【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、アメリカでは大絶賛でアカデミー賞大本命と言われているレオナルド・ディカプリオ主演の最新作『ワン・バトル・アフター・アナザー』(2025年10月3日公開)。


世界3大映画祭(カンヌ、ベネチア、ベルリン)の監督賞を唯一受賞したことのある巨匠 ポール・トーマス・アンダーソン監督作です。劇場で鑑賞してきましたが、あっという間の162分でおもしろかった~!

では、物語から。

【物語】
元革命家だったけれど、今は怠惰な生活を送る情けない中年のボブ(レオナルド・ディカプリオさん)。しかし、娘のウィラ(チェイス・インフィニティさん)のことは大切にしていました。

しかし、ボブに異常な執着心を持つ軍人のロックジョー(ショーン・ペンさん)にウィラが誘拐されてしまうのです。ボブはウィラを救出するために、革命家時代の仲間に助けを求めて連絡をとりますが、なかなか話は進みません。

そんな中、ウィラの空手教室のセンセイ(ベニチオ・デル・トロさん)がボブに手を差し伸べてくれるのですが……。

【革命家ペルフィディアの凶暴性にドキドキ】
冒頭、登場するのは強烈なキャラクターで忘れられない、革命家のペルフィディア(テヤナ・テイラーさん)。動きが機敏で無駄がないので、革命家チームの中でも優秀な人材だったと思います。が、気に入った男との距離を一瞬で詰めて関係を持ってしまったり、いつキレるかわからない凶暴性があったり……。まさに敵に回すと怖いタイプ。

そんな彼女が所属する革命家グループの仲間がレオが演じるボブ。
2人は愛し合い、娘が生まれ、ボブはずっと抱っこして可愛がっていますが、ペルフィディアはそんなボブを見て「娘ばっかり可愛がって私のことを見ていない」とブチキレます。

やがてペルフィディアは行方不明に。ボブがいるにも関わらず、“ある人物” とも関係を持ってしまったため、その男から命を狙われ逃げる羽目になるのです。

【かっこよくないレオ様が愛おしい!】
本作のポイントは、レオが全然かっこよくないということ。ペルフィディアとの関係もグイグイ来られたから始まっているし、革命家時代からどこかオドオドして、ずっと目が泳いでるし。

そして、ペルフィディアが消えてしまい、ボブはシングルファーザーとして子育てに奮闘。しかし、娘が10代になるころには酒好きドラッグ好きのだらしないダメ親父になってポンコツ度が増していきます。

娘が誘拐されたあとも、かつての革命家仲間に助けてもらおうと電話で連絡を取ると「素性を確認したいからパスワードを」と言われるんです。でも、頭が回らずに大事なパスワードが全然思い出せないんですよ。何度言われても「そんな昔のこと忘れた!」と言って受話器を片手に怒り狂っている姿がもう情けないやらおかしいやら……。

一生懸命なのですが、大切なところでしくじってしまう。でも、そんなレオが愛おしくなっちゃっいました。


【個性的なキャラクターが全員魅力的】
本作が162分と長尺なのに最後まで飽きずに楽しめるのは、登場人物全員のキャラクターが濃厚でずーっとおもしろいから。

ボブやペルフィディアだけでなく、娘ウィラを誘拐するロックジョーもすごかったです。ピチピチTシャツで胸筋アピールをするめちゃくちゃしつこいモンスターって……気持ち悪かったなぁ。

1番かっこよかったのは、ボブを助ける娘の空手の指導者 センセイを演じるベニチオ・デル・トロさん。何が起こるか予測し、仲間を集めて指示を出し、逃げる準備を迅速に整えていく姿は、頼りになる男でした!

最初から最後までものすごいスピードで展開していき、後半はカーチェイスでハラハラさせてくれる最高のエンターテインメント映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』。本当に隙のない最高傑作だと思います。ぜひ映画館で楽しんでほしいです!

執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:© 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

『ワン・バトル・アフター・アナザー』
2025年10月3日(金)より全国ロードショー
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:レオナルド・ディカプリオ、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロ、レジーナ・ホール、テヤナ・テイラー、チェイス・インフィニティ、ウッド・ハリス、アラナ・ハイム
配給:ワーナー・ブラザース映画

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