文化庁主催「発掘された日本列島2025」展(列島展)が、7月12日から長崎県佐世保市の島瀬美術センターで開催されている。本展は、全国の注目遺跡を紹介する巡回展示と、開催地域ごとに独自の視点で構成される地域展の二部構成となっている。
今回の巡回展示の一つとして、旧石器時代において国内で初めて特別史跡に指定された福井洞窟を取り上げた「洞窟王国佐世保」が紹介されている。さらに佐世保会場では、来場者に福井洞窟をはじめとする実際の遺跡現地に訪れてもらうことを目的に、遺跡近くの福井洞窟ミュージアムで地域展「洞窟王国佐世保」を開催中だ。
福井洞窟ミュージアム館内。約6メートルの地層の剥ぎ取り資料とジオラマに投影された映像によって、旧石器時代から縄文時代への移り変わりを体感できる福井洞窟は、間口約12メートル、奥行約6メートル、高さ約3メートルの岩陰遺跡で、調査結果から、かつては現在よりはるかに大きな洞窟だったことが分かっている。地層からは土器・石器・人骨といった遺物が出土し、科学分析により当時の自然環境や動植物相も復元されつつある。旧石器時代末期から縄文時代草創期への移行を示す、極めて重要な遺跡だ。
佐世保市の特別史跡福井洞窟。同市には侵食を受けやすい岩石が多く分布しており、海に面し山が近い立地から、山腹や渓谷沿いに岩陰や洞窟が多数形成されている佐世保市教育委員会の栁田裕三氏は、「今でも1万4千年前の人々が眺めていたのとあまり変わらない景観が残っている。実際に現地に行くと、風当たりや日当たりから臨場感深く遺跡を学ぶことができる。現地そのものが持つ力があるので、展覧会の資料を見るだけでなく、ぜひ現地に訪れていただきたい」と述べた。
佐世保市の九十九島。リアス式海岸と多島海の組み合わせによる独特で美しい景観に思わず息を飲む。「発掘された日本列島2025」展佐世保会場は8月24日まで開催。その後は京都府立山城郷土資料館(9月6日~10月5日)、三重県総合博物館(10月18日~12月14日)、郡山市歴史情報博物館(2026年1月6日~2月22日)へと巡回する。