平和でのどかな島に、米軍射爆場の建設計画が持ち上がる。国の決定に島民は分裂。

現実の問題のようだが、これは半世紀前の小説。有吉文学の真骨頂『海暗』(うみくら)(有吉佐和子著、河出書房新社、税込み1210円)が4月7日に復刊、発売される。

 伊豆七島の御蔵島が米軍射爆場に内定し、この思いもよらない大事件に翻弄(ほんろう)される島民の苦悩と哀歓。島の伝統と若者の離島問題に揺れる島民たちの生きる姿を、島への深い愛情を持つ長老・オオヨン婆を中心に描く傑作長編だ。

 『青い壺(つぼ)』(文春文庫)、『非色』、『女二人のニューギニア』(河出文庫)など、近年の復刊が続々と大ヒットしている有吉佐和子さん。有吉文学が時代を超えて読み継がれているのは、どの作品も時代や社会のひずみを鋭く見据え、普遍的なテーマを描いているからだ。

 『海暗』で描かれる島民たちのたくましく生き抜く姿も魅力的で、共同体の絆と分断、伝統と変化のあいだで揺れる人々の姿は、現代の私たちへ切実なリアリティーをもって迫ってくる。

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