【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、ティモシー・シャラメ主演映画『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』(2026年3月13日公開)。
第98回アカデミー賞では作品賞、主演男優賞など9部門ノミネートされた作品です。試写で鑑賞したのですが、卓球選手のスポ根映画かと思ったら、クズ男ががむしゃらに世界トップを目指して生きる物語でした。おもしろかったのでご紹介したいと思います。

では、物語から。

【物語】
1952年、ニューヨーク。靴屋の販売員マーティ(ティモシー・シャラメさん)は口がうまくハッタリでバンバン靴を売りさばき、既婚者であるレイチェル(オデッサ・アザイオンさん)と不倫していました。

そんな彼だけど卓球の才能は本物。彼は「卓球で世界一になる!」と野望を抱き、イギリスで行われる世界選手権に出場しようとします。しかし、イギリスへ行くお金がない。

さあ、どうする。なんと彼は勤めている靴屋の金庫を狙うのです。

【クズ男のジェットコースター人生】
いや~主人公は想像以上のクズ男でしたね。


マシンガントークで靴を売り、その営業能力をかわれて店長昇進のチャンスをもらうけれど「俺は卓球で世界一になるんだ」とその話を蹴ってしまうんです。

そして卓球の世界選手権の開催地へ行くお金がないから、とお世話になった靴屋の金庫からお金を盗むんですよ。

「卓球の才能がある自分は世界選手権に出てチャンピオンになる人物。だから仕方ないじゃん」とか思っていそうでタチが悪い。

もう冒頭からクズ男炸裂です!

【欲のままに生きる男が唯一信じているのは】
マーティは自分がいちばん大切なので、自分の身が危険になると不倫中のレイチェルに助けを求めて振り回し、挙げ句の果てに彼女はマーティの子を妊娠してしまいます。

それでもマーティの頭の中は、イギリスの世界選手権でマーティをくだした日本の卓球選手・エンドウ(川口功人さん)に勝利して世界一になることでいっぱい。そのためには悪知恵を駆使して人をだましたり裏切ったりする行為を繰り返すことなんて平気なんです。

しかし、そんな彼でも卓球には誠実。対戦相手を傷つけることなく、ちゃんと闘って、ちゃんと勝ちたいと思っているのではないかと。世界一の男になりたいという単純な願望を叶えてくれるのが卓球。だから卓球だけは裏切れないのかな……。

【クズ男の人生を秀逸なエンタメにしたティモシー】
絶対に関わりたくない男 マーティ・シュプリームですが、彼の人生が腹立たしくも興味深くハラハラしながら見てしまうのは、ティモシー主演であることが大きいかと。


やはりクズ男を演じてもオーラがあるし、せっかちでせわしなく動き回る姿はユニーク。

また、ティモシーは7年間もかけて卓球を習得しただけあって、試合のシーンではティモシーの卓球技に驚きっぱなし。エンドウとの試合は本当にエキサイティングで素晴らしかったです。細部にわたるまで役の性質をきちんと吸収して、マーティとして生きたティモシーは最高のクズ男でしたよ!

日本でロケされたシーンがあったり、川口功人選手(トヨタ自動車所属)がライバル役で出演するなど、日本に関わりがあることもちょっとうれしい本作。卓球チャンピオンに人生を賭けた男の生き様。ダメすぎてまったく参考にはなりませんが、反面教師として、またなにより映画として見るには最高! ぜひ劇場で楽しんでほしいです。

執筆:斎藤香(c)Pouch
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『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』
2026年3月13日より全国ロードショー
監督・脚本:ジョシュ・サフディ
出演:ティモシー・シャラメ、グウィネス・パルトロウ、オデッサ・アザイオン、ケビン・オレアリ―、タイラー・オコンマ

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