「たばこ」「喫煙者」には“肩身が狭い”というイメージも少なくないかもしれないが、たばこには、神に供えるものという歴史があるという。東京・墨田区にある「たばこと塩の博物館」で、企画展「けむりと人々のつながり ―メソアメリカの記憶」がスタートした。
たばこのふるさととされている中南米地域。植物としてのたばこも、南米大陸のアンデス山中で誕生したと考えられ、アメリカ大陸各地の人々によってさまざまな用途、方法で利用されてきた。特に、中米の古代メソアメリカ(メキシコ・中央アメリカ北西部と重複する地域で古代文明が栄えた地域)には、パイプや喫煙の様子が描かれた土器など、たばこに関する資料が残されており、たばこはその地の人々が信仰する神々への供物の一つとして、あるいは儀式の際の道具として使用されていたことが分かっている。また、喫煙時に生じるけむりは、天上界の神々と地上界の人間との間で、神託や願いなどを運ぶ役割を果たすと考えられてきたという。香炉でたかれた香のけむりもまた、儀式に欠かせないもので、浄化や将来を見通すなどの役割を担っていたとされている。このような古代の人々の行いは現代にも引き継がれ、先住民文化が息づく地域では、現在でも人々が祭壇にたばこを供えたり、儀礼の中でたばこや香のけむりを発生させたりする場面が見られるという。
今回の企画展では、現在のメキシコ周辺地域を中心に、古代と現代の人々とけむりの関係に焦点を当てる。館蔵資料の中から、古代の人々が残した器や喫煙具、現代社会を生きる人々とけむりに関する道具など約70点の資料を展示し、メソアメリカの人々とけむりにまつわる文化の一端を紹介する。たばこをふかす神様は、絵文書などの資料に度々登場。同企画展のサポートキャラクターであるたばこをふかす神は、同博物館のロゴをアレンジしたもので、「マドリード絵文書」に描かれた神をもとにしている。
たばこと塩の博物館の開館時間は10時~17時(入館は16時30分まで)。