33年間続けてきた「当たり前」のキャンペーンに触れた投稿が、1,100万の共感を呼ぶムーブメントに
2025年5月、SNS上で日比谷花壇に関する一つの投稿が、記録的な反響を呼びました。×
総インプレッション数は、実に1,100万回以上。きっかけは、母の日に合わせて小学生以下のお子様に88円でカーネーションを販売する日比谷花壇のキャンペーンにおいて、わが子からカーネーションを贈られた一人の母親がその喜びを綴った投稿でした。
この驚異的な反響は、日比谷花壇社内でも大きな驚きを持って受け止められました。広報担当の中村は、「社内では『今年も”あれ”の時期だね』で通じるほど定番で、毎年当たり前に行っている取り組みなんです。」と振り返ります。1993年から33年間、変わらぬ姿勢で粛々と続けてきたこのキャンペーンが、なぜ「今」になってこれほどまでに人々の心を動かしたのでしょうか。
小さなお子さんにも、自分の力で花を贈り感謝を伝えられるきっかけをつくりたい。日比谷花壇の理念から生まれたキャンペーン
「88円」という価格には、33年前の開始当初から変わらない確固たる信念が込められています。それは、お母さん(ハハ)にかけた語呂合わせであると同時に、自分でお金を稼ぐことのできない小さなお子さんでも、自分の力で花を贈り感謝の気持ちを伝えられるきっかけを作ることでした。自分の力で成し遂げる体験価値にも重きを置いているため、販売方法も他の花とは異なり子ども目線の低い位置に陳列すること、特別な購入ルートをつくらず大人と同じようにレジに並ぶことをルールとしています。
店頭では、お父さんに連れられたお子さんだけでなく、兄弟や姉妹だけで連れ立ってお花を買いに来る姿も目にします。印象的なのは、兄弟で1本の花を贈るのではなく、それぞれが自分のお小遣いで「一人1本ずつ」買っていく光景です。そこには、幼いながらも「自分自身の言葉で、心を込めてお母さんに『ありがとう』を伝えたい」という、一人ひとりの優しい自立心と真っ直ぐな想いが溢れています。
本キャンペーンを開始した1993年は、ショッキングな家族間事件など、悲しいニュースが相次いでいました。こうした社会情勢を受け、日比谷花壇では「身近な人を大切にする文化を再構築したい」という強い想いから、まずは自分を育ててくれた「母」に感謝を伝えることからはじめようと考え生まれたのが、「母の日88円キャンペーン」です。
また、「母」にかけた「88円」という価格設定は、日比谷花壇 日比谷公園本店と同じ日比谷公園内にある松本楼の10円カレーにも強くインスピレーションを受けています。松本楼が食文化を通じて社会貢献をしているように、日比谷花壇は花文化の定着を通じて社会に貢献することを目指して続けてきました。
そんな日比谷花壇の企業理念は、「花とみどりを通じて、真に豊かな社会づくりに貢献する」。この理念を込めたコーポレートメッセージを「すべての明日に、はなやぎを。」として掲げ、さまざまな人の未来に「はなやぎ」=豊かさや希望、喜び、あたたかみ、安心、ウェルネスなどを与えられる存在であるよう、各事業に取り組んでいます。
「長く日比谷花壇にいる社員が、口癖のように『私たちは花を贈っているんじゃない、気持ちを贈っているんだ』と言っています。母の日に日比谷花壇から出荷される花は、およそ50万件。こうした数も「50万件の花を届けているんじゃない、50万件の『ありがとう』を届けているんだ」というのが、日比谷花壇の共通認識です。」(中村)
物価高・人手不足―それでも変えなかった「88円」。「モノ」から「コト」へと移り変わる人々の価値観。
強い信念とともに設定した「88円」というカーネーションの価格。しかし、この想いを現在に至るまで貫くのは決して平坦な道ではありませんでした。総務省の消費者物価指数によると、ここ30年ほどで物価は約1~2割程度上昇し、カーネーション(切り花)においてもそれは例外ではありません。また、花屋として最大の繁忙期といえる母の日での現場への負荷、人手不足の課題も増大しました。その際、社内で徹底的に話し合われたのは「日比谷花壇にとっての母の日とは何か」という問いでした。花屋業界にとって、母の日は「1年で1番花が売れるとき」といっても過言ではなく、それは日比谷花壇にとっても同様です。しかし、それ以上に日比谷花壇にとっては、利益や効率を超えて「花とみどりを通じて、真に豊かな社会づくりに貢献する」という企業理念を体現することが最も大切なのではないか。この結論に至って以降、キャンペーンの見直しが議論にのぼることは二度とありませんでした。
「キャンペーンの取りやめが議論された際に課題として挙げられた『現場への負担』ですが、実は現場にとってキャンペーンのお客様、特にお子さんたちと触れ合う時間は大きな癒やしであり、楽しみでもありました。長年店舗スタッフとして本キャンペーンにかかわってきた私自身、この取り組みは店員にとっても利益や効率を優先するのではなく、自分たちが何のために存在しているのかという原点に立ち返るきっかけになっていたと感じています。」(青木)
一方、33年前と現在では、社会情勢や世の中の価値観は大きく変化しています。かつてはモノを所有することによるステータスや、便利なモノに囲まれた丁寧で豊かな暮らしを整えることが「幸福の象徴」とされてきました。
しかし、モノや情報があふれ、それにより人々が無意識のうちに他者と比較して疲弊したり選択することの難しさを感じるようになった現代においては、もはやモノの所有だけで幸福になれるわけではありません 。今、人々が価値を見出しているのは、単なる商品としての「モノ」ではなく、そこに付随する意味や文脈への共感といった「コト」や「イミ」の重みです 。物質的な豊かさよりも「心の健康(ウェルビーイング)」を保つことのほうが、むしろ難しい時代になりました。
子どもが自分の力でカーネーションを贈り感謝を伝えること。
今回、SNS上で寄せられた「自分のお小遣いで花を買うという成功体験を子供に与えている」という称賛の声は、単なる価格への評価ではないと受け取っています 。子どもたちが大人に混じって列に並び、自分の意思で花を選び、会計をするという体験そのものが、今の時代において極めて価値のあるものだと再認識された結果です。33年間、日比谷花壇が変えずに守り続けてきた88円の体験という種が、2025年にウェルビーイングという土壌でようやく大きな共感として咲き誇ったと言えます。
日比谷花壇が目指す「花×ウェルビーイング」な価値の創造。
花はもはや単なる飾りではなく、心に安らぎを与え、人を前向きにさせるための現代の必需品(ウェルビーイング)へとその役割を進化させています。特別なシーンで気持ちを伝えるためのものであることは今までと変わりません。しかし、デジタルな情報に囲まれ、疲弊した日常の中に一輪の花があることで、呼吸が整い、心豊かに暮らせる人を一人でも増やしたい。
日比谷花壇が花の価値を再定義しようとしているキーワードは、「心のビタミン」です。ビタミンが体内では作れず外から摂らなければ健康を保てないように、花がもたらす癒やしやリラックス効果もまた、現代人が心豊かに生きていくために外から取り入れるべき必須の栄養素であるという考え方です。
この考え方の根底には、日比谷花壇が戦後復興の象徴として誕生した歴史があります。
1,100万インプレッションを記録した今回の一連の出来事は、日比谷花壇にとって自社の社会的存在意義をあらためて胸に刻むきっかけとなりました。時代が移り変わり、母親がメインだった子育てに父親も当事者として関わるようになり、10年前からは「父の日」にも「パパ(88)」にかけたキャンペーンを開始するなど、その想いは柔軟に形を変えながら広がっています。
また、「コト」や「イミ」を重視する観点で、近年は環境に配慮した事業活動にも注力しています。国産の花材商品の拡充によるカーボンフットプリント削減や、プラスチックの使用を削減したサステナブルな商品開発を推進しています。お客様が環境負荷を気にすることなく、安心して日比谷花壇の商品を手に取れること、そしてその選択が持続可能な社会への貢献につながることを目指しています。
【花き業界初】日比谷花壇が環境大臣より「エコ・ファースト企業」に認定。2050年ネットゼロ、生花国産シェア80%達成など、持続可能な花文化の創造を約束。PR TIMES×国産花材商品を大幅拡充、産地のこだわりと想いを届ける母の日ギフトの予約販売を日比谷花壇オンラインショップで開始。
「大切な人に感謝を伝える」という、人間にとって最も基本的で温かな文化であり、心の健康や幸福を満たすアクションを、次世代へと継承していくこと。33年間、利益や効率を考えずどんなに時代が変わろうとも「88円」という数字に込めてきた日比谷花壇の信念が、いまや社会にとって必要不可欠とされる考え方になりました。特別なシーンはもちろんのこと、何気ない日常生活の中でも、花を通じて人と人の気持ちを繋ぎ続ける。日比谷花壇の挑戦は、これからも「すべての明日に、はなやぎを。」届けるために続いていきます。