推し活でのトレカ交換の体験から課題を見い出し、グッズ交換プラットフォーム「TREPORTAL(トレポータル)」を世に送り出した神谷優理さん

 未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。

今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。

 推し活の情熱を原点にアプリを開発し起業へ。大学院に在籍しながらグッズ交換プラットフォームを手掛ける神谷優理(かみや・ゆり)さんに、挑戦のきっかけやはばたく秘けつを聞いた。

――作ったのはどんなアプリ?

  グッズ交換アプリ「TREPORTAL(トレポータル)」です。推し活では今、ランダムグッズという開けるまで中身が分からないグッズがたくさん販売されています。ランダムグッズを開封して推しが出なかったときに、譲りたいグッズと欲しいグッズを登録して交換相手を探せるアプリです。

――取り組んだきっかけは?

 現在、グッズ交換はXなどSNS上で行われることが多いのですが、SNSは交換専用のものではないのでトラブルが起きることが結構あります。1枚の画像に100枚ぐらいのグッズが並んでいたりして、それを目で探さなければいけないのも不便ですし、かつ安全面でも心配が伴うという点で、大きく課題に感じていました。

 私自身、K-POPのSEVENTEENのWonwoo(ウォヌ)が好きなんです。今兵役中で、おととい(7月17日)が誕生日だったんですけど(笑)。CDが発売されるたびに100枚ぐらい買うほど好きだったのですが、1枚のCDにグッズが4~5種類くらいついていて、CDを購入するたびに交換グッズが大量に増え、交換に関する課題を強く感じるきっかけになりました。その課題を解決するために、身の回りの人に、より楽しく安心して推し活ができる環境を提供するために、このサービスを立ち上げたという流れです。

――事業化にあたり特別な支援を受けたとか。

 はい。経産省を通じて実施されている未踏IT人材発掘・育成事業の一つで、事業化や社会実装を視野に入れたプロジェクトを支援する「未踏アドバンスト」という枠組みに応募して採択されました。万博で「いのちの未来」をプロデュースされた石黒浩さんも未踏のPM(プロジェクトマネジャー)をされていて、推し活の根底にあるファン心理にフォーカスすることについて、いろいろフィードバックをいただきました。「そもそも推し活って何?」「どういう時にお金を使いたくなる?」っていうところから。

――開発・起業につきまとう困難や不安。どうやって乗り越えた?

 未踏では、「TREPORTAL」を支えてくださる方がたくさんいて、そういう方に、困った時にいつでも聞ける環境を用意してくださっていたんです。迷うのに使うエネルギーを、前に進むエネルギーに変えてくださる方がたくさんいたのが大きかったかなと考えています。「とりあえずこれでやればいいんじゃない?」みたいなことを、いろいろと経験された方の口から聞くことで、「とりあえずやってみよう」という意思決定につながるので。迷っているだけだと、どう迷うにしろ、なかなか結果には結びつかないので、とりあえず試して、そこから何かを学び取って次に進めていくというプロセスに変換してくださるのがありがたかったですね。前に進みやすくなったと思います。

――会社をこれからどうしていきたい?

 将来的には交換という物の取引だけではなく、その先に見えてくるコミュニティーをターゲットにしています。

というのも、交換という行為には、ランダム商品を開封するワクワク感をさらに膨らませる側面があります。交換を通じて友人ができたり、本来なら出会わなかった人とつながるきっかけになったり。その輪が新しいイベントへの参加や推し活の楽しさへと循環していく。私は「交換」とは、そうした人と人とのつながりを生み出す体験だと捉えています。このプラットフォームでは、まず交換から入り、その体験を軸にストーリーを重ねていくことで、安心して楽しく推し活ができる人が増えていくようなコミュニティーへと成長させていきたいと考えています。

――未来世代がはばたくために必要なことは?

 私は推し活を事業にしたということがあるので、“好きなことをやる”ということに尽きるんじゃないかと思います。“好き”という気持ちはそのままモチベーションにつながりますし、行動にもつながる。そして、その行動は結果にもつながっていく。

 好きなことをやるのが、自分のパフォーマンスを一番発揮できることになるので、理にかなっているのではないかなと。これは、自分が好きなことをやる言い訳にしているのかもしれませんが(笑)、そう自分に言い聞かせて続けています。

グッズ交換アプリ「TREPORTAL」の画面。「求めるメンバー」と「譲りたいメンバー」を入力すると該当する相手が検索される7月19日に開催されたデジタル学園祭2025でアプリを紹介する神谷優理さん。
大阪・関西万博のミャクミャクをイメージした青と赤の衣装で。

神谷優理(かみや・ゆり)/99年生まれ。東京大学大学院情報理工学系研究科。株式会社トレポータル代表取締役。独学でソフトウェア開発を学び、AWSでインターンを経験。大学の知り合いとともに、2023年度未踏アドバンスト事業「グッズ交換アプリケーションの開発による推し活革命」に採択され、2023年10月に法人化。趣味はSEVENTEENのトレーディングカード収集。

 #はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパン、ミキハウスとともにさまざまな活動を行っています。 

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