公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉 竹二郎、以下 WWFジャパン)は2025年4月に鹿児島県大島郡大和村国直(やまとそんくになお)でのサンゴ礁生態系保全プロジェクトを国直集落や関係機関の協力のもと開始し、7月13日(日)に第1回調査を実施しました。プロジェクトは、国直の海のサンゴ礁生態系に関する調査や、国直集落の暮らしや文化、海との関わりに関する調査を通して、地域の観光・生活・文化に根差した、持続可能な海の生物多様性やサンゴ礁生態系の保全を、集落や関係協力機関とともに検討・実施していきます。
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礁斜面(10メール以深)での調査 ((C)日本大学/藤井琢磨)
プロジェクト概要
期間:2025年4月~2030年6月末(予定)
活動地:鹿児島県大島郡大和村国直集落周辺及び地先の海
協力地域・関係機関:鹿児島県大島郡大和村国直集落、NPO法人TAMASU、奄美漁業協同組合、大和村役場、奄美海洋生物研究会、日本造礁サンゴ分類研究会、環境省奄美群島国立公園管理事務所(敬称略・順不同)
活動内容:
- 国直の海のサンゴ礁生態系に関する調査・記録(主要・希少なサンゴ種、サンゴの白化に対する耐性や回復・新規加入等)
- 国直集落の生活や文化と海との関わりに関する調査・記録
- 収集した情報の活用方法の検討と、保全活動の実施
サンゴ礁は、「海の熱帯雨林」とも呼ばれ、全海洋生物種の25%が棲み処や餌場とし、人間にも食料調達や漁業・観光業、防波効果などさまざまな生態系サービスを提供している、地球上で生物多様性の高い場所の一つです。このように、サンゴ礁の保全は、海洋生態系や人間の暮らしにとっても重要ですが、昨今は気候変動の影響によって海水温上昇と海洋酸性化が進行し、世界的に造礁性サンゴが危機に瀕しています。
WWFジャパンは気候変動の影響がますます顕著になるなか、保全上重要性の高い海域を特定し、その地域の方々と保全活動を行なうことを検討。国立環境研究所と奄美群島サンゴ礁保全対策協議会、奄美海洋生物研究会の協力のもと、サンゴ種の多様性やサンゴ礁の健全性、白化からの回復状況、他の海域とのつながり等の観点で、南西諸島の海域から重要性の高い海域を選定し、現場調査を経て国直をプロジェクトサイトに決定しました。
今後は、国直の海のサンゴ礁生態系や、集落の生活・文化と海の関わりを調査。収集した情報をもとに、国直集落の観光・生活・文化に根差した形で、人的脅威の回避・抑止や、食害生物の大発生といった自然の脅威へ、迅速な対応が可能な体制を集落の方々とともに検討・構築し、海の生物多様性保全、国直のサンゴ礁生態系保全を目指します。
第1回調査について
7月13日(日)に行なわれた第1回調査では、国直集落やNPO法人TAMASU、奄美海洋生物研究会の協力のもと、サンゴ分類の専門家である下池和幸氏(日本造礁サンゴ分類研究会、コーラル・リサーチ・ダイバーズ)、藤井琢磨氏(日本大学専任講師、日本造礁サンゴ分類研究会)を招き、海の生物多様性と、観光や漁業での海の利用の観点で重要地点を特定すると同時に、生きているサンゴの分布を調査しました。
調査では、水深が浅い場所のサンゴが、2024年夏の高水温で大規模かつ深刻な白化を経験したと見られ、死んでしまった群体も多く見られました。しかし、一部のサンゴには生残・回復の兆しが確認できました。また、水深10メートル以深の深場ではさまざまな種のサンゴが白化の影響を受けることなく、よい状態で残っていることを確認しました。
プロジェクトは、今後数年かけて、サンゴの耐性や回復、新規加入などの状況を調査。国直の海を理解し、サンゴの保全につながるヒントを探り、得られた知見を、国直集落と海との繋がりの再発見、再構築に活用します。
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【写真左】2024年の高水温の影響が残るサンゴ(水深が浅い礁池内)((C)興克樹)
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【写真右】調査メンバー:左から興克樹氏(奄美海洋生物研究会会長)、中村修氏(NPO法人TAMASU)、下池和幸氏(日本造礁サンゴ分類研究会、コーラル・リサーチ・ダイバーズ)、藤井琢磨氏(日本大学専任講師、日本造礁サンゴ分類研究会)、才原文哉氏(NPO法人TAMASU)、佐々木小枝(WWFジャパン)((C)WWFジャパン)
奄美海洋生物研究会会長 興克樹氏のコメント
国直のサンゴ礁は1998年夏期の大規模白化により大きな撹乱を受けましたが、その後早期に回復がみられました。地域資源として自然環境を活用した地域活性化が期待されます。本プロジェクトにより、環境文化を育んだサンゴ礁への理解を深め、サンゴ礁を通して自然環境の現在や未来を考える一因となれば幸いです。
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NPO法人TAMASU 中村修氏のコメント
国直集落では子どもからお年寄りまで、目の前の海で漁を営み、年間を通じて豊かな恵みを得てきました。夕暮れどき、浜辺に集い夕日を眺めながら語らうのも夏の風物詩です。国直海岸は漁場であり、憩いの場でもあります。
私たちは、自然の生態系はもちろん、そこに根づく文化や精神も含め、集落の原点ともいえるこの海を未来へ引き継いでいきたいと考えています。
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WWFジャパン海洋水産グループコンサベーション・オフィサー 佐々木小枝のコメント
サンゴ礁は、生物多様性の高い生態系の一つであり、人間はサンゴ礁から、水産資源の提供や観光・レクリエーションの場、高潮等の被害からの保護等様々な恩恵を預かっています。しかし海水温上昇や、海洋酸性化、人間の活動等が、サンゴの健全な生息を脅かし、生態系や生物多様性の損失、漁業・観光業・食料調達の危機、沿岸保護の低下等が懸念されています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、世界の造礁性サンゴの70~90%が死滅すると予測しており、サンゴ礁の保全が世界的に喫緊の課題です。
今回、国立環境研究所(山野博哉上級主席研究員、阿部博哉研究員)、奄美群島サンゴ礁保全対策協議会、奄美海洋生物研究会のご協力により、サンゴの保全上重要性が高い場所として国直を特定しました。
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【ご参考】
・国直集落について(大和村の観光・文化情報サイト | まるごと大和村)
https://amami.org/area/kuninao
・国直での第1回調査について(WWFジャパンスタッフ活動ブログ)
https://www.wwf.or.jp/staffblog/activity/6000.html
・日本のサンゴ礁生態系とその保全について
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/5241.html
・地球規模の転換点:サンゴ礁生態系の消滅(「生きている地球レポート2024」)
https://www.wwf.or.jp/activities/lib/5751.html
WWFについて
WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年に設立されました。人と自然が調和して生きられる未来をめざして、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止などの活動を行なっています。 https://www.wwf.or.jp企業プレスリリース詳細へ : https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000274.000018383.htmlPR TIMESトップへ : https://prtimes.jp