【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。
今回ピックアップするのは、オダギリジョーさんが脚本・演出・編集を務めたオリジナルのテレビドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』(NHK)の劇場版映画『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』(2025年9月26日公開)。
ですが、私はドラマ未見のまま、試写で鑑賞。それでも「観てよかった!」と心から思うほど楽しかったんです! それでは、物語から。
【物語】
狭間県警鑑識課警察犬係のハンドラー・青葉一平(池松壮亮さん)の相棒の警察犬はオリバー(オダギリジョーさん)。
周囲の人からは普通の犬に見えるのですが、どういうわけか一平だけには、たばこと酒と女の人が大好きでやる気がなく、慢性鼻炎の犬の着ぐるみを着たおじさんに見えているのです。
ある日、隣の如月県から狭間県警鑑識課にカリスマハンドラーの羽衣弥生(深津絵里さん)がやってきます。スーパーボランティアのコニシさん(佐藤浩市さん)が行方不明になったため、捜査協力を求めてきたのです。
海に消えていったという目撃情報をもとに、一平たちは捜査を開始するのですが……。
【物語は摩訶不思議な世界】
本作の物語の中心にいるのは、スーパーボランティアのコニシさん。多くの人を助けてきたコニシさんのボランティア精神を大切に扱いつつ、そのコニシさんがいなくなったことで、大捜査が展開されるのです。
「コニシさんはどこに消えたのか」
その謎の鍵を握るのは、突然現れる謎のドア。そして捜査を展開しても、脱線することも多く、果たして本当に解決できるんか? と。
【クセのあるキャラしかいない】
まず目を引くのはオールスターキャスト。脇役にいたるまで知っている俳優たちが出演をしており、なおかつ、みんな変なキャラクターなのがいい。
しいてあげれば、池松壮亮さんが演じる主役の一平が、いちばんノーマルだとは思うのですが、警察犬のオリバーが中年のおじさんに見えてしまうのですから、まあ普通じゃないわけです。
酒好きのオリバーは二日酔いで走るとすぐ息が上っちゃうし、いつもだらしないポーズで面倒臭そうに対応するし、口も悪いし、本当にしょーもないところが最高!
【豪華キャストの怪演が楽しすぎる】
ドラマでもおなじみのキャストも登場。麻生久美子さんの前髪カットシーン、黒木華さんのはんなり京都弁などなど、どの俳優さんも出演シーンでガツンと爪痕残していくところはさすがです。
加えて、深津絵里さんは2017年の『サバイバルファミリー』以来、久しぶりに映画に出演。すぐぶっ倒れちゃう繊細なキャラクターを楽しそうに演じていて、もっと映画に出てほしい!と思わずにいられませんでした。
個人的には、佐藤浩市さん、嶋田久作さん、鹿賀丈志さんがよかったです。キャリアも実力もあるベテランの俳優たちが、嬉々として振り切ったコメディ演技を見せてくれて、かわいかったなあ……。ぜひ注目していただきたい!
【オダギリジョーのコメディ力】
オダギリジョー監督のコメディは現実世界に唐突に不思議な世界が現れたり、「いまここでそれ言う?」というようなやりとりがあったり、どこかシュールなところがあるんですよね。
とはいえ、多くのキャラクターが交錯する物語なのにこんがらがることなく、交通整理がきちんとできていたので、演出力は手堅い。
ドラマのファンの方はもちろん、未見の方も楽しめる映画『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』。ぜひ劇場でお楽しみください。
執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:©「THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE」 製作委員会
『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』
2025年9月26日(金)より全国ロードショー
脚本・監督・編集・出演:オダギリジョー
池松壮亮 麻生久美子 本田翼 岡山天音
黒木 華 鈴木慶一 嶋田久作 宇野祥平 香椎由宇
永瀬正敏
佐藤浩市
吉岡里帆 鹿賀丈史 森川 葵
髙嶋政宏 菊地姫奈 平井まさあき(男性ブランコ)
深津絵里
製作:「THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE」 製作委員会
制作プロダクション:MMJ
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ
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