夏休みはまだ遠い。息抜きに週末の温泉に行くなら、露天風呂から緑が楽しめたらうれしい。
東京からなら車で約1時間半。“旅行”と構えずにサクッと足を伸ばせる気軽な場所だ。箱根国道1号を上っていくと、左手に小さな「nazuna」の表示。かなり急坂の細い道だから、車高の低い車は厳しいかもしれない。部屋数の少ない小さな宿は、京都の町家の要素を取り入れているといい、木のぬくもりと黒が基調の落ち着いた内装だ。到着すると、カウンター形式のいろり端で、焙(ほう)じ立てのほうじ茶をいれてもらえる。和菓子や地元の名物、かまぼこなど、ちょっとしたおつまみを楽しみながらチェックインを待つ。
すべての部屋に露天や半露天のお風呂がついている。筆者が泊まったのはデラックスツイン「三条」という部屋。
チェックインから夕刻まで、下階ではさまざまな飲みもののフリーフローを楽しめるし、部屋に持って上がることもできる。露天で往路の疲れをいやしたら、夕食は東京・恵比寿のイタリアンシェフが監修するコース。相州牛や箱根山麓豚のしゃぶしゃぶがメインだが、おぼろ豆腐のカプレーゼやトマトのリゾットなど、さりげなくイタリアンな味がちりばめられている。一見したところ海外からの観光客も多く、英語のメニューも用意されているから、海外からの友人と遊びに行っても、面倒な食材の通訳をしないで済みそうだ。
朝食も、いろり端でアユや地元の野菜を焼きながらのシンプルな食卓。夜も朝も、いわゆる“温泉旅館”の食事の枠にはおさまらない自由で軽快な感じに、インバウンド時代のちょっと新しい箱根を垣間見た一泊だった。
(text by coco.g)