100年後も健やかに!――。風邪薬「ルル」や解熱鎮痛薬「ロキソニン」などのOTC医薬品をはじめセルフケア・セルフメディケーションの事業を展開する第一三共ヘルスケア(東京)はこのほど、人々の健康で豊かな生活に貢献することを目標に、従来のサステナビリティー(持続可能性)活動の枠組みを一新、新たな活動内容を公表した。
同社の内田高広社長は、6月27日に都内の本社で開いた説明会で「サステナビリティー宣言」を発表。100年後の未来も人・社会・地球が健やかであることが全ての根底にあるべきとの基本方針に基づき、新たなコンセプト「Wellness for GOOD」を定めた。
「Wellness」は「健やかであること」、「for GOOD」は「良い目的のために」と「永続的に・ずっと」という意味。今回、新しく作ったロゴデザインでは「GOOD」の「OO」の部分は無限大の記号がモチーフになっているという。
活動内容の策定にあたり、同社は「健康問題」「社会課題」「環境課題」の3領域について、それぞれの課題と、対応、実施できることを洗い出し、検討した。
説明会では、サステナビリティ推進マネジャーの岩城純也氏が活動内容の重点施策として「People」「Society」「Earth」の三つの領域について取り組みを説明。
例えば「People」では、中高生を対象に出張授業と教育コンテンツの提供を通じてセルフケアの重要性や、実践に必要な知識を身に付けてもらうことが活動の柱とした。すでに今年5月から大阪の高校で出張授業を開始しており、今後、東京、福岡、静岡、福井の高校でも展開する予定。内田社長は「リテラシー向上には、若い人に直接アプローチする必要がある」と狙いを説明、来年度も継続していく意向を示した。
「Earth」では、年々使用量が増えている「おくすりシート」に着目。リサイクル資源としての認知度が低く、本来は資源ごみとして処理すべきものにもかかわらず、実態は約7割の人がその事実を知らないと指摘。
推進マネジャーの岩城氏は「健康を支える製品サービスの提供にとどまらず、社会などさまざまな環境に働きかけていく必要がある。社会や地球環境の健やかさをなくしては、人の健やかさは実現できない」とサステナビリティー宣言の意義を説明。同社は幅広い活動への理解を深めてもらうために、新たにサステナビリティーサイトを開設。ヘルスリテラシー向上を今後の重点課題として、最新の取り組みなどを発信していくという。
同社の取り組みが、100年後の人々の健やかさにどうつながっていくのか注目したい。
2026年の会社発足20周年を前に「サステナビリティー宣言」を打ち出した、第一三共ヘルスケアの内田高広社長に、その意義や今後の取り組みについて聞いた。
――サステナビリティー宣言を打ち出した、その背景、狙いは。
「第一三共ヘルスケアは風通しの良い会社で、権限も各部署に委譲されていて、やるべきだと思ったことができる会社です。サステナビリティーはこれまで担当していた業務推進部から、この4月に広報部に移管しました。
「社会の中にいろいろな課題がある中、人・社会・地球という三つの領域における課題に対して、われわれが取り組んでいることを整理しました。身近なところでいうと、健康に関してネットではびこっている誤った情報、社会保障費の増大、オーバードーズなど、リテラシーについて、われわれができることはなんだろうと。そういう点に取り組んでいきたいと思います」
――ネットの中では生活者の健康を脅かすフェイクニュースもある。
「エビデンスもないのに風邪薬は2倍飲んだほうがいいとか、誤った情報がアップされている。OTC医薬品は効果と安全性の両方を担保しないといけない。正しい情報提供をしていかないとセルフメディケーションも推進できない。こうした課題に対して、OTC医薬品ができること、製薬会社ができることはあると思って取り組んでいきます」
――第一三共グループ内の連携は。
「第一三共は上場会社で、取り組む課題は明確にある。われわれ第一三共ヘルスケアはそのグループの一員としてしっかり責務を果たす。われわれは生活者に近いセルフケア・セルフメディケーションを担う事業会社。役割分担をしながら、サステナビリティーについても、きちんと連携しています」
――今回のサステナビリティー宣言、強調したいのは。
「一つはセルフケアアカデミー。
――出張授業について詳しく。
「すでに大阪の高校で始めていて、1校あたり12コマ程度の授業を行う予定。生徒もインプットだけだと忘れていくので、ワークショップを用意して、映像を作って成果を発表する形式としています。本年度は5~6校で出張授業を予定しており、まずは秋ごろまで続ける。来年度は今回の反響をみながら、学校の予定に応じて検討したい」
――おくすりシートの回収・日本初のリサイクルプロジェクトについて。
「いまは具体的な数字はないが、仕組みをしっかり作り、実施できる地域を広げていきたい」
――今後の売上高の目標は。
「24年度の売上高は867億円。