冠婚葬祭のうち“婚”は婚礼、“葬”は葬儀を指すのは周知の通り。いずれも古来から大切にされてきた四大礼式(冠は元服、祭は祖先祭祀)のうちの二つだが、結婚式のプロデュース業を展開する、くふうウェディング(東京都中央区)の貝瀬雄一社長は「葬儀は“必需品”の性格を維持しているが、結婚式は”嗜好(しこう)品化”の傾向を近年強めている」と昨今の“結婚式観”の変化を強調する。
厚生労働省の発表によると、2024年の婚姻件数は48万5063件。前年より1万余り増えたものの、1970年代初頭ピーク時の約110万件に比べれば半数にも満たない。「24年の婚姻件数は5年前の19年比で約2割減る中、披露宴をしたくないカップルは増えている。マーケットの規模、ニーズの変化を見据えた結婚式ビジネスの展開がいま求められている」と話す貝瀬社長に、これからの結婚式の在り方やウエディング業界の展望などを聞いた。
―結婚式の“嗜好品”化とはどういう意味ですか。
葬儀は、家族葬の普及などで小規模化の傾向にありますが「やらない」という選択はまだ主流にはなっていないと思います。この意味で葬儀は「やらないわけにいかない」ので「必需品」です。一方、披露宴・パーティーを開くような結婚式は「必ずしもやらなくていい」という意向を持つ若いカップルが今はかなり増えていると感じています。ウエディング業界のアンケートやこの業界を長く経験している私自身の“実感”からそう思います。この従来型の結婚式を「必ずしもやらなくてもいい」と考える若いカップルの増加傾向を「結婚式の嗜好品化」と表現しています。
―その結婚式の嗜好品化にコロナ禍(国内感染者が確認された2020年1月15日から法的扱いが季節性インフルエンザ同等となった23年5月8日までの約3年4カ月)は影響していますか。
コロナ前は、披露宴・パーティーを開くような結婚式もまだ必需品と言えましたが、コロナ後は、大勢集めるタイプの結婚式は「必ずしもやらなくていいかも」という環境、意識が、コロナ禍で簡素・小規模化した結婚式の実例や延期などの動きなどを通じて醸成されたと思います。
―若いカップルの結婚式に対する考え方、好みがかなり細分化しているのですか。
今はいろいろな好みがありますね。結婚式に関する若いカップルの“好み”は現在大きく4つに分かれていると、私は考えています。
―その“四つの好み”とは何ですか。披露宴・パーティーを開く結婚式を好むカップルは必ずいますね。
はい。この披露宴・パーティーを開く結婚式を私は「昭和型」と「令和型」の二つに分けます。費用が違うからです。昭和型は多くの人がイメージする大勢の人を集めて披露宴・パーティーを開く従来型の結婚式。総額300万~400万円で大きなホテルなどで開き、祝儀を除いたカップルの自己負担額が100万~150万円、出席人数の標準は上限50人のイメージです。
―残る二つの好みは何ですか。
三つ目は披露宴・パーティーを省き、ウエディングドレスなど婚礼衣装を借りて写真だけ撮影する「フォトウエディング」です。四つ目は披露宴・パーティーも写真撮影もしない「何もしない」選択です。やることは婚姻届や結婚指輪を買うことのみといったイメージです。われわれの業界では「ナシ婚」と言います。
―その4つの好みのうち、いまの若いカップルに好まれているものは何ですか。
業界のデータや弊社の分析によれば、ここ最近は「フォトウエディング」を好むカップルが増えていると思います。フォトウエディングは、ウエディングドレスやタキシードなどの婚礼衣装をレンタルしてカップルがスタジオなどで写真を撮影するのが典型です。
―昭和型や令和型を好むカップルは減っているのですか。ナシ婚はどうですか。
費用を抑えた令和型結婚式を好むカップルも近年増加傾向を見せています。いまは昭和型結婚式を選ぶカップルの数とそれほど変わらないのではないでしょうか。昔から結婚しても特別何もしないカップルは一定数いました。いまは結婚するおよそ3組に1組は特別何もしないと、私は推測しています。
―4つの好みのそれぞれの割合は今後どうなりそうですか。何もしないカップルも一定数いるということですが…。
現場の実感からすると、披露宴・結婚パーティーをするカップル、フォトウエディングのみのカップル、何もしないカップルの三つに分けると、いずれも同じ3割前後を占めていくのではないでしょうか。
―従来より費用を抑えた結婚式を好むカップルも増えているようですが、経済的な理由がカップルの好みに影響を与えていますか。
もちろん経済的な理由はカップルの選択に大きな影響を与えていると思います。派手にやらない地味な結婚式という意味の“地味婚”という現象が1990年代のバブル経済崩壊後に注目されましたが、かつての地味婚に似た現象の“結婚式の簡素化”はいま現在起きている大きな流れの一つです。ただ、有名ホテルで行う昭和型の結婚式も依然として人気です。また経済的理由のほかにも、先ほど触れた「目立ちたくない」という感覚を持つカップルが増えていることも、結婚式簡素化の要因の一つでしょう。
―御社がプロデュースした令和型の結婚式パーティーの平均出席者数と、総額、カップルの自己負担額、出席者の会費の平均額はどのくらいですか。
弊社が24年中にプロデュースした約140組の令和型の結婚パーティーの平均出席数は53人です。平均額は、総額約160万円、自己負担額約50万円、会費1人約2万1000円です。
―フォトウエディングの平均額は。
弊社の実例では平均18万円。下限は10万円くらいです。
―カップルが自ら写真を撮影するセルフフォトウエディングは10万円以下ですか。
カメラマンなしのセルフフォトウエディングの場合はおよそ5万円で展開可能です。カメラマンがいないので費用を抑えることができるのです。婚礼衣装をレンタルせず平服の場合は数千円で済みます。セルフフォトウエディングは韓国で普及しています。弊社はセルフフォトウエディングのサービスを26年1月から始めます。婚礼衣装姿ではなく、平服のセルフフォトウエディングも展開していきます。カップルが好きな服を着て、結婚指輪や婚姻届を見せて自撮りするイメージです。
―御社の今後の戦略は。
結婚を考えているカップルに「やりたいと思う“結婚イベント”を素直に提供していくこと」に尽きます。カップルの多様なニーズに幅広く対応し、カップルや出席者にも喜ばれる結婚イベントをプロデュースしていきたい。「目立ちたくない」という嗜好も含めさまざまなスタイル、経済的条件などに応えられる多様なサービスを提供できます。
―婚姻件数の減少に対するウエディング業界の危機感は強いですか。
ウエディング業はコロナ後も停滞していましたが、苦しい時期を経てようやく底を打った感があります。ここからユーザーニーズを取り込んで新しいサービスを展開し、業界として再成長を遂げていく時期に入ったと捉えています。地方のホテルが結婚式ビジネスから撤退するなど結婚式会場が地方では減っているので、地方での事業展開にも力を入れていきたい。地方都市の50~60人集まれるレストランなどで結婚式を「プロデュース」するサービスの充実に取り組んでいきます。
<略歴>貝瀬雄一(かいせ・ゆういち)1997年リクルート人材センター(現インディードリクルートパートナーズ)入社。2014年リクルートゼクシィなび代表取締役社長。15年にリクルートマーケティングパートナーズ(現リクルート)執行役員を兼任、ウエディング事業全般の統括と婚活事業の新規立上げを担当する。2023年10月、くふうウェディング代表取締役社長兼執行役員。
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