有馬温泉の地で昭和4年より営業を続けてきた高級旅館「欽山」。きめ細やかなおもてなしと旬の素材を活かした懐石料理、そして名湯有馬の温泉で、お客様に愛され続けてきました。


欽山ではコロナ禍の長期化を感染症の発生初期から予測し、Withコロナ時代に向けて「新基準」の客室リニューアルをおこないました。2年6か月にわたるリニューアルの裏側や私たちが考える新しい温泉旅館のあり方などをご紹介いたします。

有馬温泉の老舗高級旅館「欽山」、客室を大幅リニューアル。Wi...の画像はこちら >>


有馬を代表する高級料亭旅館「欽山」が愛されてきた理由とは

欽山は有馬温泉の地で昭和4年に法人接待向けの料理旅館として創業されました。以降約100年にわたり、きめ細やかなおもてなしと旬の素材を活かした懐石料理、そして名湯有馬の温泉で、お客様に愛され続けています。

創業当時よりお料理に重きをおき、食材については厳選されたその日その日の良質な食材を仕入れるため、新鮮な旬の食材のみ使用しています。食材が新鮮であるので、お客様のお食事時間に合わせて調理を開始し、出来立てのお料理を一品一品お召し上がりいただいています。日本古来の宿泊文化である旅館を継承するため、夕朝食はお部屋食にこだわり、一品ひとしな、温かいお料理は温かいうちに、冷たいお料理は冷たいうちに、お客様のお部屋まで丁寧に専属の仲居がお運びいたします。

館内も常に清潔であるよう、定期的に休館日を設け修繕や徹底清掃を心掛けております。

ミシュランガイドでは兵庫県の旅館で唯一「一つ星」と評され、豪華で最高級の快適な旅館を表す「五つ屋根」としても高い評価をいただきました。

有馬温泉の老舗高級旅館「欽山」、客室を大幅リニューアル。Withコロナ時代の新しい温泉旅館とは


コロナ禍の長期化を察知し、発生初期からさまざまな対策をおこなってきた

2019年12月末、中国湖北省武漢市で病因不明の肺炎の集団発生の報道がありました。この報道を受け欽山では2020年1月頃より海外からの旅行客の受け入れを自粛しました。そして2020年4月、緊急事態宣言が兵庫県にも発出され長期休館を決意。コロナ禍が未曾有の危機と察し、長期化すると予測しました。

そこで私たちは感染症対策を徹底し、お客様に安心と安全を提供する施工をおこなうことを決定しました。
感染症対策を目的とし、館内料亭の完全個室化及び客室リニューアルをおこなうことにしたのです。早速業者選定・設計・資金調達を開始しました。

またそれと並行して、2020年中には既存の設備にもさまざまな感染症対策を施しました。抗ウイルス空気触媒を従業員スペースを含む全館に施工したほか、抗ウイルス性軟質フィルムをドアノブやボタンなど手に触れる個所全てに貼り付け施工。全客室の玄関扉の鍵をカードキー仕様に更新し、カードは使い回さず1回使用の使い捨てとしました。

有馬温泉の老舗高級旅館「欽山」、客室を大幅リニューアル。Withコロナ時代の新しい温泉旅館とは


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コロナ禍で苦戦するなか、Withコロナに向けて客室リニューアルを決断

コロナ禍の日本経済の不況下において、有馬温泉も例外ではありませんでした。欽山のみならず同業他社及び地域全体が苦戦を強いられました。

さまざまな感染症対策を実施しながら、2020年11月、館内料亭の完全個室化を開始、翌月よりオープンしました。全ての扉には非接触型の自動扉を完備したほか、個室内には光触媒デバイスを導入しました。お客さまに安心してお食事を楽しんでいただける空間を提供いたしました。

有馬温泉の老舗高級旅館「欽山」、客室を大幅リニューアル。Withコロナ時代の新しい温泉旅館とは


一方でコロナ禍については日々状況が変化しており、市場予測は非常に難しい状況でした。「Withコロナ」の状況が継続する懸念も払拭できません。また、旅行需要が回復しても、旧来型の団体旅行形態が復活する可能性は低く、「ニューノーマル」の旅行形態が当面、主流になることが予想されました。


「ニューノーマル」の旅行形態とは、同居する家族や親しい間柄の少人数で、十分な感染症防止対策を講じ3密回避にも配慮した、これまでとは異なる旅のスタイルのことを指します。他の宿泊客に会うことなく、長時間快適に過ごせる「部屋籠り」ができる客室の需要が今後増大すると思われました。

また「安近短(安い・近い・短い)」傾向が強かった国内旅行は大きく変わり、海外旅行に行っていた層が国内旅行に目を向け、さらに有給休暇取得の推奨など働き方改革の影響もあって、「高近長(高い・近い・長い)」傾向になることも予想されました。高品質で快適そして安心安全を提供する宿泊施設の需要は高まり、そのような客室を整備することで、高単価で高稼働できます。

このような考えのもと、旅行需要が低迷している期間内に改修工事を完了するべく、2021年10月、客室リニューアル工事を開始しました。

有馬温泉の老舗高級旅館「欽山」、客室を大幅リニューアル。Withコロナ時代の新しい温泉旅館とは


安心して快適な「部屋籠り」ができる客室を追求し、計画を立てた

私たちは「長時間快適に過ごせる『部屋籠り』ができる客室とは?」「コロナ禍でお客様が求めている温泉旅館とは?」を徹底的に考えました。

①客室専用の温泉露天風呂

リニューアルする全客室に露天風呂を設置することにしました。

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②食事の提供場所

客室内に専用の個室食事処を併設し、顧客ニーズの高い「部屋食」に対応しながら、感染リスクの低減と従業員満足度の向上を同時に図りました。

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③現代の生活様式に合わせた滞在(寛ぎ)スペース

日本旅館ならではの畳・座布団・布団は非日常を体験できますが、お客様の多くはベッドルームでのお休みと、ソファーなど椅子席での上質な寛ぎを求めています。畳敷きの和室・ベッドルーム・リビングルームを配置することにしました。

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④安心安全な滞在空間

客室全域に高機能換気設備を導入し空気感染拡大を防ぐとともに、玄関扉及びトイレ扉に非接触型の自動扉を導入。手洗いの自動水栓化・トイレの非接触型便器の導入により接触感染拡大も防止することにしました。

有馬温泉の老舗高級旅館「欽山」、客室を大幅リニューアル。Withコロナ時代の新しい温泉旅館とは


有馬温泉の老舗高級旅館「欽山」、客室を大幅リニューアル。Withコロナ時代の新しい温泉旅館とは


欽山の強みである「料理」と「接客」に加え、最先端で高機能・高品質で快適、安心安全な客室を整備することにより、更なる高級化路線を突き進むことができると考えました。
その結果、コロナ禍が更に長引いたとしても、安定した集客力と高収益が維持でき、その後の旅館経営に寄与すると考えました。

2年6か月の歳月を経て「withコロナ時代の新基準客室」が完成

こうして2022年4月、最初の「withコロナ時代の新基準客室」がオープンし、同年10月にはさらに12室がオープンしました。コロナ禍の緊急事態宣言発出直後より計画を開始し、約2年6か月の歳月を経ての完成です。

銀泉を用いた温泉半露天浴室は、ミストサウナも備え、身体の内外から芯まで温めてくれます。外気を感じ、景色を眺め、いつでも有馬の銀泉を、お楽しみいただけます。

ゆったり寛げるリビングルーム、快適なベッドルーム、お部屋食可能な和室の三間構成の客室には、ワーキングスペースも併設しており、お客様の貴重なお時間を最新設備の数々を揃えた「洗練された時空間」で、有意義にお過ごしいただけるはずです。

有馬温泉の老舗高級旅館「欽山」、客室を大幅リニューアル。Withコロナ時代の新しい温泉旅館とは


また、欽山では従業員満足度の向上にも力を入れています。社員の皆さんが心身ともに健康で、素晴らしいサービスをお客様にご提供していただく事で、欽山は益々発展し一流の日本旅館であれると考えているからです。

欽山では、お客様に愛され続ける時代のニーズに沿った革新を今後も続けてまいります。
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