衆院選が27日に公示された。投開票日まで13日しかなく候補者を吟味する時間は限られるが、各政党の公約に目を通す限り農業政策は焦点から外れている。
公示の前に政策の軸が大きく動いた。自民党は、野党の大半が求めていた消費税の減税・廃止に強く反対してきたが、今や「悲願」だそうだ。立憲民主党は、安全保障の憲法解釈の見直しや原発の再稼働を容認してきた公明党と合体して「中道」だと訴えている。日本維新の会は、与党入りした段階で党是とも言える規制改革をトーンダウンし、国民民主党は理念ではなく「実現」を争点にする現実路線を強めている。
主要政党の政策は、投票する前に既に鞘(さや)寄せして「中和化」が進んだ。このため、政策論争が深まらない。特に農業政策は、「農は国の基(もとい)」「食料安全保障は重要」という抽象論の段階では各党の主張に大きな隔たりがない。これまでの国政選挙でも各党は具体策に踏み込むのを控えてきた。消費者にアピールしようとすると、生産者団体を刺激する恐れがあり選挙の戦術上得策ではないからだ。
しかし、農業の現状は課題山積、土壇場だ。
自民は「水田活用の直接支払い交付金(水活)」の見直しを公約に掲げ、その内容次第では減反廃止に直結する。しかし具体策は先送りしたままで議論のしようがない。中道改革連合は「食農直接支払い」、国民民主は「食料安保支払い」をそれぞれ掲げ、耕作面積に応じた補助金の交付を提案している。旧民主党が導入した農業者戸別所得補償を改良した所得安定対策だ。減反廃止や米価下落を前提としているのか、肝心な点があいまいで評価が難しい。
セーフティーネットの整備は、市場機能を重視した収入保険制度を拡充するのか、国の関与を強化するかによって財政負担が大きく異なってくる。日本維新は「米の増産」を公約しているが、昨年夏の参院選で「1.5倍」としていた数値目標を取り下げた。農業協同組合(JA)が強く反対してきた「金融事業の切り離し」も撤回し、農村への配慮を強めた。
米政策をめぐる重要な争点はあるのに、各党とも真剣勝負に及び腰だ。
(共同通信アグリラボ編集長 石井勇人)
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