昨年は、各地でクマが人里に姿を見せたり、人間を襲ったりする事例が相次ぎ、社会問題となった。2025年のクマの駆除数は4~10月末時点で1万頭近くとなり、過去最高を更新したという。

駆除数が増加するなか、処分されたクマはどうなるのか? 実はその多くは廃棄されているのが現実だ。これは有効活用できないものだろうか。 生態系保全と地域住民の安全、そして貴重な命の循環という3つの課題に対し、20年間ジビエと向き合ってきた料理人の視点から解決策を見出したプロジェクトをご紹介しよう。

 ひょうたん姉妹リゾート(岐阜市)が運営する居酒屋割烹「お遊食おせん」は、クラウドファンディングサイトCAMPFIREで、「熊鍋の缶詰」プロジェクト を2026年2月まで実施している。このプロジェクトは、駆除後に廃棄されることの多いツキノワグマを熊鍋の食材として活用し、支援金の一部を猟師や山林保全活動に還元する、いわば「食べる自然保全モデル」だ。

 実はツキノワグマは、古くから"山の恵みの最高峰"として扱われてきた「幻の食材」。豊かな山の木の実や果物、蜂の子などを食べて育った熊の肉は、芳醇(ほうじゅん)で甘い香りを持っている。赤身はうまみが濃く、脂は雪のように白く口に入れた瞬間にとろけ、 猪や鹿とも違う、力強さと繊細さを併せ持つ特別な味わいだという。

 しかしながら、ツキノワグマは一般的な家畜や他のジビエとも異なり、安全な食用加工には専門的な処理と厳しい衛生基準が必要。また、他のジビエよりも、スピードやミリ単位での高度な技術が必須。猟師の熟練の技が不可欠な、とても貴重で高級な食材なのだ。そのため、市場への流通は少なく、一部の料理店でしか味わえない幻の食材となっている。

 「お遊食おせん」は2005年創業以来、岐阜でジビエ料理を提供し続け、ぼたん鍋は「岐阜のご当地鍋1位」に選出。2022年にはジビエ専用加工場、急速冷凍機、自社缶詰工場を整備し、通販事業「いのちのご馳走.com」を通じて全国展開している。幻の高級食材を無駄にせず缶詰化でき、全国どこででも味わうことを可能にする体制が整っているというわけだ。

 やむを得ず捕獲したクマを処分すると「かわいそう」という声も挙がるが、「おいしく食べて、森を守る」という、持続可能な環境保全に貢献できるのではと期待されている。

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