富美善株式会社は1977年の創業以降、ホテルニューオータニの和食レストラン「ふみぜん」にて、和食を提供しております。名物のとんかつは豚肉はもちろん、油やパン粉にこだわっており、長らく皆様にご愛顧を賜っております。
また、塩やソースにもバリエーションをご用意しております。

2023年3月、勝どき駅から清澄通りを南西に進んで、通りを入った場所に「カツとパン」を出店いたしました。「カツとパン」は厨房に空間の9割を割いた、テイクアウト専用のお店です。ふみぜんのとんかつと店内手作りの「天然酵母野菜食パン」を使用したカツサンドを中心に、焼きたてのお総菜パンや、メンチカツやエビフライといった揚げ物などの商品をご用意しております。

とんかつの富美善(ふみぜん)が“カツサンド”で“勝負”。勝ど...の画像はこちら >>


見て楽しく食べて美味しく縁起も良い、新しいカツサンド

このストーリーでは、「カツとパン」出店までの紆余曲折や、当店オリジナルカツサンドの誕生について、代表取締役の渡邊剛志が振り返ります。

イタリア好きの社長が継いだ老舗ふみぜん。コロナの影響で目に飛び込んでくる、とんでもない赤字額

富美善株式会社は1977年に創業された老舗の和食レストランです。弊社本店は、ホテルニューオータニ内で「ふみぜん」を営業しております。場所柄今なお多くの各界の著名人の方から、長年の常連様、旅行で訪れて宿泊されているお客様や外国人観光客の方まで、様々なお客様に愛されご利用頂いている店舗になります。季節料理として和食のご提供と共に「とんかつ」が名物であり、とても美味しいとんかつが有名なお店です。2017年12月末にご縁を頂いて、私はこの会社をM&Aにより取得し、4代目の社長となりました。以前、他にも店舗があった時期はありましたが、私が引き継いだ時はこの赤坂のニューオータニ店のみでした。


私はと申しますと、そこから遡ること10年前の2007年に株式会社ビート・インターナショナルという会社を設立しイタリア好き故にイタリアンレストランのみを運営し続け、当時は東京を中心に7店舗のイタリア料理店を運営しておりました。

とんかつの富美善(ふみぜん)が“カツサンド”で“勝負”。勝どき「カツとパン」出店までの苦悩と、あまねく人々に届けたいおいしい明日


イタリア好きでイタリアンレストランのみを運営していた代表取締役 渡辺剛志

その後、私はこの会社の拡大に尽力し海外とのFC契約により2019年12月にフィリピン、2020年3月にカンボジアでオープンが出来、国内でも2020年に虎ノ門に直営2号店を出店していました。ところが、2020年の新型コロナウィルスによる影響で会社は危機的状況となりました。親会社のイタリアレストラン7店舗とふみぜん2店舗の国内9店舗が毎月計上する赤字額は今まで見たことが無い数字で、もの凄い勢いでキャッシュが無くなっていきます。

なんとかしなければと当時のトレンドであったデリバリーやECについて検討や試作を重ねました。ドレッシング、ピザ、そしてカツサンドも。しかしどれも急ごしらえで参戦しても利益が望めないと思った事と月毎に大きく減少していくキャッシュの状況から既に投資も出来ない事もあり、結局何も行動に移すことが出来ませんでした。そして私は倒産を覚悟し観念しました。2020年は遺書と家族の連絡先を鞄に入れて悩みながら過ごしていました。

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2019年~20年にかけて虎ノ門、カンボジア、マニラと出店して順調に思えたが…

ニューヨークのカツサンドに受けたインスピレーション。再熱する、カツサンド作りへの情熱

そんな状態でしたが2021年、ありがたいことに国の営業自粛要請に対する協力金の金額が店舗毎に算出された金額を頂ける事になったのと、金融機関の皆様のご理解を頂きなんとか頂けなんとか会社を存続させておりました。

そんなある日に出社前にたまたま見ていたTV番組でアメリカNYで現地の方がカツサンド店をオープンした事が取り上げられていました。
そこに出てきたカツサンドは私の興味を大いに惹く大変引くものでした。それは確かに食パン(の様なパン)でトンカツを挟んでいますがアメリカらしいボリューム感はハンバーガーの様であり、トンカツと一緒に挟んでいる具材や調味料もキャベツやソースではなく独特な物でした。

彼らは日本に来てカツサンドを食した事は無いそうですが自分たちで考えて完成させたそうです。そのカツサンドの味は食べていないので分かりませんが、彼らの前向きさと自由な発想がとても気持ち良く感じ感銘を受けました。それで私も1年前コロナ騒動の当初に考えたり試作していたカツサンドに対する情熱が再燃して、補助金を利用してカツサンド店を作れないか考えました。補助金締切の期日まで2か月を切っている位でしたが、大急ぎが大急ぎで事業計画書を作成し応募しました。これが幸運にも採択されましたので、この補助金のお陰でカツサンドプロジェクトを始める事が出来ました。

もらって嬉しく、見た目も明るくワクワクするカツサンド。食べやすさや包材、食パン作りから魅せるこだわり

私がまず考えたのは、味だけではなく何か見た目も楽しく、ワクワクするカツサンドです。それはあのNYの方々の自由で明るく感じた発想を気に入っていたからです。そして、「カツ」=「勝つ」で縁起の良い響きです。大切な試験の前、大切な試合の前、大切な仕事の前などなどに、このカツサンドを食べる、もしくはプレゼントするそんな商品にしたいと思いました。
「もらって嬉しく、見た目も明るくワクワクするカツサンド」というイメージが私の頭の中に出来上がりました。

私自身も色々なカツサンドやパンを食べたり見たりして情報を蓄えていきましたが、今回は外部の方の意見や提案も頂きながら自分や自社では思いもつかないようなアイデアも含めて先入観を捨ててゼロから考えていきました。頂いた意見や提案は「ブリト―」タイプ。「肉まんや餃子ドッグ」タイプ、「チーズハットグ」タイプ、「ロール寿司」タイプの様なアイデアで今までの概念を覆すという気概が感じられ、実際にそれらも試作してみました。しかし私にはどうも結局○○タイプにカツサンドを似せているだけで、カツサンドに対するリスペクトを感じられず受け入れられませんでした。

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当初の試作カツサンドの一例:パンごと揚げたり丸くしたり

NYでのカツサンドの様にその国の文化や食習慣を背景にアレンジされてるのは良いのですが、ではカツサンド発祥オリジナル国の日本の提案としてどうすべきかをさらに考えました。そこで考えたのは日本の仕事の丁寧さ細かさと手で持って食べる時の食べやすさでした。

例えばハンバーガーは見栄えのするボリュームですが実際に食べる時は苦労する事があります。分厚過ぎて口に入りにくかったり、ばらしてナイフとフォークで食べたり。しかし、カツサンドは持つのに程よい大きさで食べやすい。手を汚したりばらして食べる必要が無い。これはおにぎりにも共通しますが、日本の綺麗で機能的で上手にパッケージ化されるという文化の象徴であると考えました。

見た目にも四角い食パンが整然と並んでいる姿は端正で日本らしいと感じました。では、どこで差別化するべきか。既に販売されているものですと肉の厚み、肉の種類(高級なブランド豚を使用など)もしくは牛肉にして高級な和牛サンドなどで差別化されている例が多い様に思いました。ただ私はサンドにした場合に肉の美味しさの違いは通常よりも感じにくくなると思いましたし、高級感が出ますが楽しさや明るさをもっと出したいと思いました。

そこで、私はずっと考えていたアイデアがありました。ちょうど私の友人がパン屋を始めていて、そこで野菜を練り込んだ食パンを作っていました。ビーツ、ほうれん草、ニンジンを細かくしてミキサーで生地に一緒に混ぜて食パンにします。見た目が赤、緑、黄色といった具合にその野菜によって色鮮やかな食パンに仕上がっていました。色味と風味が加わり味も美味しいこの「天然酵母野菜食パン」を使用出来ないかと考えていたのです。ただ、この様なパンはどこのパン屋さんでも作っている訳ではありません。通常カツサンドを作るときは気に入った食パンを仕入れて、自前で揚げたカツと合わせてサンドにするのですが、このパンをどうしても使用したければこの野菜食パンからまずは手作りする必要がありました。食パン作りは未経験でしたし、さらにそれに伴う機器も高額、そしてそれらを設置するスペースも必要になり家賃が高くなる事を意味します。
それでもパン作りに関わる設備をしっかり準備して、野菜食パン作りに関してはその友人から教わって食パンから手作りしてカツサンドにする事にしました。

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見た目にも身体にも良い野菜食パンのみも販売しています

さらに楽しさをもっと表現してより個性的にしたかったので味で自由な遊び心を表現出来たらと思いソースの種類を増やそうと考え最終的に「カレーソース」「タルタルソース」「トマトバジルソース」を加えました。パンの色味が野菜により全粒粉のプレーン含めて鮮やかな4色になりソースの味も4種類になりました。これにより見た目に鮮やかで、食べても4種類のソースによる異なる味が楽しめて、遊び心あるカツサンドになりました。

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野菜食パンとソースで試作の繰り返し

また包材にもこだわりました。これも特注で作る場合は高額になるので市販の物を何十種類も試してその中の気に入った物にしました。結果カツサンドの大きさをその容器に合わせる必要が生じそれは予定よりも商品を大きくしカツも厚みを持たせないといけなくなりコスト増になってしまいましたが、やはり気に入った容器を使用する事を優先してその様にしました。結果としてカツサンドの価格も1380円と少し高くなってしまいましたが、これでも通常の食物販の常識からは大きく外れた高原価率で提供しています。

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紙袋やセットに出来る風呂敷などもこだわって、もらって嬉しいカツサンドへ

出店店舗も厨房面積が予定以上に必要となった為に家賃の坪単価の安い物件を探し、勝どきのかなり裏手の物件を借りる事になりました。当初はもっと人通りも多く観光客も多い場所を希望していたのですが家賃が高く手が出ませんでした。しかし、勝どきという地名は、カツサンド=勝つのコンセプトにもピッタリな地名で私は気に入っています。

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とんかつの富美善(ふみぜん)が“カツサンド”で“勝負”。勝どき「カツとパン」出店までの苦悩と、あまねく人々に届けたいおいしい明日


勝どきの路地裏の分かりにくい場所にお店はあります

伝統と独自性を併せ持つカツサンド。
さらなる進化をもたらす挑戦

こうして出来上がった自信作のカツサンドです。カツサンドについて色々な形を試す中で既存のカツサンドへのリスペクトが芽生え、そのオリジナリティを壊すことなく「もらって嬉しく、見た目も明るくワクワクするカツサンド」をと考えて来ました。その為にパンを自前で作る、こだわりの容器を使用してカツサンドをそれに合わせる、少しでも価格を抑えたかったので高原価率の商品になるなどで、残念ながら採算が取りにくい商品になってしまっています。そして立地の難しさもあり、まだ当初さもありまだ当初の予想以下の売上であり苦戦中です。

とんかつの富美善(ふみぜん)が“カツサンド”で“勝負”。勝どき「カツとパン」出店までの苦悩と、あまねく人々に届けたいおいしい明日


「勝どき かつサンド」 1380円税込

しかしながら、私はこだわりぬいたカツサンドに自信を持っています。もっと多くの方に召し上がっていただきたいです。そして、まだ私の中では改良したい部分が実は幾つかありますのでまだまだ進化中です。また現在海外に3店舗ありますが、海外の方にもこのカツサンドを食べて頂き喜んで頂けたら嬉しいです。まだ挑戦は始まったばかり。コロナ騒動で倒産を覚悟しましたが今こうやってこだわりのカツサンドを作れている事に感謝して、あのNYのカツサンド屋さんの様に前向きに明るく挑戦していきます!

カツトパン店舗URL

https://www.natural-fs.com/katsutopan/

テイクアウト商品事前注文ページ

https://katutopankachidoki.square.site/#items

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