コメダグループのお客様相談室には、日々様々なご指摘・ご要望・ご感想などが集まってきます。ひとつひとつのお声をお店に共有し、よりお客様の心に寄り添うおもてなしにつなげることで、コメダブランドのおもてなしを進化してきました。
そんな中で、「クレーム対応で課題をつぶすだけではなく、モチベーションを上げる方向に舵を切る」という発想から生まれた冊子が、「感謝・お褒めの言葉集」です。お客様相談室に日々寄せられるお客様からのお声のうち、感謝のお声やお褒めの言葉だけを集め冊子にして、年1回、全社員と、フランチャイズを含めた全ブランド・全店舗に配っています。発行は今年で4年目。冊子の制作を担当する小川さんに、企画の背景や込めた思い、そして社内外への広がりについて話を聞きました。
■ありがとうを自分事にする冊子
――この冊子は、今年で4年目を迎えますが、初めはどういった経緯で作られたんですか?
小川:良い事例をまとめて冊子にする話が出たとき、どうせやるならエンゲージメントを上げたいなと思ったんです。好事例をガンガン教え込んでいく方向ではなく、読んでみたら気持ちが癒されるようなものにしたいなって。
――どんな基準で選んでいるのですか。
美談! というものじゃなく、自分でもできそうなことで、日常のちょっとした気配りや勇気・優しさが伝わるエピソードであることを重要視しています。それと、だれもがひとつは自分の仕事と重なるエピソードがあるように、というのを意識しています。接客、キッチン、清掃など、偏りがなく、どの職務でもお褒めにつながることが分かるように。
また、ちょっと機転を利かせた対応とか、臨機応変な対応は載せるようにしています。マニュアルのないコメダブランドならではの強みだと思うので。
――毎年少しずつ内容が変えているんですよね。
小川:昨年から、より「やってみよう」と思えるように、再現性を重視したGoodポイントも載せています。今年は新たに、診断テストの掲載も始めました。接客に携わるスタッフだけでなくみんな良いポイントや活かすべき才能があることを感じてほしくて。違った良さがある方々が一緒に働いているから良いチーム・良いお店が作られていることを伝えたいなと思っています。
■ お褒めの言葉は、エンゲージメントの源
――お褒めやご指摘とずっと向き合ってきて、売上やお店の状況との関係など見えてきたものはありますか?
小川:冊子の有無にかかわらず、お客様からお客様相談室に入る「お褒めの言葉」の数と従業員満足度(ES)は相関があることが分かっています。ESが高いお店は売上や客数にもプラスの相関がみられていますし、ES調査時には褒められた時がいちばん嬉しいと答えるスタッフさんも多いです。
接客では、いかにお店の中でお客様の「ありがとう」を引き出せるかが大事。笑顔で接すれば自然と返ってくるものですが、スタッフが精神的に健康じゃないと、それもできない。
――「ありがとう」でほっこり心が温まるような読後感です。
小川:なんかちょっとコメダ珈琲店っていいなって思うでしょ笑。一瞬の気晴らしでも、心が少し軽くなるなら、それだけで価値があると思っています。はじめは響かなくても、周りの空気に引っ張られて能動的に変わっていきます。確実にES向上、おもてなしの底上げにもつながっていく。
――冊子で褒める、ということも良さの一つでしょうか。
小川:形として残ることは大きいです。オーナー様のプライドにもつながるし、素晴らしいお店には、見学に行きたいと考えるオーナー様もいらっしゃるのではないでしょうか。普段の指導では触れづらいイメージの部分を、会社として残る形で伝える。それが文化を育てることにつながると思っています。
■ 今後の展望
――今後はどう進めていくのでしょうか。
小川:ESとの関連付けを深めながら、地道に発信を続けたいと考えています。一人でも多くの人が読んで、ハートフルな気持ちになる瞬間を体験してほしいことはこれからも変わりません。それがお客様のくつろぎにつながっていくと信じています。これからも、地道に“くつろぎ”を広げていきます。
人だからこそできるおもてなし――その原点を守るために、働く人の心を“ありがとう”で満たし、次の“ありがとう”へつなげていく。私たちはこの循環を大事にし、より良いくつろぎ体験を創り続けます。