未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。
約2600万人が国内外から訪れた2025年の大阪・関西万博。ボランティア活動やイベント出演などで期間中に会場を180回訪れ、多くの人に万博の素晴らしさを伝えながら成功を支えた博覧会マニア・二神︀敦(ふたかみ・あつし)さんに、子ども時代のこと、万博を体験した次世代へのメッセージを聞いた。
Q1.どんな子どもだったのでしょう。万博との出合いは。
ピアノを6歳から習い始め、ピアニストになりたかったんです。でも、急性気管支炎で入院してレッスンを休んだら、周りの人がすごくうまくなっていて無理だな・・・と。プロになるのは諦めましたが、今も家でショパンの幻想即興曲などを弾きます。
そんな音楽好きが興味を持ったのが、1981年に地元で開かれた神戸ポートアイランド博覧会「ポートピア❜81」。小2だった開催前年に高学年の先輩が、ゴダイゴの「ポートピア」を校内音楽会で演奏したのを「すごいな」と思いながら聞きました。社会の授業で博覧会を学び、学校の外ではどんどんパビリオンが立っていく。ああ、面白いことがやってくる、と楽しみにしていました。
Q2.ポートピア❜81で受けた衝撃を教えてください。
まず、新交通システム「ポートライナー」。当時は人が運転しないのに動くというのがすごかった。そして、大阪・関西万博があった夢洲もですが、埋立地。何もないところにできた島に行き「ああ、ここは浮いている」というプカプカ感、ワクワク感があった。ダイエー館にあった、特殊なメガネなしで立体映像がみられる最新鋭の映像システム「オムニマックス」が大人気で「21世紀ってこういう感じか~」と未来を感じました。学校では「パンダ見たか」「何個スタンプ集めた」とか皆で大騒ぎ。大阪・関西万博に来たちびっ子と同じことをしながら、85年のつくば万博のPR館に行った友人からもらった記念品の下敷き(万博の歴史が書かれていた)を眺め、次の博覧会にもぜひ行きたいと強く思ったんです。
■万博の優位性・独自性は“人”にあり
Q3.以後、国内外で16の万博、170を超える博覧会を訪れ、技術の進化や人との出会いを体験しました。
昔は、紙に書かれた筆跡がそのまま受話器の向こうに届くなんて!とファクスにも驚きましたが、大阪・関西万博のNTT館では「IWON(アイオン、大容量データを少ない消費電力で高速伝送できる光通信技術)」がある。すごい進化です。就職してからお金をためて海外で最初に行ったリスボン万博(1998年)では、ICチップ内蔵のスウォッチをかざして入場ゲートを通る仕組みが万博史上初めて採用されており、「こんな未来が当たり前になる」と言われました。
僕は英語が堪能ではないですが、(万博という)興味が同じだと国籍や国境などの垣根なく、通じ合える。人工知能(AI)が出てきて、技術はある程度“行きついてきている”と感じる一方、人同士のコミュニケーションが万博の独自性・優位性になる揺り戻しが起きている気がします。国同士との関係にわだかまりがあっても自分たちの仲が悪いということはない。中東で衝突が起きていますが、大阪・関西万博を訪れた多くの人が、サウジアラビアやバーレーンのパビリオンで出会った人の命を思い、安否を気遣っているのではないでしょうか。
Q4.大阪・関西万博が二神︀さんに残したものは。
他の博覧会で以前から何度もボランティアをしていたので、大阪・関西万博の約1年前、博覧会協会などから依頼され「支える側の万博も楽しい」という話をする機会があり、愛知万博(2005年)の経験などを説明会で紹介しました。当時は万博反対の嵐が世間で吹き荒れていましたが、ボランティアを募集すると実際には抽選しなければならないほどの応募者が集まった。万博が始まると、偶然出会った人から「説明会で面白さを教えてもらい、いい経験ができた」「前向きになれた」との言葉が。一人でも多くの人に「やってよかった」という気持ちを生み出してもらえたなら本当にうれしいです。
■好きなモノ見つけたら、まい進して
Q5.大阪・関西万博に来た子供たちに伝えたいことは。
最初は「万博」が何なのか知らなかった子どもたちが、いろいろな国を好きになって「そこに行ってみたい」と言うのを見ると、すごく(意識が)進んでいると思います。
万博はすごく興味の幅が広がるところなので、興味を持つことがあれば、まい進するのがいい。ファッショナブルな衣装を見た子はデザイナーになりたい、たまたまスポーツ選手と握手した子はアスリートになりたい、建築家、医者になりたい、という子もいるかも。たくさんのことが好きになると「いったい何やりたいの?」って言われそうだけど、万博は全ての出発点。どんな方向にも触れうる広範囲の分野が凝縮していると思います。僕自身の原点も振り返れば、博覧会。何かを見つけたら誰が何と言おうと自分が好きだからやる、という気持ちを大事に持ち続けてほしいと思います。
Q6.2027年に横浜で開かれる国際園芸博覧会(花博)への期待、それ以降の夢は。
横浜の花博では、サントリーやNTTなど、大阪・関西万博でパビリオンを出したいくつかの企業が出展を表明しているし、2025年の思いが27年につながるはず。たった2年後ですが、その進化を見ることができます。横浜花博の有料入場者数は想定1000万人で、大阪・関西万博よりも小さい。そこで、万博の楽しさを知った関西の皆さんが押し寄せて、関西人ばかりで予約がいっぱいになったりしないか、少し心配もしています(笑)。
番外Q. 「はばたけラボ」のテーマは“未来を、みんなで育てる”です。最後に、二神︀さんが考える、未来を育てるために必要なものは何でしょう。
う~ん。後悔すること、でしょうか。万博なら、もっと行けばよかった、パビリオンスタッフにこれを話せばよかった、とかあるかもしれませんが、満たされなかった部分は、次への原動力になるので実はパワーの源です。僕自身も完全な球体ではなくへこんだ部分があちこちにある。完全じゃないから、悔しさを感じて次また頑張る、そっちがダメならこっち、と違う目標を見つける。多角的に道を探し、進むことで人は成長していくと思います。
プロフィール:二神︀敦(ふたかみ・あつし)/1972年生まれ。神戸市出身。青山学院大学卒業。
#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパン、ミキハウスとともにさまざまな活動を行っています。
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