パナソニックグループは、グループとして世界最大規模(※)の新たな物流拠点である「国内物流オペレーションズセンター関西第一拠点」を京都府京田辺市に開設、8月から本格稼働を開始している。同拠点は、大阪府四條畷市をはじめ、関西地域に点在していた九つの物流倉庫を統合し、事業会社ごとに異なっていた物流システムを一本化。
並行して配送ルートの削減、倉庫内業務の標準化、そしてデジタル技術の活用を通じて、物流の効率性と生産性の向上を目指す。グループの物流を担うパナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社(以下、PEX)の物流部門による物流改革を起点とし、グローバル競争力強化を加速させる現場の挑戦に迫る。


※床面積が当社グループ世界最大。2025年9月4日時点。当社調べ。

国内物流オペレーションズセンター関西第一拠点

延床面積約11万m2、住宅会社・工事店など電材ルートで取り扱う1万2,000品番以上を扱うグループ最大の物流拠点。年間220万才(※)(約6万立方メートル)超の保管能力を備える。倉庫集約と併せて配送ルートを10%削減し、移動棚の活用により保管効率を27%高めた。さらに、庫内業務の標準化や携帯情報端末を活用したペーパーレス運用の導入によって業務生産性を26%向上させるなど、効率化と品質改善を同時に進めている。

※「才」は物流業界で使われる体積の単位で、1才=約0.027立方メートル

物流は企業の信頼を結ぶ「最後の接点」 改革の必然とその背景



パナソニックグループの主要拠点が集積する関西圏では、これまで中小規模の物流倉庫が9拠点に分散して存在。主に住宅会社・工事店などが取り扱う電材ルートの商品が保管されている。顧客にあたる工務店や販売代理店が注文した際、商品ごとに異なる拠点から配送されるケースも多く、顧客にとっては複数回の受け取りに対応いただくなどの効率面に課題があった。また、荷主であるパナソニック側も配送回数の増加に伴い、コストや環境負荷の面で多くの運用上の課題を抱えていた。
この状況を打開すべく、「国内物流革新プロジェクト」を2020年から始動。在庫拠点の統合と物流最適化を目指し、分散する関西圏の物流倉庫を統合。国内初のグループ共用倉庫として、関西エリアの中核物流拠点となる京田辺拠点を新たに開設した。これにより、パナソニックグループの競争力強化を図るとともに、日本の物流が抱える課題の解決にも貢献する。

届ける責任が改革を動かす――事業競争力強化へ 物流の最前線、「京田辺拠点」の挑戦

京田辺拠点は、複数の高速道路が集まるアクセスの良い地域で、物流広域配送にも対応しやすい絶好環境にある

このプロジェクトをけん引したPEX執行役員で物流担当(兼)物流本部長の安藤 健太郎(あんどう けんたろう)は、「今回の取り組みは、国内の物流業務を標準化して、歴史上初のグループ統合物流インフラ構築を目指す『物流改革』」と語る。また、その背景について「コロナ禍や物流2024年問題(※)などは社会的にも物流の課題が広く認知されたタイミングですが、パナソニックグループの物流部門では、そうした課題が顕在化する前から『グループインフラ統合による効率化』を明確な方針に掲げて改革を主導してきました」と強調する。

※トラックドライバーの労働時間規制強化による人手不足や配送遅延の懸念

物流は製造業における最終工程であり、商品をお客様の元へ確実に届けることで、信頼を築く大切な接点。今回の改革を支えたのは、「物流は事業の大動脈。止めることは許されない」という現場社員たちの使命感だった。特に最前線でお客様に商品をお届けする物流業務の改革は、PEXの物流部門だけで完結できるものではなく、お客様をはじめ、パナソニックグループ内の各事業会社の工場や営業部門、パートナー企業など関係する全ての人々からの理解と協力を得て初めて成し得られる。安藤は「現場社員が知恵を絞り、粘り強く課題に向き合い続けてきました。この姿勢が部門の垣根を越えた協力体制を生み出し、改革を前へと動かす大きな力になりました」と話す。

拠点再編、現場からの挑戦――物流改革の三つの軸

止めずに動かす――保管商品移動の舞台裏

新拠点の立ち上げにあたり、現場では三つの挑戦が同時に走り出していた――保管商品の移動、輸配送ルートの最適化、そしてオフィス設計の見直し。いずれも拠点の機能を根本から問い直す大がかりなプロジェクトだった。
中でも最大の難所は保管商品の移動。九つの拠点に分散していた約1万2,000品番、300万点にも及ぶ保管商品を、お客様への配送を止めることなく、安全かつ効率的に京田辺拠点に移動させる必要があった。「配車組み」と呼ばれるトラックの配送計画に合わせ、商品の移動順や積載方法を緻密に調整する作業が続いた。

プロジェクトで保管商品移動のリーダーを担ったのが、三谷 かよ(みたに かよ)だ。入社以来一貫して物流に携わり、拠点の立ち上げを数回経験してきたが、当初は効率的な積載方法に頭を悩ませた。「一度に一つの商品だけをトラックで運べるなら容易ですが、それでは移動中にお客様から注文があったときに即座に出荷できなくなる恐れがある。どの商品をどれだけ、どう組み合わせて積むか、その見極めが肝要でした」

届ける責任が改革を動かす――事業競争力強化へ 物流の最前線、「京田辺拠点」の挑戦


パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 物流本部DX企画室 兼 国内物流革新プロジェクト三谷 かよ(みたに かよ)

システムでいかに全ての商品の個数を管理できても、個々の商品の詳細なサイズや形状までは把握できない。まずは現物を見て積載のイメージをつかむため、各拠点を地道に回ることから始めた。1台のトラックに積み込む商品は、まるで立体パズルのよう。特に今回の移動対象商品の多くを占めるパナソニック株式会社 エレクトリックワークス社の照明商品は品目数が1万品番にも及び、なおかつ形状も千差万別。積載の工夫がカギを握った。パレットを積み重ねて運べない商品も一部あり、段数に分ける器具を導入するなど、現場を分析して得られた知見を随所に生かした。


山場だったと振り返るのが、今年8月の夏季休暇中に行った保管商品の「大移動」。これまで以上にトラックの台数を増やし、既存の各拠点から京田辺拠点に向けて集中的に移送した。事前に綿密な配車計画を練り上げ、万全の体制で臨んだはずだった。しかし、実際に配送が動き出すと、細かく指定された品番が積載作業の足かせとなり、予定していたタイムスケジュールに次々とほころびが生じた。それでも、三谷をはじめとするメンバーは常に冷静だった。状況を的確に見極め、即座に配車計画を再構築。夏季休暇明けからのお客様への配送を止めることなく、見事に難局を乗り越えた。三谷をはじめ、物流の現場を知り尽くしたメンバーの判断力と対応力、まさにその真価が問われた瞬間だった。現在、商品の移動は全体の65%まで達成し、残りは11月までに完了予定だという。今回の移動では、現場の工夫だけでなく、各事業部の連携も重要なカギとなった。商品を動かすには、事業部との対話が欠かせません。いつ動かすか、どこから出荷するか――接点を持つことで協力が生まれ、本当の意味で互いの呼吸が合ってます。
DXを推進する立場となった今だからこそ、現場で得られた経験を生かすチャンス。今後、デジタル技術を活用して物流業務をもっと効率化していきたい」とさらなる改善を見据えている。

標準化と可視化で挑む――配送ルートの最適化

今回、配送ルートと時間帯の大幅な見直しに着手し、これまで早朝に集中していた配送をお客様ごとに三つの配送時間帯に分散。さらにドライバーの負担軽減を図るため従来の夜間不在配送を全て廃止し、朝便へと切り替えた。綿密な計画を立てたものの、実際に運用が本格的に始まると、これまでと違うルート、時間帯の配送により、延着など予期せぬトラブルは次々と発生する。こうした課題解決に奔走したのが、日々の輸配送を管理する責任者の宮前 亮太(みやまえ りょうた)だった。解決の糸口となったのは、保管商品の移動と同様、現状把握だった。

これまでは委託している運送会社のドライバーに任せていた部分が多く、何かトラブルがあっても場当たり的な対処をせざるを得ないことに、もどかしさと課題感を持ち続けてきたという。宮前は「新拠点でPEXに与えられた使命とは、的確かつ迅速なオペレーションのリード。それを達成できなければ、われわれがここにいる価値がないとさえ思っています」と力強いまなざしで話す。その言葉通り、宮前は新拠点に布石を打った。まず着手したのは、デジタル技術を活用した配送の見える化だった。構内1階のスペースには、複数台のディスプレイが設置され、運送状況や構内作業の進捗が常時表示されている。
トラックがいつ到着・出発したかなどのデータを一元管理し、可視化が進んだことで、トラブルの発生頻度が大きく減少した。宮前はこれらのデータを分析しながら、運送会社と日々さらなる業務効率化に当たっている。

届ける責任が改革を動かす――事業競争力強化へ 物流の最前線、「京田辺拠点」の挑戦


パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 物流本部 国内物流オペレーションズセンター 関西第一拠点 輸配送管理課 課長 宮前 亮太(みやまえ りょうた:中央)

宮前はキャリア採用で前職も物流企業だった。だが、パナソニックグループならではの働きがいに魅力を感じているという。「当社は、お客様だけでなく多様なサプライチェーンと関わることができる。たとえ個々の商品は事業会社ごとに分かれていても、物流によって業務を標準化することで、さらなる効率化が図れる。モノを運ぶという仕事には、まだまだ発展の可能性があります」と話す。協力会社を含め、日々数百人が働く物流現場。その理解を深め、数字で語れる力が次の改善を生み出していく。

空間から生まれる一体感――オフィス設計

拠点再編に伴い、オフィス空間の設計も大きく見直した。従来の四条畷拠点は輸配送専用の事務所と他の事務所が棟で分かれており、部署間の連携に課題があった。今回、ワンフロアでのオペレーションに統合されることを契機に、社員のモチベーション向上とコミュニケーション活性化を目的とした空間づくりを目指した。このプロジェクトを主導したのは、若手女性社員を中心としたメンバー。
その1人である小西 加容(こにし かよ)は、什器などの選定から、設計業者との折衝、家具や壁紙の選定まで全工程に関わった。

届ける責任が改革を動かす――事業競争力強化へ 物流の最前線、「京田辺拠点」の挑戦


パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 物流本部 商品国内物流オペレーションズセンター 関西第一拠点 輸配送管理課 小西 加容(こにし かよ:左)

「四條畷の事務所は老朽化も進み、やや暗い印象がありましたので、カラフルな椅子や木目調の素材を取り入れ、開放感と温かみのある空間にしたかったんです。完成後、実際にオフィスを訪れた社員から『明るくなった』『気持ちが上がる』といった驚きや喜びの声をいただき、手応えを感じています」以前は黒一色の古い椅子が並ぶ空間だったが、新旧の什器の組み合わせや配置を工夫し、ドラマにも登場するような今どきのオフィスを意識したデザインに刷新。自然と会話も増え、コミュニケーションの活性化にもつながっているという。

エントランスには、間接照明を配した社名のオブジェやフェイクグリーンを配置し、視覚的な癒やしと重厚な企業ブランドを演出。窓面を最大限に活用した明るい空間設計に加え、モニターを設置するなど、業務効率化にも寄与する設備を整えた。「エントランスは会社の顔ですから、ひと際思い入れを込めて細かく調整を繰り返しました。この空間が社内外の人にとってポジティブな印象を与える場になればと思います」とほほ笑む。新拠点でのスタートにおいて、働く環境の整備は重要な要素の一つ。社員自らが設計に関わることで、空間への愛着が生まれ、組織の一体感も醸成されている。

「京田辺モデル」を世界へ、物流からブランド価値を高める



パナソニックグループが次に挑むのは、グローバル規模での物流改革。国内外の製造・物流を一体で捉え、輸出入や海外拠点との連携を強化することで、サプライチェーン全体の効率化を目指している。その中核にあるのが、先進的な物流のモデルである京田辺拠点だ。2025年秋には国際的な物流標準をグループ内で議論するグローバル会議の開催も予定されており、物流革新の発信地としてますます重要な役割を担う。

届ける責任が改革を動かす――事業競争力強化へ 物流の最前線、「京田辺拠点」の挑戦


来春の稼働に向けて導入作業が進められている自動搬送機。省力化・作業性・安全性の向上を実現する

さらに今後、パナソニック インダストリー株式会社などグループ内の他の事業会社、今回の住宅会社や工事店などの電材ルートとは異なる物流特性を持つ部品・デバイス商品事業をはじめとする国内複数拠点の最適化にも着手し、さらには国際間の連携強化も視野に入れる。「例えば中国で製造した商品を日本のお客様にどれだけ効率よく、シームレスに届けられるか。この問いから逆算してモノの流れを見直すことで、まだまだ改善の余地が広がっていく。輸出入や海外域内物流など全てのグローバル物流を最適化するのが私たちのミッション。京田辺拠点での改革をモデルとして、首都圏や他拠点への展開、さらには国際間の連携強化へと広げていきたい」と安藤は意気込む。

グローバル化に加えて、もう一つ今後の重要な柱と位置付けるのが、標準化だ。例えば商品を運ぶパレット一つをとっても、サイズや素材が異なり、工場名が記載されていれば仕分けや管理の手間が増す。この課題に対し、PEX物流本部が中心となり、グループ共通の「標準パレット」の導入を推進。統一されたサイズ・仕様のパレットを各事業会社に供給することで、どの拠点でも共通に使え、リサイクルも可能に。まさに、物流の現場からグループ全体の標準を創り出す取り組みである。現在は、各製造工場と連携しながら、いかに効率よくパレットを回転させられるか、実証と試行を重ねている段階だ。

こうした京田辺の取り組みが成功モデルとして首都圏や他拠点へと展開され、やがては国境を越えた物流連携へとつながる。そして、届ける責任を果たす物流改革が、事業の変革を支え、社会との信頼を築き、ブランド価値を高めていく。関西から始まったこの挑戦は、パナソニックグループの持続的成長を支える確かな一歩として、今、力強く前進している。

届ける責任が改革を動かす――事業競争力強化へ 物流の最前線、「京田辺拠点」の挑戦


整理整頓された保管商品と当社グループ標準パレットが採用された真新しい構内で

◆パナソニックグループのオウンドコミュニケーションメディア Panasonic Stories

自らの言葉で思いを伝える/『ひと』を通じてパナソニックグループの姿を届ける。

グループの考え方や取り組み、挑戦をタイムリーかつ分かりやすくお伝えします。

※今回の取り組みはこちらでも紹介しています

https://news.panasonic.com/jp/stories/17959
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