AIテックカンパニーの株式会社ZENKIGEN(本社:東京都港区、代表取締役:野澤比日樹、以下ZENKIGEN)は、研究部門ZENKIGEN Lab.の尾崎幸平が筆頭著者として執筆した創造性に関する論文が、査読付きジャーナル「日本創造学会論文誌」に掲載されたことをお知らせします。
ハイライト- アイディアを考える際に参照するエビデンスの種類(神経科学的エビデンスと社会科学的エビデンス)が柔軟なアイディア生成に影響するか評価した。
- 神経科学的エビデンスの参照は柔軟なアイディア生成を促進することがわかった。
- 神経科学的エビデンスの参照が柔軟なアイディア生成を促進した理由として、エビデンスに感じる権威性や独創性、馴染み深さが関係する可能性が示唆された。
■論文詳細
参照するエビデンスによってアイディアは影響を受けるのか?
多くの業務において、私たちは様々なエビデンスを収集し問題解決に役立てようとします。しかし、参照するエビデンスの種類が、アイディア生成に与える影響は十分に検討されていませんでした。そこで、本研究では二つの「情報の生成背景が異なるエビデンス」を比較することで、エビデンスの参照がアイディア生成に与える影響を検証することを目的としました。具体的には、神経科学的エビデンス(注1)と社会科学的エビデンス(注2)を用いました。近年、ニューロマーケティングが注目されているため、エビデンスの一つに神経科学的エビデンスを選択しました。社会学的エビデンスは、従来から用いられるアンケート調査を意識して選択しました。
注1)神経科学的な手法により導かれた情報(例:fMRIを用いた研究)
注2)社会科学的な手法により導かれた情報(例:アンケートを用いた研究)
マーケティング思考力テストとアイディアの柔軟性測定
本研究では、参加者にオンライン上で「マーケティング思考力を測定するアイディア生成課題(MTT)」に取り組んでもらうことで、柔軟なアイディア生成(幅広いアイディアを生み出すこと)を測定しました。MTTでは、「自社製品のリンゴジュースの売上低迷」という状況を想定してもらい、「リンゴジュースの売上向上のためにやるべきこと」のアイディアを出してもらいました。アイディアは自由記述式で、できる限り多く、かつ幅広く考えるように指示しています。
類似したアイディアはカテゴリーとしてまとめ、算出したカテゴリーの数をアイディア生成の柔軟性の評価として用いました。
重要な操作として、参加者はMTTの実施前に「飲料品の売上に関する要因―コーラ飲料に着目して―(尾崎 2023)」という架空の論文を参照しました。この架空の論文には「赤色のラベルは購買意欲を高める」という結論が提示されています。ただし、この架空の論文には、神経科学的エビデンス版(注3)と社会科学的エビデンス版(注4)の二つが存在し、結論へ至るまでの過程はそれぞれ異なっています。各参加者にはどちらか一方のみが提示されました。
このような手続きにより、どちらのエビデンスを参照した方が、柔軟なアイディア生成が促進されるか、もしくは抑制されるかを検証しました。
注3)「fMRIを使用した脳画像法によって3種類の異なる色のラベルの付いたコーラ、すなわち赤色ラベル、青色ラベルおよび緑色ラベルのコーラを飲み比べている時の脳活動を測定した結果、購買意欲を示すと考えるDLPFC(背外側前頭前野)の活動量に条件差がみられ、赤色ラベルが最も購買意欲を高めた」という説明が与えられた。
注4)「リッカート尺度項目を使用したアンケート調査法によって3種類のラベルのコーラに対する購買意欲を測定した結果、購買意欲に条件差がみられ、赤色ラベルが最も購買意欲を高めた」という説明が与えられた。
[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/35867/136/35867-136-4ed423df4b9d8f083c5216141d797495-1235x695.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
提示されたエビデンス(本文図2より)
神経科学的エビデンスの参照は柔軟なアイディア生成を促進する
統計的仮説検定の結果、神経科学的エビデンスの参照が柔軟なアイディア生成を促進することがわかりました。この理由として、我々は神経科学的エビデンスの独創性の高さが柔軟性の促進に影響するのではないかと考えました。独創性の高い具体例の参照はアイディアの柔軟性を促進すると考えられており、神経科学的エビデンスが独創的だと捉えられているため生じたと考えられます。また、提示されたエビデンスに対する馴染み深さも関与している可能性があると考察しています。
今後は、エビデンスの独創性や馴染み深さの影響、本研究の一般化可能性、エビデンスの権威性の測定指標、他の柔軟性の測定方法、実験課題の妥当性などを考慮した詳細な検討が必要であると考えています。
権威性・独創性・馴染み深さに過度に依拠しない情報収集が鍵
本研究から、権威性、馴染み深さが低く感じられるエビデンスでも、手にとってみることで、柔軟なアイディア生成が促進されることが示唆されます。新しいアイディアを思いつきたい時には、慣れ親しんだタイプのエビデンスに偏っていないか意識してみることが重要かもしれません。
研究ストーリー
私たちは採用DXサービス「harutaka(ハルタカ)」を通じて面接の可視化を推進していますが、情報の見せ方一つでユーザーの受け取り方は大きく変わります。その中で抱いたのは、「良かれと思って提示した情報が、逆に発想を縛ってはいないか」という問いでした。 本論文では、参照するエビデンスの種類によって柔軟なアイディア生成に違いが出るかを議論しましたが、情報の可視化や編集がユーザーに及ぼす影響を科学的に探求するための、より大きな研究の入口になると考えています。
掲載論文
掲載誌: 日本創造学会論文誌 Vol.29
論文名: エビデンスの出自が柔軟なアイディア生成に与える影響 神経科学的エビデンスと社会科学的エビデンスの比較
著 者: 尾崎幸平、橋本一生、岩本慧悟
DOI: https://doi.org/10.24578/japancreativity.29.0_103
■ZENKIGEN Lab.
ZENKIGEN Lab.(ゼンキゲンラボ)は、株式会社ZENKIGENのVISIONである『テクノロジーを通じて人と企業が全機現できる社会の創出に貢献する』に沿って、学術知・技術・様々な研究手法を駆使しながら「人間理解」を深め、社会の今後の流れを推測しながら既存プロダクトの改良や、新たに開発すべきプロダクトの種を見つけていく研究開発チームです。工学者、心理学者、社会学者など、多様な学術的専門性を持ったメンバーで構成されています。
■著者プロフィール
尾崎幸平
ZENKIGEN 非常勤研究員
社会心理学、創造性の研究に従事
橋本一生
ZENKIGEN 主任研究員 / 東京理科大学スマートヘルスケアシステム研究部門 客員研究員
医用生体工学、電気工学、感性工学の研究に従事
岩本慧悟
ZENKIGEN 研究員 / 神戸大学大学院経営学研究科 客員准教授
社会心理学、採用学などの研究に従事
■株式会社ZENKIGENについて
「テクノロジーを通じて人と企業が全機現できる社会の創出に貢献する」というビジョンのもと、2017年10月に創業。AIテックカンパニーとして、独自開発のAIモデルや生成AI・LLMを活用し、採用プロセス全体の最適化を実現する採用DXサービス「harutaka(ハルタカ)」を提供。
■会社概要
会社名:株式会社ZENKIGEN(ゼンキゲン)https://zenkigen.co.jp/
代表者:野澤比日樹
所在地:東京都港区虎ノ門4-3-1 城山トラストタワー 21F
設立:2017年10月
事業内容:
・採用DXサービス「harutaka(ハルタカ)」の企画・開発
・目標達成の個別指導型システム「コレドウ目標設定」の企画・開発
・パートナーとの共同研究機関「ZENKIGEN Lab(ゼンキゲンラボ)」の運営
・人事コミュニティ「ZINZIEN(ジンジエン)」の運営
・人材紹介サービス「ZEN Career Partners(ゼンキャリアパートナーズ)」の運営企業プレスリリース詳細へ : https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000136.000035867.htmlPR TIMESトップへ : https://prtimes.jp