アメリカとイスラエルのイラン攻撃とその反撃で、不安定で混沌とした世界はますます暴力的な様相を呈している。常に平和のために闘っている沖縄の論壇を牽引してきた文化と思想の総合誌『新沖縄文学』97号(沖縄タイムス・那覇市、税込み1980円)が刊行された。

 世界各地で国籍や属性による人間の疎外が加速し、SNSが事実をゆがめて拡散させる現代。異論を許さない閉塞感の先に忍び寄る「全体主義」に対し、沖縄という地点からいかにして個の尊厳を守り、共生の道を開けるか、気鋭の執筆陣とともに模索している。

 特集「分断と共生の岐路」は、社会学者の古波蔵契氏と哲学者永井玲衣氏の対談。コロナ禍を経て他人への信頼が揺らぐ現代社会で、信頼を取り戻すために、哲学対話や労働者協同組合の形で実践する2人の学者が、対話の基盤をいかに構築するかを語り合っている。また、崎濱紗奈氏や目取真俊氏など、注目を集める書き手たちが、それぞれの視点から全体主義に立ち向かう言葉を寄稿している。

 さらに、又吉栄喜氏の「洗浄」、真藤順丈氏の「くがにの巨人」など書き下ろし小説や、「沖縄戦継承の断層をいかに乗り越えるか」(謝花直美氏)、「激変する政治環境と民意の行方」(長元朝浩氏)などの時評も読める。

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