サイエンスアーツ(東京)が提供するライブコミュニケーションプラットフォーム「Buddycom(バディコム)」。スマートフォンやタブレットにアプリをインストールしてトランシーバーや無線機のように使用できるサービスだ。

2023年10月から総務省の公共安全モバイルシステムの実現に向けた実証試験での実証用アプリケーションに採択され、24年6月から11月まで消防庁・各消防本部で検討・実証が行われてきた。通常・災害時における情報共有・業務連絡手段として、各企業がさまざまに活用を始めている。東京地下鉄(東京、以下、東京メトロ)と京王電鉄(東京)でもこのほど、利用者サービスや異常時対応の向上に向けて、新しい運用がスタートした。

■離れた場所からも多様な利用者のニーズに応える

 東京メトロは、2028年3月末までに、全171駅の改札口に、KDDIが提供するタブレット端末にBuddycomのコール機能を組み込んだ遠隔案内端末を順次導入することを発表した。駅社員が離れた場所からでも的確に利用者対応ができるようになり、多様化するニーズに応じた質の高いサービスを提供することを目指す。第1弾として3月16日から、青山一丁目・淡路町・中野坂上・東銀座の4駅に設置し、遠隔での案内をスタートしている。

 利用者は改札口付近に設置された端末の画面に表示されている呼び出しボタンを押すと、駅事務室の社員と通話が開始できる。駅構内の案内に加え、ICカードやモバイル端末を用いた精算・カード処理が必要な場合には、端末下段のICカードリーダーにカード等を置くと、駅社員が駅事務室内から遠隔で機器を操作し、その場で精算やカード処理ができる。音声案内やチャット機能を搭載し、視覚・聴覚に障がいがある利用者にも配慮。9言語の翻訳に対応する。

■社内マニュアルを学習させた AI と連携した事例

 京王電鉄では、事件・事故発生時の初期対応や情報連携を迅速化するため、2022年からBuddycomを全駅・全車掌に導入している。3月10日からは、鉄道運行業務における異常時対応力の強化と情報探索の生産性向上を目的として、生成AIツール「KEIO AI-Hub」とBuddycomをAPI連携した。

 異常時には、正確な情報を素早く入手し、的確な判断を行うことが求められる。今回の連携により、乗務員や指令員は Buddycom上で音声やテキストで質問するだけで、「KEIO AI-Hub」が社内規程類を検索・要約し、その回答をテキストと音声で即時に受け取ることができるようになった。マニュアル検索に要する時間を大幅に短縮し、異常時の迅速な判断と対応を支えている。

 BuddycomのAPI連携は、カメラや記録システムとの連携にも対応しており、AIカメラで検知したVIPや不審者等の情報を音声で即時通知したり、記録システムにBuddycomから音声で入力したりすることもできる。

■人とAI が共に判断する現場環境へ

 サイエンスアーツは今後、Buddycomを、人・AI・センサー・カメラ・設備データをリアルタイムで接続する“フィジカルAI連携基盤”へと進化させていくという。現場で働く人の音声を起点に、AIが状況を解析・必要な情報を即座に提示し、設備やシステムと自律的に連携する、「人とAIが共に判断する現場環境」の実現を目指していくとしている。

 Buddycomを導入している日本航空(JAL)グループは、グランドスタッフ同士や整備士同士の連絡をはじめ、海外拠点の整備士への日本からの遠隔支援体制にも活用。グループ通話だけではなく、定型文・音声履歴・テキスト化・複数人同時翻訳・画像・映像配信の機能により、支援体制が大幅に向上したという。そのほか、スターフライヤー、JR東日本、JR東海、東京無線、SBS ゼンツウ、北九州市、大阪市高速電気軌道などが情報共有ツールとして活用している。

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