うちの実家の愛猫「チョビ」くん。
私が25歳の夏。
しかし、その白猫はタッチの差で別の方にもらわれてしまった。ではということで、いまのチョビくんがうちへ来てくれたのだ。名前も決めていたもんだから、そのまま「チョビ」。いやいや、そのまま流用するなよ! うちの家族、どれだけ雑なんだよッ! 全くちょび髭要素のないチョビくんが爆誕した。でも、それも含めてうちに来てくれた奇跡を感じる。
私はその数カ月後に落語家になった。
だからチョビの〝猫生〟と、私の落語家人生はイコール。
いまは離れて暮らしているけど、顔が見たさに実家に帰る。一目散にチョビのところにいってモフモフ触る。ぐちゃぐちゃ触られるのがあんまり好きじゃないけど、私には諦めたように触らせてくれる優しいチョビ。
ビビりなあなたは、チャイムが鳴るだけで、クローゼットの奥まで入ってしまうくせに、家族の前ではお腹(なか)だして寝てる内弁慶猫。
トリマーの方にシャンプーしてもらう日や、病院に行く日は大変だ。チョビにバレると隠れてしまうため、朝から家族全員で普段を装う猿芝居。これが白々しくて笑っちゃう。なんとか連れ出すことに成功してもビビり倒して石のように固まる。ある時はシャンプーの最後に緊張のあまり、おしっこしちゃったっけ。優しいトリマーさんで「もう一度洗い直しましたから大丈夫ですよー」と笑顔で言ってくれた。
そんなチョビが我が家に来てから、来年で20年。
牙が全部なくなって、ご飯を食べるのにもまわりに飛ばしまくるし。
そのくせ変にグルメで、食べたくないものは絶対に食べない頑固じじぃ。
それで仕方ないから好物をあげるとガッツキすぎて吐いたり。世話の焼けるじじぃになった。
でも…。
そのままのわがままビビりチョビでいいから。
ずーっと寝てていいから。
長生きしてね。大好きなチョビくん。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 36からの転載】
ちょうかろう・ももか 東京都出身。春風亭小朝さんに弟子入り後、二ツ目・春風亭ぴっかり☆時代に「浅草芸能大賞」新人賞を受賞。