大きな事件や事故が起きると、発生時の報道で事の重大さに衝撃を受け、容疑者の確定や事故原因の調査などの続報を読む。だが日々さまざまな出来事が起こる中で、一つの事件または事故を裁判の終結まで追うのは難しい。

もっとも、事故調査報告書などのデータは公開されており、後からでもその経緯は詳しくたどることができる。法務省の裁判データや国土交通省の事故調査報告書など政府オープンデータを活用し、事故発生から有罪判決に至るまでの経緯をストーリー漫画として再構成する「運輸安全Comics」プロジェクト(東海電子・静岡県富士市)がスタート。その第1弾として2016年に広島市の山陽自動車道・八本松トンネルで発生した多重衝突・火災事故の事例が公開された。

 国土交通省の事業用自動車事故調査委員会は、社会的影響の大きい事業用自動車の重大事故について、事故原因の究明と再発防止策の提言を目的とした事故調査報告書を公表している。もっともこの調査には、その後刑事裁判で明らかになる動機や状況証拠などの事実認定、真の原因、責任の所在は含まれていない。一方、事故に起因する刑事裁判の判決文は、裁判所の判例データベースを通じて広く公開されている。

 いずれも運輸事業者の安全管理に資する極めて重要な公的データでありながら、安全教育の現場で十分に活用されているとは言いがたい。そこで、国土交通省が公表する事業用自動車事故調査報告書と、裁判所が公開する当該事故の刑事裁判判決文という二つの公的データを横断的に読み解き、事故の発生から裁判に至るまでの全容を一本のストーリー漫画として再構成する試みが「運輸安全Comics」プロジェクト。報告書が明らかにする事故原因・構造的要因と、判決文が示す法的責任の所在を統合的に描くことで、単なる事故の再現にとどまらない、運転者・運行管理者双方にとっての実践的な安全教育コンテンツを目指している。

 初回の八本松トンネル多重衝突・火災事故は、渋滞車列に中型トラックがブレーキをかけることなく追突し、車両12台が絡む多重事故に発展、5台が炎上して2名が死亡、67名以上が負傷した重大事故。運転者の36時間にわたる無睡眠連続勤務による居眠り運転が直接原因であったこと、さらに運行管理者による点呼の形骸化、運行指示書の未作成、過酷な勤務実態の未把握といった管理体制の構造的欠陥が背景にあったことが明らかになっている。刑事裁判では、運転者に懲役4年の実刑判決が、運行管理者にも懲役1年6カ月(執行猶予3年)の有罪判決がそれぞれ下された。

  「運輸安全Comics」はおおむね3カ月ごとに新たな事例を追加し、シリーズとして拡充していく予定としている。

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