhone 15 Pro/15 Pro MaxはWi-Fi 6Eをサポートしていますが、iPhone 15/15 PluはWi-Fi 6までしか対応していないのです。
もちろん、Wi-Fi 7対応の最新モデルを買っておいたほうがより長く使えると思います。しかし、現状ではWi-Fiルーターが高額すぎるので、仕事や趣味でどうしても10Gbpsの速度をWi-Fiでも活かしたいといった特別な理由がない限り、Wi-Fi 6E対応モデルで十分でしょう。
実際、筆者の自宅は1Gbpsのネット回線+Wi-Fi 6の環境ですが、実効速度で300~500Mbps程度は出ますので、4K動画の再生でも困ることはありません。
ちなみに、Wi-Fi 6E対応モデルならバッファロー「WSR-5400XE6/N(Amazon.co.jp限定)」が、1万7,980円とグッと安く入手できます。

こちらはWi-Fi 6E対応のバッファロー「WSR-5400XE6/N(Amazon.co.jp限定)」です。
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まとめ
いかがでしょうか? 今回は「Wi-Fi 6/6E」と「Wi-Fi 7」は何が違うのか? そして、今買うならWi-Fi 7にしたほうがいいのか検討してみました。確かに、Wi-Fi 7のほうがWi-Fi 6/6Eよりかなり高速で安定性も高いのですが、現状では対応Wi-Fiルーターの価格が高すぎます。
今、Wi-Fi 7を購入すべき人は、自宅のネット回線が少なくとも10Gbpsであること。今後も、最新のパソコンやスマホを購入する予定のある人でしょう。あるいは、自宅が広すぎて電波が届きにくい場合は、320MHz幅やMLO技術と搭載したWi-Fi 7対応ルーターよって隅々まで電波が届くようになる可能性はあります。もし、そのような事情がない人がWi-Fiルーターを新調するなら、価格がこなれてきたWi-Fi 6E対応のWi-Fiルーターで十分でしょう。
なお、長期的に考えると6GHz帯に対応しないWi-Fi 6のWi-Fiルーターは、Wi-Fi 6Eとの価格差も少ないので避けたほうが無難だと思います。
※文中の価格はすべて税込みです。
※サムネイル画像(Image:rafapress / Shutterstock.com)
By OTONA LIFE