気候変動への対応が急務となる中、企業の経営にも「脱炭素」が求められています。経理向けクラウドサービスを展開する株式会社invoxは、2025年5月から「invox炭素会計」の提供を開始し、企業の脱炭素経営を支援する取り組みを本格化させます。


自ら脱炭素アドバイザーの資格も保持する同社の代表取締役・横井朗に、炭素会計分野に取り組む理由や企業がカーボンニュートラルを推進する意義を聞きました。

同社がかかげる「すべての事業者が脱炭素経営に取り組む社会を」というスローガンのもと、脱炭素の潮流と企業が今すぐ取り組むべきアクションについて語ります。

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<株式会社invox 代表取締役 横井 朗>

「子どもたちの未来」「invoxの強み」両方をかけ合わせて 炭素会計分野に挑戦、その真意とは

ー今回開発された「invox炭素会計」について、教えてください。

invox炭素会計」は、会計データや請求情報から温室効果ガスの排出量を算定し、削減目標の設定から計画を作成できる炭素会計システムです。グリーン調達やカーボンクレジットを利用したオフセット支援まで、企業の脱炭素経営をサポートします。

CO2排出量の算定では、会計データや請求データを利用しますが「invox受取請求書」に蓄積した請求データを活用することで、新たな負担をなるべく減らし、業務効率化とセットで取り組むことができるのが特徴です。

カーボンニュートラルにむけて今、企業ができること


<invox炭素会計のシステム概要図>

ーそもそも「炭素会計」とはどういったものでしょうか

あまり耳慣れない言葉かもしれませんね。

炭素会計とは、事業で排出するCO2排出量の算定から削減の目標設定、削減の実施、そして情報開示までの一連の流れを指します。

炭素会計では、主に3つのスコープに分けて排出量を算定します。

スコープ1:社有車が燃焼するガソリンや、工場内でガソリンやガスを燃焼させる際に発生する直接的な排出

スコープ2: 購入した電力などを使用した際の間接的な排出

スコープ3: サプライチェーンなどを含むその他の間接的な排出

中でもスコープ3は原材料の調達や、物流、製品の加工・販売・廃棄など範囲が広く、取引の内容確認から算定まで多くの手間がかかります。

下記の記事でも炭素会計について詳しく解説していますので、そちらもご覧ください。

参考:「炭素会計」とは?GHG排出量の算定から削減の実行、情報開示まで

ー目に見えない温室効果ガスの排出量の算定はどのように行うのでしょうか。

排出量の算定はカロリー計算に似ていると言われています。

下の図のように、食事のカロリー計算は「食品の量」に「単位あたりのカロリー」を乗じて計算し、

温室効果ガスは購入したものや利用している燃料の金額や物量といった「活動量の物量・金額」に「排出係数」を乗じて計算します。


排出係数は環境省のデータベースで公表されていますし、メーカーや取引先が個別に算定・定義した排出係数(一次データ)を公表しているケースもあります。

カーボンニュートラルにむけて今、企業ができること


<排出量の算定イメージ>

ーデータが揃えば、算定そのものは難しくなさそうな印象を受けました。

今まで、経理向けのサービスを主に提供されていましたが、なぜ炭素会計という新たな分野に取り組もうと考えたのでしょうか。

理由は大きく2つあります。

1つ目は、私たちの目標である「事業を通じて子どもたちが生きる未来を明るくする」ということに直結すると考えているからです。

気候変動問題といえば、トランプ政権の発足後、離脱が発表されメディアを賑わせたパリ協定ですが、この「パリ協定」は、地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑えることに世界が初めて合意したものでした。

ですが、現実問題として2024年は単年で1.5℃以上の気温上昇が複数の機関で報告されるなど、予測を超えて温暖化は進んでしまっています。

「子どもたちの未来」に目を向けると気候変動問題は避けては通れないと考えています。

2つ目は、炭素会計サービスの提供は私たちの強みが活かせる領域だと考えたからです。

炭素会計は、財務会計情報と一致させて算定することが望ましいと言われており、当社がお預かりしている会計データや請求データと非常に親和性が高く、得意とする領域です。

私たちは「すべての事業者が脱炭素経営に取り組む社会を」というスローガンを掲げていますが、事業者が炭素会計という今まで取り組んだことのない分野に取り組もうとしても、費用や人手を新たに割いて行うのは負担が大きいのではないかと考えました。特に日本の大部分を占める中小企業は、「やりたくてもできない」というのが実情でしょう。


invoxシリーズは経理業務を自動化することに特化しており、invox受取請求書などのサービスを2サービス以上ご利用いただいていれば、「パック料金」が適用され、新たな費用負担なくinvox炭素会計をご利用いただけます。さらにinvox受取請求書の請求データを活用できますので、業務効率化とセットで手間も最小化して炭素会計に取り組むことができます。

また、おかげ様で「invox受取請求書」は2年連続で導入社数実績No.1(※1)をいただいており、日本で一番多くの請求書情報を保持している企業であると言えますので、私たちが取り組む意義はそこにあると考えています。

ーinvoxだからこそ、取り組む意味があり、提供価値が最大化できるのですね。

カーボンニュートラルへの取り組みは、上場企業だけの課題ではない

ーinvox社で調査をされたこちらのデータ(※2)を見ると一部の企業のみが脱炭素に取り組んでいて、あまり取り組みは進んでいない印象を受けます。横井さんはこちらの結果についてどのようにお考えですか。

カーボンニュートラルにむけて今、企業ができること


<炭素会計の取り組み状況の調査結果>

取り組んでいる企業の比率としては概ね想像に近いですが、「取り組んでいるか分からない」という方が多いのが印象的ですね。気候変動問題の話をするときの難しさにもつながりますが、関心がある人と無い人、危機感を持っている人と持っていない人のもつ情報量の差が大きく、どこを想定してお話をすれば良いのかいつも悩みます。

多くの人が企業の気候変動問題への取り組み状況に興味を持ち、就職や転職、取引先の選定の際の基準になっていくと社会全体の取り組みも加速するのではないかと思います。

ー日本の大部分を占める中小企業が炭素会計に取り組む未来はやってくるのでしょうか。

プライム市場上場企業に対し段階的にスコープ3までの開示が義務付けられるという話が出ています。そのため、大手と取引のある企業から徐々に炭素会計への取り組みは広がっていくと考えています。炭素会計に早めに取り組むことで取引先から選択される強みにもなりますし、取り組みが遅くなると取引を失うリスクにもなります。
つまり炭素会計への取り組みは攻めにも守りにも必要になります。

ー企業規模に関わらず、炭素会計への取り組みが必要になるということですね。

はい。先ほどお話ししたスコープ3までの開示義務化の動きはサプライチェーンの上流側の働きかけから始めようという動きになるわけですが、上流側が排出量の削減をしようとすると自ずと下流の取引先選定が行われる流れになるかと思います。同じサービスや製品を提供できる複数のサプライヤーと取引をしようとした場合に、コストや財務体質だけでなく、「排出量削減に取り組んでいるか」「より低い排出量で調達できるか」などの要素が盛り込まれていきます。

ーカーボンニュートラルへの取り組みへの流れは必然となっているわけですね。取引先からの要請を受けて取り組みを始める事業者は今後増えそうですが、脱炭素やカーボンニュートラルに取り組むべき理由やメリットについて横井さんのご意見等も踏まえて教えてください。

「取引の継続性を維持する」という点に加えて、大きく2つの側面があると考えています。

1つ目は「事業環境の変化に適応する必要性」です。

地球資源には限りがあり、これまで当たり前のように活用してきた資源の供給が不安定になりつつあります。さらに、気候変動の影響による自然災害の増加や、カーボンプライシングの導入、規制強化といった外部要因により、事業の持続可能性が脅かされるリスクが高まっています。こうした環境変化に適応し、リスクを低減することが、今後の企業経営において重要になっていくでしょう。


2つ目は「社会からの評価や競争力に影響を与える」という点です。

ESG投資の拡大により、投資家は気候変動リスクに対する企業の対応を重要視するようになっています。適切な対策を講じ、その情報を開示することで、投資家や取引先からの評価向上につながります。また、消費者も環境配慮型の製品やサービスを選ぶ傾向が強まっていますし、人材獲得における企業のブランディングにも関わってきます。

このように、脱炭素への取り組みは単なるコストではなく、企業の存続と成長に関わる重要な経営課題の一つになりつつあります。

目先の設備投資ではなく、「現状把握」をまず第一歩に。

ー企業がカーボンニュートラルに取り組む意義が理解できました。具体的に企業は今後、どのようなことに取り組めばいいでしょうか。

最初の一歩は「現状を把握すること」です。まずは自社がどれくらいCO2を排出しているのかスコープ3までの算定に取り組んでみることをお勧めします。

少し大変かもしれませんが、全体を俯瞰し、どこのボリュームが多く、どこに削減余地があるのかを可視化しない限りは計画的に進めていくことはできません。

現状把握に取り組む際には環境省の「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」に情報が多くありますが、多すぎて取っつきづらい部分もありますので、周りに聞ける人がいない場合は環境省認定の「脱炭素アドバイザー資格」に取り組むのがお勧めです。
グリーン人材は求人倍率も高く、個人のキャリアにとっても良いですね。

ー最後にカーボンニュートラルや脱炭素経営に取り組んでいない人たちへのメッセージをお願いします。



カーボンニュートラルにむけて今、企業ができること


事業を続けていく上で、利益の追求は欠かせません。しかし、それと同時に、環境を守る責任も私たちにはあります。

私自身、経営者である前に、一人の父親です。自分の子どもや未来の世代が安心して暮らせる社会を残したい。そのために、利益だけでなく、社会や環境への影響を考えた経営が求められています。

100年後の未来から振り返ったとき「私たちは意味のある選択をした」と胸を張れるように。だからこそ、私たちは自分たちにしかできないことを追求し、持続可能な社会の実現に向けて挑戦し続けています。

炭素会計は、単なる環境対策ではなく、企業の価値を高める新たな経営手法です。

当社が行った調査(※2)では、回答した企業の3割は、炭素会計の取り組みは経理が主体となると回答しています。

カーボンニュートラルにむけて今、企業ができること


経理や財務に関わる方にとっては親和性が高いため、これからの時代に不可欠なスキルとなるでしょう。
キャリアの選択肢の1つとしても検討できる分野です。

私たちは、この分野で新たな一歩を踏み出す企業や個人をサービスを提供することでサポートしています。ぜひ、一緒に持続可能な未来を築いていきましょう。

※1:株式会社富士キメラ総研『ソフトウェアビジネス新市場2024年版』<請求書受領管理2023年度・数量>

※2:調査概要は下記の通りです。

■調査概要

調査方法 :インターネット調査

調査名 :請求書サービスに関するアンケート

調査期間 :2025年1月27日(月)~2025年1月28日(火)

調査対象 :経理部門に所属し、請求書の受領もしくは発行の関連業務を

行っている会社員

有効回答数:412回答

割付条件 :従業員 1-29名の企業に所属:103回答

従業員 30-99名の企業に所属:103回答

従業員 100-299名の企業に所属:103回答

従業員 300名以上の企業に所属:103回答

■株式会社invoxについて

【私たちが目指すこと】

事業を通じて子どもたちが生きる未来を明るくする

【私たちの取り組み】

「価値ある時間を増やし、豊かな社会をつくる」

価格を抑え、どなたでも気軽に利用できるソリューションの提供を通じ

生産性を高めて価値ある時間を増やし、豊かな社会の実現を目指します。

「環境負荷の軽減と再生に取り組み、持続可能な社会をつくる」

事業者の脱炭素経営を推進するソリューションの提供による環境負荷の軽減、

環境再生の支援を通じ、持続可能な社会の実現を目指します。

「子どもたちが必要な支援を受けられる社会をつくる」

請求書(書類)1件につき1円を子どもに関する課題解決に取り組むNPOへ寄付し

子どもたちが安心して生活ができ、十分な食事や教育・支援を受けられる社会の実現を目指します。

×【会社概要】

会社名:株式会社invox(invox Inc.)

設立:2019年2月1日

本社所在地:東京都新宿区西新宿1-25-1 新宿センタービル49F +OURS

invoxスキャンセンター所在地:静岡県静岡市葵区紺屋町11-17 桜井・第一共同ビルディング6階

代表者:代表取締役 横井 朗

資本金:1億円(2021年11月時点)

従業員数:70名(2024年12月時点)

事業内容:invoxの開発・運営

URL:https://invox.co.jp

取得認証等:電子決済等代行業 関東財務局 第79号、電子インボイス推進協議会 正会員、ISMS(ISO27001)認証、令和3年改正法令基準 JIIMA認証
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