未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」の新連載「弁当の日の卒業生」。「弁当の日」、その日は買い出しから片付けまで全部一人で。

2001年に香川県の小学校で始まった食育活動は、約25年を経て全国に広がっています。その提唱者である竹下和男氏が「弁当の日」の卒業生の今をつづります。

▼食費・月1万円に挑戦

 S君の話です。初めての「弁当の日」は3色弁当を作りました。滝宮小学校の5年生の時で、もう25年前のことになります。弁当のメニューを考えたとき、すぐに頭に浮かんだのが3色丼です。小さい頃から台所には立っていました。強制というのでなく、「手伝ってくれる」「これ、切ってくれる」と言われながら、野菜を切る・魚を焼く・鶏肉を揚げるなど覚えていきました。我が家では、お母さんが台所に立てないときは普通にお父さんも料理をしていましたから、無理にやらされた感はないのです。それに「手伝ってくれてありがとう」と言われるのはいつもうれしかったです。3色丼づくりもすでに何度か手伝ってきていますから、具材を切って炒めてとろみをつければできると思いました。「弁当の日」の初日は、お父さんもお母さんも少しは心配で台所に来ていましたが、一人で3色弁当をつくり切りました。

2年間で10回の「弁当の日」を経験して腕もあがりました。「弁当の日」を想定して、ときどき台所に立ったからです。

 中学・高校時代はバスケに夢中で、台所にはほとんど立っていません。でも大阪の大学に進学してからは、基本的に自炊生活でした。材料さえあれば自分の食べたいものが作れるので、友だちと外食するとき以外はスーパーの中を歩くのが好きだったです。食べたい肉や魚や野菜を見ると出来上がりの料理が頭に浮かび、出来上がるまでの手順も分かりました。

 親からの仕送りが少なかったのではないけれど、ある時、食費・月一万円で行けるかな?と思いつきました。美味しくて安い食事を目指して自炊生活をしている僕を見て、外食時の仲間が食材を買ってきて僕のアパートに集まることが多くなりました。料理ができない、食費が足りない彼らには僕の台所が便利な料理教室になったのです。みんなが、一人分の食事を調理するより、数人分を調理する方が安く上がることを痛感しました。準備も片付けも分業できるから断然早いし、一人で食べるより楽しいし、美味しいのです。キャベツ・白菜・ダイコンだって、数人が数回分楽しめます。

みそ・醤油・みりん・サラダ油など調味料がそろうと料理がしやすくなります。ええ、もちろん月一万円で足りました。

 今ですか、独身です。毎朝お母さんが作ってくれた弁当を提げて自宅から出勤しています。

 竹下和男(たけした・かずお)/1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後2010年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。

 #はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパン、ミキハウスとともにさまざまな活動を行っています。

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