荒川技研工業株式会社は、「ないものを創る」という理念のもと1973年に創業し、今年で50年を迎えます。1975年にステンレスワイヤーに固定、移動がワンタッチで可能な金具「ワイヤーグリップ」を開発。
自社ブランド名「アラカワグリップ」として世に送り出しました。誰でも安全に物を吊るすことができ、店舗や照明器具、美術館等で幅広く使われています。2022年にはこの当社ワイヤー吊りシステムが「グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」を受賞しました。

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創業者が「ないものを創る」と言って会社を立ち上げた

創業者の荒川秀夫は大学卒業後、日立製作所に就職して、化工機械の設計や海外でのプラントの立ち上げなどの仕事を5年間続けました。やがて雇われて仕事をすることに疑問を抱き、日立製作所を退職。それまで培った知識をさらに追求するため、大学院に入って化学工学を研究し、工学博士の学位を得て1971年に修士課程を修了しました。その後は日本コカ・コーラや三菱総研などにコンサルタントとして携わりながら、自らものづくりを興したい、世の中にないものをつくりたいという思いが強まっていきます。荒川技研工業を立ち上げたのは1973年のことです。

ワイヤーシステム「アラカワグリップ」が世界の美術館やショーウィンドウで使われるまで


創業者・荒川秀夫(創業当時の事務所にて)

ワイヤーグリップの元となる金具「ハンドプラー」を開発

しかし創業当時は特に取り組むべきことがありません。大学院時代の教授に依頼されて、千葉のある中小企業の指導をすることになりました。高精度線材加工機の設計や試作を行ったもののまったく売れず途方に暮れていた時、張線(線材を弛みなく張ること)をするための器具に興味をもち、その問題点を解決しようと、それまでにない張線工具の開発をしようと思い立ちました。

ワイヤーシステム「アラカワグリップ」が世界の美術館やショーウィンドウで使われるまで
ワイヤーの着脱がワンタッチででき、予備切断せずに帳線が可能で、軽量かつ手軽に使えること。そんな特徴をもつ「ハンドプラー(HP-1)」は、荒川技研工業が最初に製品化したもので、現在も販売しつづけています。関電工への納品はじめ実績を上げましたが、当初は使い道が限られ価格も高かったので、さらなる用途の可能性を探っていきました。




店舗用品の展示会「ジャパンショップ」での受賞を機に、アラカワグリップが様々な用途で使用されるように

1980年、店舗用品の展示会「ジャパンショップ」にHP-1を改良し小型化したワイヤーグリッパーを出品。当時は製品を展示した出展企業に賞を与える制度があり、1980年は商工中金理事長賞、1981年には技術開発賞を受賞。するといくつか引き合いがありました。それを機に多様なディスプレイや美術館での展示など、張線工具はさまざまな用途へと広まっていきました。

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浮遊感のあるディスプレイを演出。施工時間の大幅短縮にも寄与

1980年代のバブルと共に、店舗やショーウインドウでアラカワグリップが使われるようになりました。ハンガーパイプや棚、トルソー、照明等をワイヤーで吊るすことがディスプレイの手法の1つになりました。位置調整もワンタッチですので、施工時間も大幅に減ることになり、また浮遊感を出すことができディスプレイの可能性を拡げることになりました。

ワイヤーシステム「アラカワグリップ」が世界の美術館やショーウィンドウで使われるまで


撮影:NOSIGNER



ピクチャーレールの開発により、誰でも簡単に絵の付け替えが可能に

当社のワイヤーでは上下方向に自由に移動ができます。カーテンレールを扱っていた企業からアルミのレールにワイヤーグリップを取り付けることができれば左右方向にも移動でき、吊元の位置も自由になる、ということでピクチャーレールが世の中に生まれました。そして1982年、宮城県立美術館を手がけていた前川國男建築設計事務所からの依頼で当社製品を納品しました。

それまでは壁に額受金具をつけ、そこに絵画の額吊金具を引っ掛けるのが主流でしたが、壁を汚したくないという要望が多くありました。それに対してピクチャーレールは、天井や壁につけるレールと、フックやアタッチメントをすべてシステムにしたことで、壁に穴をあけることなく、誰でも簡単に絵の架け替えができるようになりました。

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絵の裏に隠れるフックも美しいデザイン

アラカワグリップ・ワイヤーシステムが世界の美術館やショーウインドウに使用される

ピクチャーレールシステムは取扱いの容易さ信頼性から、まずは1993年にロシアの国立トレチャコフ美術館で採用され、その後エルミタージュ美術館をはじめ、ワシントンのナショナルギャラリー、ニューヨークのメトロポリタン美術館、イギリスの大英博物館、台北の故宮博物館などで当社製品が使われています。

ディスプレイでもこれまでエンポリオアルマーニの全世界のショーウインドウ、アメリカ大手のスニーカーショップ「フットロッカー」に使用され、現在は無印良品等あらゆる場所でご使用いただいております。



ワイヤーシステム「アラカワグリップ」が世界の美術館やショーウィンドウで使われるまで




商品は500点以上に展開

創業当時の製品点数は数十点でしたが、インテリアデザイナー、建築家からの「もっとこうしたい」に応え続けてカタログの商品は500点以上になりました。クリエイターなしにワイヤーシステムの発展はありませんでした。その感謝を込めて、2017年に竣工した本社・表参道ショールーム「TIERS(ティアーズ)」にはクリエイターのためのスペース「TIERS GALLERY(ティアーズ ギャラリー)」があり、多くのイベントを開催しています。

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美術家・野老朝雄によるワイヤーファサードが優しく訪問者をTIERSへ導く(撮影:平賀哲)

信頼と技術のアラカワ。最新の機械と人の技術を両立させたものづくり

創業時の理念「ないものを創る」と共に大切にしてきたのが「信頼と技術」です。アメリカの美術館ではモネやルノワールの絵画等の「世界の宝」を当社製品で吊り下げていますが、落下事故でもあればそれに傷を付けてしまいます。

当社の所沢事業所(埼玉県)にて材料の仕入れから機械加工、検品・組立、検査、梱包・発送まで一貫した生産体制を整えています。カタログに掲載している製品数は約500点。そのうち常時生産しているのは約300点。多様な要望に応えるために少量多品種生産を行なっています。

ワイヤーシステム「アラカワグリップ」が世界の美術館やショーウィンドウで使われるまで


最新の機械設備を導入し、良質な材料を厳選して高度な加工技術による質の高い機械加工を行っています。それは生産性の向上とともに安定した製品の供給にも寄与しています。また、ワイヤーグリップ機構を有した製品に関しては、組立後実際にワイヤーを通し品質を確認する「全数検査」を行ってから出荷しています。
「最新の機械」と「人の技術」を両立させた丁寧なものづくりを大切にしており、そのため当社起因の落下事故はこれまで一度もありません。
ワイヤーシステム「アラカワグリップ」が世界の美術館やショーウィンドウで使われるまで


創業50周年。アラカワグリップのさらなる可能性を探求し続ける

荒川技研工業は2023年に創業50年を迎えます。現在は息子たちがその理念を受け継ぎ、同社を牽引しています。長男の創(はじめ)が代表を務め、二男の均(ひとし)が企画・製造を、三男の真(まこと)がマーケティング&セールスプロモーションを担い「アラカワグリップ」のさらなる可能性を求めて、新しいものづくりに挑んでいます。

ワイヤーシステム「アラカワグリップ」が世界の美術館やショーウィンドウで使われるまで


安心して使える部品を、美しいデザインで。

荒川技研工業はこれからも、人々とともにつくり続けます。

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【荒川技研工業HP】

https://www.arakawagrip.co.jp/

【荒川技研工業 Instagram】

https://www.instagram.com/arakawagrip/

【TIERS GALLERY Instagram】

https://www.instagram.com/tiersgallery/
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