本資料はアストラゼネカ英国本社が2020年5月28日に発信したプレスリリースを日本語に翻訳し、みなさまのご参考に提供するものです。本資料の正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先します。
アストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ、最高経営責任者(CEO):パスカル・ソリオ[Pascal Soriot])は、5月28日、根治的に腫瘍を完全切除した早期ステージ(IB期、II期およびIIIA期)の上皮成長因子受容体遺伝子変異陽性(EGFRm)非小細胞肺がん(NSCLC)患者さんを対象にタグリッソ(R)(一般名:オシメルチニブ、以下、タグリッソ)による術後補助療法の評価を行う第III相ADAURA試験において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある無病生存期間(DFS)の延長を示したことを発表しました。
本試験の結果は、2020年5月31日(現地時間)に米国臨床腫瘍学会(ASCO)バーチャルサイエンティフィックプログラムのプレナリーセッションで発表されました(abstract #LBA5)。
第III相ADAURA試験の主要評価項目は、ステージII期、IIIA期の患者さんのDFSであり、タグリッソによる術後補助療法は、再発または死亡リスクを83%減少させました(ハザード比:0.17; 95%信頼区間0.12 - 0.23; p値0.0001)。また、副次評価項目の1つである全症例(IB~IIIA)のDFSでは、再発または死亡リスクを79%減少させました(ハザード比:0.21; 95%信頼区間0.16 - 0.28; p値0.0001)。
また、2年経過時点において、タグリッソ投与群の89%が無病生存しており、比較対象のプラセボ投与群では53%でした。タグリッソ投与群におけるDFSの延長は、腫瘍切除後に化学療法を受けた群、切除手術のみを受けた群、アジア人および非アジア人など、全てのサブグループにおいて一貫して認められました。
第III相ADAURA試験の治験責任医師であり、Yale Cancer Center / Smilow Cancer Hospital(コネチカット州、ニューヘイブン)の腫瘍内科部長であるRoy S. Herbst医学博士は次のように述べています。「今回示されたデータは、切除手術および術後化学療法を問題なく終えてもなお再発率が高い、早期ステージのEGFRmのNSCLC患者さんの治療に変革をもたらすと言えます。タグリッソは、治療プラクティスを変え、治療アウトカムを改善する可能性のある、待ち望まれていた新たな治療選択肢となるでしょう」。
アストラゼネカのオンコロジー研究開発エグゼクティブバイスプレジデントであるJosé Baselgaは次のように述べています。「第III相ADAURA試験でタグリッソが示した結果は、EGFR阻害剤がEGFRmである早期ステージの肺がん患者さんの治療を変え、根治の希望を与え得ることを明らかにした初の国際共同試験です。私たちは、この素晴らしいデータについて規制当局と連携を始めており、タグリッソがもたらすベネフィットを早期ステージの肺がん患者さんに提供できることを期待しています」。
2020年4月 ( https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2020/2020041701.html#! ) に、アストラゼネカは、第III相ADAURA試験が顕著な有効性を示したことで、独立データモニタリング委員会より、本試験の盲検解除を予定より2年早めるよう勧告を受けたことを発表しました。なお、全生存率(OS)については、データ解析にあたりタグリッソ投与群で良好な結果でしたが、結論を出すには時期尚早であることから、引き続き副次的評価項目として評価を行います。
[画像: https://prtimes.jp/i/24308/204/resize/d24308-204-993409-0.jpg ]
本試験におけるタグリッソの安全性と忍容性は、転移性NSCLC患者さんを対象にしたこれまでの試験と一致していました。治験担当医師による評価でグレード3以上となる有害事象の発生率は、タグリッソ投与群で10%、プラセボ投与群で3%でした。
タグリッソは、米国、日本、中国、EUおよびその他多くの国において、局所進行性または転移性EGFRmのNSCLC患者さんに対する1次治療として承認されています。
今年のASCOのバーチャルサイエンティフィックプログラムにおいて取り上げられた発表は、肺がんの早期から進行期までにわたって取り組むアストラゼネカのリーダーシップ ( https://www.astrazeneca.com/content/astraz/media-centre/press-releases/2020/astrazeneca-advances-the-science-of-cancer-medicine-with-practice-changing-data-at-the-asco20-virtual-scientific-program.html ) を示すとともに、当社のバイオマーカー主導型アプローチを強化するものです。
※EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの術後補助療法に対するタグリッソの適応は、本邦では未承認です。
以上
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肺がんについて
肺がんは、男女共にがんによる死因の第1位であり、すべてのがんによる死亡の約5分の1を占めています (1)。肺がんは非小細胞肺がん(NSCLC)と小細胞肺がん(SCLC)に大きく分けられ、肺がん患者さんの80~85%がNSCLCと診断されます (2)。切除可能なNSCLC患者さんの多くが、手術(完全切除)を受けても再発します (3,4)。欧米ではおよそ10~15%、アジアでは30~40%のNSCLC患者さんがEGFR遺伝子変異を有しています (5-7)。これらの患者さんは特にがん細胞の成長を促す細胞シグナル伝達経路をブロックするEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)治療への感受性が高くなります (8)。
ADAURA試験について
ADAURA試験は、腫瘍完全切除および術後補助療法としての化学療法を伴うIB期、II期、IIIA期のEGFRmのNSCLC患者さん682人を対象に、タグリッソの術後補助療法に対する無作為化二重盲検プラセボ対照国際共同第III相試験です。タグリッソ治療群においては、患者さんはタグリッソ 80mg錠 1日1回経口投与で3年間または再発するまで治療を受けました。なお、本試験は米国、欧州、南米、アジア、中東の20ヵ国以上、200を超える施設で実施されました。主要評価項目はステージIIおよびIIIAの患者さんにおけるDFSであり、主要副次評価項目はステージIB、IIおよびIIIAの患者さんにおけるDFSです。なお、データ解析は当初は2022年に予定されていました。本試験では副次評価項目のOSの評価を引き続き行います。
タグリッソについて
タグリッソ(一般名:オシメルチニブ)は第3世代不可逆的EGFR阻害剤であり、中枢神経系転移に対する臨床活性も有しています。現在、タグリッソ40mg錠および80mg錠の1日1回経口投与は、EGFR遺伝子変異陽性進行NSCLCの1次治療として米国、日本、中国およびEUを含む多くの国で承認されており、ステージIIIの切除不能な症例(LAURA試験)、化学療法との併用療法(FLAURA2試験)、ならびにEGFR阻害剤に対する耐性に取り組むため他の新薬候補との併用療法(SAVANNAH試験、ORCHARD試験)においても検討が進んでいます。
肺がん領域におけるアストラゼネカについて
アストラゼネカは、さまざまな病期における異なる組織型の肺がん、治療法、作用機序に対して、承認済みおよび後期臨床開発段階の新薬候補を含め、包括的なポートフォリオを有しています。欧米では10~15%、アジアでは30~40%のNSCLC患者さんが疾患の遺伝的要因としてのEGFR遺伝子変異を有しており、アストラゼネカは既承認薬イレッサ(R)(ゲフィチニブ)およびタグリッソ(オシメルチニブ)の提供や、現在進行中の第III相試験であるLAURA、FLAURA2によって得られる新たなエビデンスを通じて、遺伝子変異を持つ患者さんのアンメットニーズに応えることを目指しています (5-7)。
当社はまた、タグリッソとc-Met受容体チロシンキナーゼの選択的阻害薬であるサボリチニブ、および他の新薬候補との併用療法を評価する、現在進行中の第II相SAVANNAH試験およびORCHARD試験を通じて、腫瘍の耐性メカニズムを解き明かそうとしています。
また、当社の広範ながん免疫療法の後期開発プログラムは、すべての肺がん患者さんの4分の3にあたる既知の遺伝子変異を持たない患者さんを対象にしています (12)。抗PD-L1抗体であるイミフィンジについては単剤療法、およびトレメリムマブおよび/または化学療法との併用療法において、病勢進行が認められた患者さんを対象とした第III相試験(POSEIDONおよびPEARL)、治癒の可能性がある初期段階の患者さんを対象とした第III相試験(MERMAID-1、AEGEAN、ADJUVANT BR.31、PACIFIC-2、PACIFIC-4、PACIFIC-5、およびADRIATIC)が現在進行中です。さらに、イミフィンジは、エンハーツを含むまだ開発パイプラインの初期段階にある新薬候補との併用療法を評価する第II相併用投与試験(NeoCOAST、COASTおよびHUDSON)においても検討されています。
アストラゼネカにおけるオンコロジー領域
アストラゼネカはオンコロジー領域において歴史的に深い経験を有しており、患者さんの人生と当社の将来を変革する可能性のある新薬ポートフォリオを保有しています。2014年から2020年までの期間に少なくとも6つの新薬発売を予定し、低分子・バイオ医薬品の広範な開発パイプラインを有する当社は、肺がん、卵巣がん、乳がんおよび血液がんに焦点を当て、成長基盤としてオンコロジー治療を進展させることに尽力しています。中核となる成長基盤に加え、当社は、Acerta Pharma社を介した血液学領域への投資に象徴されるような、戦略を加速する革新的な提携および投資についても積極的に追求していきます。
アストラゼネカは、がん免疫治療、腫瘍ドライバー遺伝子変異と耐性メカニズム、DNA損傷修復および抗体薬物複合体の4つの科学的基盤を強化し、個別化医療を推し進める併用療法の開発に挑戦し続けることでがん治療のパラダイムを再定義し、将来的にはがんによる死亡をなくすことをビジョンに掲げています。
アストラゼネカについて
アストラゼネカは、サイエンス志向のグローバルなバイオ・医薬品企業であり、主にオンコロジー、循環器・腎・代謝疾患、および呼吸器・自己免疫疾患の3つの重点領域において、医療用医薬品の創薬、開発、製造およびマーケティング・営業活動に従事しています。当社は、100カ国以上で事業を展開しており、その革新的な医薬品は世界中で多くの患者さんに使用されています。詳細についてはhttps://www.astrazeneca.com または、ツイッター@AstraZeneca. (英語のみ)をフォローしてご覧ください。
References
1. World Health Organization. International Agency for Research on Cancer. Globocan Worldwide Fact Sheet 2018. Available at http://globocan.iarc.fr/Pages/fact_sheets_population.aspx Accessed: May 2020.
2. LUNGevity Foundation. Types of Lung Cancer. Available at https://www.lungevity.org/about-lung-cancer/lung-cancer-101/types-of-lung-cancer Accessed: May 2020.
3. Sasaki H, et al. Prognosis of recurrent non‑small cell lung cancer following complete resection. Onc Letters. 2014:7;1300-1304.
4. Fink-Neuboeck N, et al. Hazards of Recurrence, Second Primary, or Other Tumor at Ten Years After Surgery for Non–Small-Cell Lung Cancer. Clinical Lung Cancer. February 25 2020. https://doi.org/10.1016/j.cllc.2020.02.011
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7. Ellison G, et al. EGFR Mutation Testing in Lung Cancer: a Review of Available Methods and Their Use for Analysis of Tumour Tissue and Cytology Samples. J Clin Pathol. 2013:66;79-89.
8. Cross DA, et al. AZD9291, an Irreversible EGFR TKI, Overcomes T790M-Mediated Resistance to EGFR Inhibitors in Lung Cancer. Cancer Discov. 2014;4(9):1046-1061.
9. Cagle P, et al. Lung Cancer Biomarkers: Present Status and Future Developments. Archives Pathology Lab Med. 2013;137:1191–1198.
10. Datta D, et al. Preoperative Evaluation of Patients Undergoing Lung Resection Surgery. Chest. 2003;123: 2096–2103.
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12. Pakkala, S, et al. Personalized Therapy for Lung Cancer: Striking a Moving Target. JCI Insight. 2018;3(15):e120858.
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