持続可能で環境にやさしい社会を実現するためには、さまざまな場所でのたゆみない活動が必要だ。日本の印刷業界を取りまとめる一般社団法人 日本印刷産業連合会(東京)も、2006年に「グリーンプリンティング(GP)認定制度」を創設。
この認定制度は、環境に配慮した自主基準に基づき、基準を達成した工場・事業所を認定するとともに、同基準に適合した印刷製品への「GPマーク」表示、並びに印刷工場が使用する資機材の認定などを行うもの。2025年10月現在、447工場がGP認定され、GPマーク表示製品は累計13億部を超えている。
同連合会では毎年、GP認定制度に対する深い理解と同制度の積極的な活用が認められる企業や団体に、「GP環境大賞」「GPマーク普及大賞」「GP資機材環境大賞」を授与している。つまり、印刷物を発注する側、印刷物を作る側、印刷のための資機材を作る側、3つの違う立場で環境に配慮する団体をそれぞれ表彰しているのだ。この3賞の2025年度の表彰式が、10月15日に都内で行われた。
表彰式の冒頭、同連合会の添田秀樹副会長が登壇。「GP認定工場へ印刷物を発注していただくことでサプライチェーン全体での環境への負荷低減を目指している。GPマークのより一層の普及と、印刷産業における環境課題の解決にお力添えを」と開会のあいさつを述べた。
表彰式では、最初に「GP環境大賞ゴールドプライズ」の表彰が行われ、株式会社あわしま堂が栄誉に輝いた。同賞は、GP環境大賞を過去3回受賞したクライアントに対し、4回目の表彰時に贈られるもので、プレゼンターのグリーンプリンティングPR大使・小山薫堂氏から賞状とトロフィーが手渡された。
「GP環境大賞」は、グリーンプリンティング認定制度のGPマーク表示印刷製品を数多く発注したクライアントに対して贈られるもの。
GP認定工場の中でGPマークの普及に貢献した会社を表彰するのが「GPマーク普及大賞」。この賞を過去3回以上受賞した会社に贈られる「GPマーク普及大賞ゴールドプライズ」は、今年は株式会社北四国グラビア印刷、六三(むつみ)印刷株式会社の2社が受賞した。「GPマーク普及大賞」は、〈オフセット印刷部門〉で宝印刷株式会社、丸正印刷株式会社の2社が、〈グラビア・シール・スクリーン印刷部門〉で株式会社巧芸社が受賞。大賞に準じる「GPマーク普及準大賞」は、株式会社KASAMA、大日本印刷株式会社、株式会社文伸、賀谷セロファン株式会社、株式会社シュウエイ、株式会社多田紙工の6社が受賞した。
また、印刷工場が使用する資機材を製造するメーカーに対し、環境負荷低減に寄与しているとして贈られる「GP資機材環境大賞」は、〈資材部門〉で日本シーマ株式会社が、〈機材部門〉で株式会社リコーが受賞した。
各賞の賞状の授与と記念撮影が終わると、受賞者を代表して株式会社教育芸術社の市川かおり代表取締役社長があいさつ。「弊社は音楽の教科書を作る出版社。子どもたちに環境問題に少しでも関心を持ってほしいという願いを込めて、グリーンプリンティングマークを小中学校の教科書の奥付に入れた。未来を担う子供たちのためにもますます環境に配慮した教科書を作っていきたい」と語った。
表彰式の最後には、2016年からグリーンプリンティングPR大使を務める、放送作家・脚本家の小山薫堂氏が登壇。
表彰式終了後は、小山薫堂氏がゲストと印刷にまつわる話を繰り広げる、「印刷と私」トークショーが行われた。今年のゲストは、ノンフィクション作家の野地秩嘉(のじ・つねよし)氏。『キャンティ物語』『サービスの達人たち』『TOKYOオリンピック物語』など、さまざまなジャンルの著作を発表しているが、この日は出席者の多くがビジネスマンとあって、近著の『トヨタ物語』『伊藤忠 商人の心得』の取材で得られた知見を惜しみなく紹介。
「いい会社には(技術革新とは違う)イノベーションがある」「発見とカイゼンとは」「サラリーマン社長は社会のためを考えた方が長続きする」「伸びる会社は長期で経営を考える」など、トヨタと伊藤忠の具体例を列挙して‟良い会社”について語り合った。
最後に小山氏から「良い会社になるためには何から始めたらいいですか」と尋ねられると、野地氏は「まずは労働環境の整備(伊藤忠の岡藤会長は社員が働きやすい環境をいかにして作るかしか考えなかった)。次に就職人気を上げる。優秀な女性が来るようにする」と即答。会場の出席者がなるほどとうなずく様子が印象的だった。