「PERPANEP」は、紙と筆記具の相性に注目し、「書き心地」をデザインしたノートのシリーズです。
<PERPANEP>シリーズのフラット製本ノート3種とペン3種
シリーズのハイレンジモデルの位置づけである「ドイツ装ノート<PERPANEP>」は、作り手の思いや商品のこだわりを直接お届けするため、応援購入サービス「Makuake」にて予約販売を実施し、目標金額の1300%を超える高評価をいただくことができました。プロジェクト期間中には、「書き心地を試してみたい」「遊びに行ったり楽しかったりした想い出を残したい」など、たくさんの期待の声が寄せられました。実際に、心が動いた出来事を書き留めたり大切な趣味の記録だったりと、自分自身にとって大切なことを「書く」「残す」ためのノートとしてお使いいただいております。
開発メンバー
コクヨ株式会社
上段・左から、粕谷高太郎(商品企画)、椿裕尊(商品開発)、吉田慎平(商品開発)、中村ちえ子(商品開発)
下段・左から、大塚陽子(デザイナー)、牛嶋美月(生産管理)、清水陽芳(商品企画)
PERPANEP(ペルパネプ)というブランド名は、
PAPER と PEN を組み合わせたアナグラムでできています。
紙(PAPER)とペン(PEN)のコンビネーションを考え、
デザインした文具シリーズです。
1908年、和式帳簿の製造にあたり、洋式ペンでも引っかかりの少ない紙を製紙会社に漉いてもらって以来、コクヨは110年余、「書く」に真摯に向き合ってきました。
今日、クリエイティブを豊かにするプロセスとして「書く」ということが改めて注目されています。
コクヨは、これまで培ってきた技術をもとに「書く」に寄り添う3種の紙を開発し、紙とペンの組み合わせをデザインしました。
ぐるっと回って考えた、PERPANEPの新たな挑戦~ドイツ装ノート開発ストーリー~
紙とペンの相性に着目したシリーズ「PERPANEP」は発売以来、「書き心地」というPERPANEPが提供する価値をどうすればお客様に届けることができるのか、機会あるごとに商品を持って出かけ、お客様に触って試していただき、会話をし続けてきました。このストーリーでは、新しい挑戦として開発したPERPANEPのハイレンジモデル「ドイツ装ノート<PERPANEP>」の製品のこだわりや開発者の苦労など、誕生までのストーリーをご紹介します。
ドイツ装ノート<PERPANEP>の特長
今回開発した「ドイツ装ノート<PERPANEP>」は、「紙質」と「装丁」に大きな特長を持っています。これまでのPERPANEPシリーズと同様、筆記感の大きく異なる3種類の紙質(「ツルツル」「さらさら」「ザラザラ」)をラインナップしており、自分にとって気持ちの良い書き心地を選ぶことができます。
また、「ドイツ装」という製本方法を採用し、360°折り返しても、180°フラットに広げても書きやすいため、様々なシーンの「書く」に寄り添う仕様に仕上げています。ドイツ装は職人が手作業で作り上げる方法で、詩集や画集など大切なことを長く残しておきたい本や書籍によく使用されており、ノートに表れた自身の思考や感情を記録するのにふさわしい製本です。
今回は、紙質と装丁のそれぞれの開発担当に、開発のこだわりや苦労したポイントなどを聞きました。
PERPANEPの紙質へのこだわり
「紙質」の開発担当
コクヨ株式会社 グローバルステーショナリー事業本部 ものづくり第1本部 企画開発部 椿裕尊
こだわりポイント①:筆記感の大きく異なる3つの紙質
3つの紙の筆記感の違いは、主に「表面の平滑度」「圧縮度合い」の違いから生まれます。まず、表面の平滑度に注目してみましょう。下の画像は紙の表面の画像で、3つの紙、それぞれが異なった表面をしていることが見てわかります。ツルツルは圧縮によりパルプ表面が平たくなっているのに対し、ザラザラは粗くて繊維の太いパルプが見え、さらさらは細かいパルプが比較的均一に並んでいます。このような表面のパルプの違いによって平滑度が変わり、筆記感や手触りの違いを生んでいます。
(画像)紙の表面拡大図 左から「ツルツル」「さらさら」「ザラザラ」
次に、紙の圧縮度合いに注目してみましょう。
下の紙の断面写真をご覧ください。断面写真の黄色の部分は、紙の中に含まれる空間を表しています。ツルツルは、強いプレス加工により繊維の密度が高く紙に空間をほとんど含まないため、ペン先が沈みこむことなく紙の表面を流れるように書ける仕様となっています。一方でザラザラは、紙の表面(赤い部分)がかなり凸凹しているので、ペンの動きや筆記する音が強く感じられます。また一見すると空間が多くペンが沈み込みやすそうに見えますが、太いパルプが変形しにくく沈みこみを防ぐことができるため、軽いタッチで書けるという特長をもっています。
(画像)紙の断面図 左から「ツルツル」「さらさら」「ザラザラ」
椿:「3種類の紙はいずれも思い入れがありますが、その中でもザラザラの紙の開発に一番こだわりました。紙質をザラザラにしていけば表面の凹凸が大きくなるため、筆記が重く書きづらくなってしまうのが一般的です。しかしこの商品では、ザラザラの紙でありながら、ペン先が沈み込みすぎずに書き心地が軽い、書きやすいという絶妙なバランスの調整が実現できました」
こだわりポイント②:インクの濃淡の出やすさ
2つ目のこだわりは、インクの濃淡の出やすさです。気持ちの良い書き心地で書くだけでなく、「書いた文字の味わいを感じてほしい」という想いから、インクの濃淡が出やすいような調整にこだわっています。インクの濃淡の出やすさを決める要素として、インクの紙へのしみこみやすさが重要な指標となります。インクは、液体が紙に吸収される際に、色の成分が紙の表面や内部に留まることで発色します。紙に配合するインクをはじく薬剤の種類と量を調整することで、インクのにじみや乾きやすさ(=しみこみやすさ)を調整しています。しかし、一口に薬剤を入れるといっても簡単な話ではありません。薬剤を入れることで濃淡の調整ができるようになる一方で、インクが乾きにくくなったり、にじみの原因となったり、筆記感が重くなって本来実現したかった軽い書き心地が失われたりといった課題も生まれてきます。インクの濃淡の出やすさとにじみづらさ、軽い書き味。苦労しながらも粘り強くバランスを調整し、完成させたのが今の3種の紙質です。
こうした苦労の末に生まれたPERPANEPの紙質は、実際に他社のノートと比較してもインクの濃淡が出やすいことが分かっています。下のグラフは、PERPANEPのうち特長的な筆記感をもつツルツル・ザラザラの紙と、それぞれと近い他社のノートの紙の「濃淡の出やすさ」を比較したグラフです。
このグラフを見ると、ツルツルとザラザラは、他社のノートと比較しても、濃淡が出やすいことが見て取れるかと思います。実際に書いた文字でもその差は明確です(ちなみに、「東」という文字で比較しているのは、止め・はらい・線の重なりの多さで濃淡がより分かりやすいからだそうです)。
(画像)左から ツルツル, ザラザラ, 他社ノート
紙質の開発に込めた想い
椿:「紙質が3種類あることは、PERPANEPの大きな特長だと思っています。ご自身のお気に入りの筆記具に合う紙質で書いていただき、書き心地やインクの発色の良さ、濃淡による文字の味わいなどを感じながら、あえてアナログで書くということを楽しんでいただきたいです」コクヨ初の「ドイツ装」製本と、こだわった高級感
「装丁」の開発担当
コクヨ株式会社 グローバルステーショナリー事業本部 ものづくり第1本部 企画開発部 吉田慎平
こだわりポイント①:コクヨとして初めて挑戦した製本「ドイツ装」
「ドイツ装」という言葉を初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか。ドイツ装とは、中のノートの部分を、表紙・裏表紙で挟み込んで糊付けする製本です。
一般的なノートは、背まで巻き込んで製本しているため、背の部分が割れたり見開き性が悪いことがあるのですが、このノートは本体の背を柔らかい布クロスで包み、表紙・裏表紙を背からずらして貼り合わせているため、ハードカバーでありながら360°折り返して使用することが可能です。ゆったりとした自宅の机でも、狭い出先のスペースでも、立って書きたいシーンにも、様々な「書く」に寄り添うことができるよう考えています。
今回採用しているドイツ装は、特に製本の際の糊付けに高度な技術を要し、職人が1冊1冊、表紙と中の冊子を手で貼り合わせています。コクヨとしてもこの製本は初めての挑戦のため、吉田は折り返しのしやすさを追求するため、表紙と布クロスの間隔を1mm単位で調整し、試行錯誤を繰り返したといいます。
こだわりのポイント②:高級感のあるデザイン
今回のドイツ装ノートは、ハイレンジモデルという位置づけでもあるため、高級感を感じられる装丁に仕上げています。
吉田は、この高級感の演出に苦労したといいます。表紙の素材にレザー感のあるものを選べば高級感自体は出せますが、少し重厚すぎる印象になってしまいます。高級感とスマートで控えめな上品さを両立する素材で、なおかつコクヨの品質基準をクリアできるものが少なかったため、部材選びが大変だったとのことです。
(画像)試作した表紙(左)と箔押しの検証(右)
こういったデザインのこだわりは表紙だけでなく、布クロスや箔押し、見返し部分にあたる部分の紙の質感にまで及んでいます。布クロスは光にあたると少しキラッとする素材を選んでおり、さりげない特別感を演出しています。箔押しの黒も、存在感がありつつ派手すぎないよう、様々なパターンを試作して今の黒色に決まりました。
開発時を振り返って
開発時のことを振り返り、吉田はこう語ります。吉田:「正直、開発にあたって壁にぶつかることがたくさんありました。しかし、試作を繰り返していく中で、徐々に一つ一つの部材の方向性や商品のイメージが固まっていき、だんだんとその過程が楽しくなっていきました。また、試作品で行うヒアリングで、『これすごくいい』『このノート格好いいね』という声をいただき、そういった言葉に支えられ、徐々に自信になっていきました。」
吉田:「書きやすさ・使いやすさ・デザインを追求しました。実際に書いてみて、こういった価値を感じていただきたい。見た目もよいので、ファッションの一部として持ってもらえるのもうれしいですね。」
たくさんのこだわりが詰まった、ドイツ装ノート<PERPANEP>。ぜひ、手に取って感じていただけると嬉しいです。
コクヨ株式会社は、「ツルツル」「さらさら」「ザラザラ」の3種の書き心地から、愛用の筆記具や好みに合った紙質を選べる「ドイツ装ノート<PERPANEP(ペルパネプ)>」の発売を、コクヨ直営ストアと期間限定のPOPUPにて、3月1日(水)から開始します。
※イベント情報はこちら:https://kokuyo.jp/dl/barperpanep/
クラウドファンディングにて目標金額1300%超を記録した「ドイツ装ノート『PERPANEP』」が一部店舗にて販売開始PR TIMES×