映画化もされたNHK人気ドラマシリーズ『岸辺露伴は動かない』。その主演を務める高橋一生さん×渡辺一貴監督がタッグを組んだ新作映画『脛擦り(すねこすり)の森』が公開されます。


すねこすり、って……なんだか妖怪みたいな響き。そもそも『岸辺露伴は動かない』のおふたりによる映画なのですから、あの作品のように、ちょっぴり奇妙でゾクゾクするお話だったりして。

いてもたってもいられず、ひと足お先に試写で鑑賞させていただきました。

【あらすじ】
いつのまにやら深い森へと迷い込んでしまった男。足元に絡みつく草が、痛む足をいっそう重くするので、なかなか前に進めない───。

男がしばらく途方に暮れていると、どこからか女の美しい歌声が聴こえてきたではありませんか。声に導かれるように前に進んでいくと、やがて古めかしい神社へとたどり着きました。

神社には、白髪の老人と、老人の妻・さゆりが暮らしているようです。ふたりから手厚く看病を受けた男は、神社にしばらく滞在することに。時間が止まってしまったかのようなひとときを過ごすうちに、いつしか「帰らなければ」という気持ちも薄れていきます。

【静けさと余白が心地よい】
この映画は、とてもとても静かな作品です。

あまりに静かで自分自身までもが森のなかへと迷い込んでしまったかのよう。
木々が揺れ草がこすれる音、風のささやき、森の呼吸までもが聞こえてきそうなほど、しんとしています。

物語のなかでは、森で迷った男が神社で暮らす様子が描かれます。しかし男も、神社に住む老人もその妻も、ほとんどなにも語らないのです。

なぜこんな場所に暮らしているのか。そもそもこの老人の妻は、孫娘くらい年が離れていそうだけれど、本当に妻なのか。なにもかもがわからない。けれど、わからないままでいいような気もする。

そんなふうに、思うようになっていくのです。静けさと余白が想像力を掻き立てて、同時に煙に巻いていく。まるでキツネにつままれたかのような感覚。それでも、みるみる癒やされていく不思議。

【高橋一生の存在感】
私はこのお話のあらすじを読んだとき「高橋一生さんが『森に迷い込んだ男』を演じるのだろうと思っていたけれど、なんと高橋さんが演じているのは「老人」。
まさかの役どころでしたが、この老人に隠されたひみつを知れば、この配役にも納得せざるを得ない。

そして、高橋さん以上にすさまじい存在感を放っていたのが、老人の妻・さゆりを演じた蒼戸虹子さんです。

なんと彼女はまだ17歳。さゆりのどこか現実離れした佇まいにどうしようもなく惹かれてしまいますし、歌声の美しいこと……!! これは誰であろうとも、抗えず引き寄せられてしまうにちがいない。

【すねこすりとはなんなのか】
岡山県に伝わる妖怪伝承「脛擦り(すねこすり)」から着想を得ているという本作。

雨の夜に明りのない暗い道を歩いていると、ふとぬかるみに足をとられて転んでしまう。「見えないなにかにいたずらされた」と思い込む、この現象から生まれたのが「脛擦り」のようです。

本作では、最後の最後で「脛擦りの正体」が明らかにされています。ただの気のせいか、それとも妖怪なのか。禍(わざわい)なのか、それとも救いか───。

【岸辺露伴な世界が広がっています】
本作は唯一無二でありながら、ところどころに『岸辺露伴は動かない』の世界観をしっかりと感じられます。質感がもう、岸辺露伴というか。


奇妙でぞわぞわするけれど、不思議と腑に落ちるストーリー。どこか退廃的で官能的な映像美。61分間におよぶ夢の世界へといざなわれましょう。映画『脛擦りの森』は2026年4月10日より全国公開されます。

■『脛擦りの森』
2026年4月10日(金)全国公開
配給:シンカ

参考リンク:映画『脛擦りの森』公式サイト、YouTube、プレスリリース
執筆:田端あんじ
Photo:© 『脛擦りの森』プロジェクト

この記事の動画を見る

●関連記事
編集部おすすめ