例えば、「うちの子どもが『ミセスが』って普段から言っているけれど、よく知らないな」という方。今、日本で最も売れている3人組のバンド、Mrs. GREEN APPLEをギュッと絞って濃く知ることができるチャンスです。

彼らの初のドキュメンタリー映画「MGA MAGICAL 10 YEARS DOCUMENTARY FILM ~THE ORIGIN~」が公開中です。

 「ファンが見るものでしょ」と思われたのでは? いえいえ、何も知らなくてもすんなり入っていけます。彼らの人柄や創作の裏側を目撃するうちに、リーダーシップや組織論といった視点からの味わいも増します。

 ミセスのメンバーは、ボーカル&ギター、作詞作曲、この映画の企画・製作総指揮も務める大森元貴(おおもり・もとき)さん、ギターの若井滉斗(わかい・ひろと)さん、キーボードの藤澤涼架(ふじさわ・りょうか)さんです。結成は2013年。15年にメジャーデビューしました。ここ数年の人気ぶりはすさまじく、音楽ストリーミングサービスでJ-POPトップ10のうち、半数以上をミセスの楽曲が占めることも起きています。

 ミセスとは、多数の人が関わる巨大プロジェクトのことでもあります。これを率いる大森さんを、スタッフの方が「戦国武将のようだ」と映画の中で表現します。みんなでより高みを目指すには「こういう人が、ここにいた方がいい」と、大森さんはスタッフィングまで的確にしているんです。

 ライブ終演後の彼の楽屋に、大勢の大人たちが行列を作ります。歌番組で披露する曲、衣装デザインなど、ミセスに関する多岐にわたる案件が提示され、大森さんは次々に判断していきます。

しかも、裸の王様にならないように、任せるべきは任せるかたちで。29歳にして際立つのは、リーダーとしての視野と覚悟です。

 大森さんが新曲を生み出す瞬間にも、カメラは迫ります。それは、メンバーの若井さん、藤澤さんさえも、踏み込んだことのない時間。小学生の時から、独学で作曲をしてきた大森さんが、ゼロから1を生むプロセスは圧巻です。曲が出来上がり、彼のハイレベルな要求にメンバーが演奏でどう悶(もだ)え、応えていくのか。重圧、不安、孤独を隠さず、それぞれに語る言葉から、人柄と3人のバランス、絆が浮かび上がってきます。大森さんは状況に応じて「理」と「情熱」を使い分け、道を照らしていく。秀でた作曲者で指揮者で指導者でサポーターです。

 今年7月、横浜で開かれたデビュー10周年記念ライブの模様を収めた映画「FJORD(フィヨルド)」も同時公開中です。2本の映画から受け取ったものが多すぎて書き切れません。YouTube「うるおうリコメンド」で記者さんとトークしていますので、よかったらご覧ください。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.48からの転載】

山崎あみ(やまざき・あみ)/ 1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。タレント・モデル。1st写真集「Cantabile」(ワニブックス)の他、デジタル写真集も発売中。YouTube番組「うるおうリコメンド」(略称うるりこ。共同通信社制作)出演。

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