「ベッドを変えたら、また食べられるようになりました!」

──自立支援と早期離床への変わらぬ想い



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▲ 社是(左)/ 関西SS 代表取締役 増本 忠(右)



医療・介護を取り巻く環境にもっと笑顔を──シーホネンス 70年の歩み・創業の志と常に挑戦する開発型メーカーの系譜


▲ 代表取締役社長 増本龍樹(左)  /  取締役会長 増本忠次(右)

医療・介護用ベッドメーカー シーホネンスは、1957年の設立から70年目を迎えました。

医療と介護を取り巻く環境にもっと笑顔を増やしたいという想いのもと、早期離床(回復・自立)を願って誠実・正直な製品づくりに取り組んできた70年間。

今回は、そんなシーホネンスの歩みを、創業の歩みを知る取締役会長・増本忠次と、現在の事業を率いる代表取締役社長・増本龍樹へのインタビューを通じて振り返ります。



「まっすぐに立つ」――シーホネンスの原点と思い

――まず、シーホネンスの歩みの原点について教えてください。

当社は、1937年の創業から数えれば実に90年目にあたります。

会社としての設立は1957年の「株式会社関西製作所」からで、公には設立からの70年を掲げるようにしています。ただ、最初から今のような医療・介護用ベッドの会社だったわけではありません。

当時手がけていたのは、スプリング。いわゆるバネ。自転車のサドルや椅子などに使われるものです。ただ当社は、スプリングだけでは先が見えず、苦しい状態が続いていました。

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▲ スプリング製造部(自動機)

転機になったのは1975年前後。

大阪市からコンサルが派遣され、2ヵ年の指導を受けることになった。

そこで投げかけられたのが、「これからの市場は、レジャーと医療と健康、あと何か」という問いでした。その言葉をきっかけに、自分たちに何ができるのかを改めて見つめ直した。

当社には鉄工部があり、大阪万博EXPO'70で会場設営現場の簡易宿舎向けベッドなどを手がけた経験があった。

金型の技術もある。その技術資産を活かせば、医療用ベッドは十分に勝負できる分野やと判断した。

それから、当時の医療費は約6.5兆円規模、事業として十分に大きい市場だった。仮にその1%でも担えれば――そんな計算もしたんです。医療費は今や約48兆円規模にまで拡大したから、いま振り返っても間違いではなかったと感じるね。

ともかく、当時そういった判断から、私たちは医療の分野で独自の価値を生み出そうと、医療向けベッド事業に参入したんです。

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▲ 取締役会長 増本忠次

ただ、参入当初は簡単ではありませんでした。

当時は、競合のコピー品を売りつなぐような状態で、独自性は乏しく、価格勝負から抜け出せませんでした。そこで私は、毎年ヨーロッパに足を運んだ。

ベッド文化そのものに学び、最先端の技術と機能を取り入れながら、現場の課題を自分たちにしかできない開発とものづくりで解決する方向へと、進んでいったんです。

今も続く「課題をこちらから聞きに行き、開発で応える」というシーホネンスの基本姿勢は、ここから育っていったんやと思います。

今の社名である「シーホネンス」を、ブランドとして商標登録したのもその頃。



これを社名としたのは2001年です。

「シーホネンス」は、「Seahorse(タツノオトシゴ)」と「honest(誠実・正直)」を掛け合わせた名前。

タツノオトシゴとは、水中をまっすぐに立って泳ぐ魚やな。

その姿に、私たちの原点で、まっすぐ立ってこそ性能を発揮するスプリングのときと同じように、誠実・正直に止むことなく開発・研究を続けていくという思いを重ねた。

うちの利用者さまには、私らの作るベッドから一日も早く立ち上がって、離床(回復・自立)していただきたい。

ものづくりを通じた社会に対する私たちの約束を、社名にしたんです。

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▲ このシンボルキャラクターは社員がデザインしたもの。

カタログ・パンフレットや営業車などに広く使われている。

――医療用ベッド市場への参入は、簡単ではなかったのではないでしょうか。

大変でした。当時は大手メーカーが市場の大半を占めていて、私たちなんて、名前すら知られていない。心無いことも言われたりもした。

でも待っていても選ばれない。

それで「まずは知ってもらわなあかん」と考えて、1982年には大型バスの車内にベッドを並べた特注の「日本初の移動ショールームカー」をつくって、沖縄以外の全国の病院を回ったんです。

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▲ 社名と商品の認知度アップのための奇抜な作戦。

屋根に社名を大書きし、病棟から見下ろしても目立つようにした。



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▲ バスの車内に並んだベッド。

後方にもドアを設けたオーダーメイド設計。



今振り返ると大胆ですが、あの頃はとにかく必死でした。

現場へ行って、医師や看護師の方、事務の方の声まで聞いて、困りごとを持ち帰る。その積み重ねで少しずつ市場を広げていきました。

私たちは昔から、現場の些細な困りごとを見つけて、製品に反映することを大事にしてきた会社なんです。手間はかかるけど、患者さんにも看護師さんにも喜んでいただけるベッドを提供することが、うちの使命やからね。

「生活の場」を支える難しさが、介護ベッドを育てた

――1992年には在宅介護向けベッド事業にも参入されました。

医療と介護は、似ているようで違います。
介護は生活の場です。

利用者さまのQOL(Quality of Life)、介助する方のしやすさ、ご家族の安心、その全部を考えないといけない。

だから、より多様な声に向き合う必要がありました。

でも、それは当社に合っていたと思います。現場で聞いた声をそのまま製品づくりに返す。先発メーカーと同じことをするのではなく、自分たちなりの特色を出していく。

その姿勢が、後の製品開発にもつながっています。

私たちはずっと、「笑顔」を増やすこと、お役に立って喜ばれることを当社の社会的責任だと考えてきました。お客さまも、お取引先も、社員も。関わる人に少しでも笑顔が増えるように。その考え方が、これまでの会社の空気をつくってきたのだと思います。

「兄貴、誤嚥性肺炎が原因だよ」――その弟のひと言が心を動かした

――その歩みは、現在のEmi笑(エミ)やWRXシリーズの開発にどうつながっていくのでしょうか。現社長に伺います。


きっかけは、2011年に歯科医である弟から言われたひと言でした。

「兄貴、高齢者の発熱の多くは、誤嚥性肺炎が原因だよ。」

その言葉が、ずっと頭から離れなかったんです。

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▲ 取締役社長 増本龍樹

そこから病院や高齢者施設に話を聞きに行くと、現場では、誤嚥と肺炎の関係にいち早く注目し、クッションなどを使って姿勢形成や保持に取り組んでいました。ただ、誤嚥を防ぐために必要な姿勢が分かっていても、より安全安楽に保持することにとても苦労されていました。誰でも、簡単に、再現できる仕組みが、現場にはなかった。

さらに文献を調べる中で、頸部前屈が誤嚥予防につながるという知見に出会いました。そこで思ったんです。

「正しい姿勢を、ベッドそのもので再現できたら、医療・介護の現場にもっと貢献できるのではないか」と。

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▲ 頸部伸展位(左) /  頸部前屈位(右)

頸部前屈位(右)は食塊の通路が広がり、嚥下反射が起こりやすく誤嚥しにくい



――そこから製品化まで、どのような道のりだったのでしょうか。

着想から約3年後の2014年、在宅介護用ベッドとして手動ヘッドレスト機能を搭載した「和夢 彩(なごむ さい)」が生まれました。医療・施設向けベッドにおいても2015年にAXシリーズ、翌2016年にハイエンドモデルで電動ヘッドレスト搭載のSXシリーズと、ヘッドレストを標準搭載したベッドを業界で初めて発売しました。

それ以降、当社の病院・施設・介護ベッドは電動ヘッドレストが標準装備です。



「和夢 彩(なごむ さい)」は多方面からご評価いただき、2015年にグッドデザイン賞を受賞させてもらいました。

私たちの挑戦はそこで終わりませんでした。もっと多くの人が、もっと簡単に使える形にしたい。その先にたどり着いたのが、2020年発売の「Emi笑(エミ)」です。

Emi笑(エミ)では、電動で、しかも1°刻みで頭頸部の角度を調整できます。業界最大の50°まで動かせることで、適切な頸部前屈姿勢を再現しやすくなりました。さらに、スイングバック機能や脚上げ機能など、快適な座位を安定して保つための工夫を積み重ねています。

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▲ 電動ヘッドレスト機能搭載ベッド Emi笑(エミ)

使う人、ケアする人にもお役に立つよう、あらゆる機能・機構を磨き上げて開発したEmi笑(エミ)の性能を反映し、2024年に医療・施設用ベッドでもフラッグシップモデルとしてWRXシリーズを上市しています。

私たちが追い求めてきたのは、単なる機能ではありません。「安全で快適な姿勢」を、誰でも簡単に再現できること。 それが、早期離床につながり、食事や会話、リハビリへの意欲につながり、その人らしい時間を取り戻す力になると信じています。

「ベッドを変えたら、また食べられるようになりました!」早期離床への変わらぬ思い



――開発者として、印象に残っている瞬間はありますか。

あります。

「食事介助を嫌がっていた夫が、自力でベッド上で食事ができるようになった」

「夜間のむせが落ち着いて、熟睡できるようになり、散歩に行けるほど体力が回復した」

そんなお喜びのお声が、会社に届いたときです。

経営者として、また開発者としても、これ以上うれしいことはありません。

製品の先にいるのは、一人ひとりの暮らしです。そんな生活の場を想像し、ベッド本体だけでなく、「笑(エミ)テーブル」や「笑(エミ)フットレスト」など、笑(エミ)シリーズとして周辺製品も広げてきました。

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▲ Emi笑(エミ)・笑(エミ)シリーズ の開発経緯を語る

多忙な現場でも誰でも簡単に使えることにこだわり続けているのは、

「自立」と「早期離床」、そして周りの人々の「負担軽減」への変わらぬ願いが根底にあるからです。

早期離床には、「快適な座位」を安定して保持することが不可欠。

2021年には、厚労省より自立促進、重度化防止に向けて「日中、出来る限り離床を促し座位で過ごす時間を増やすことを期待する」という発表がありました。

「快適な座位」が少しでも長く「安定保持」出来る事で、ベッド上での食事やリハビリに向かう「やる気」が維持でき、好循環に繋がっていくと信じています。

そのためには、複数製品でのアプローチが必要。「ADL改善・QOL向上・離床促進」に繋がる製品開発を通じて皆さんを笑顔にするために のために、日々邁進しています。

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▲ 足底を支え、より姿勢を安定させる「笑(エミ)フットレスト」

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▲ 上肢をサポートし上体を安定させることができる「笑(エミ)テーブル」

70年の先へ。もっともっと笑顔を広げるために

――最後に、これから先のシーホネンスについて聞かせてください。

これからも「笑顔でお役に立つメーカー シーホネンス」として、

皆さまと一緒に医療・介護を取り巻く環境にもっともっと笑顔を広げていきたいと思っています。

70年の歴史は、過去の実績ではなく、これから先の責任でもあります。

現場の声に学び、止むことなく開発・研究を続けていく。

2023年には新工場も竣工し生産能力も強化しています。これからも成長のための投資は惜しみません。

そして、製品の利用者だけでなく、ご家族を始めとする周りの方々にも貢献できる製品づくりを追求する。

その積み重ねで、次の時代の笑顔をつくっていきます。

これからも変わらぬご支援を、どうぞよろしくお願い申し上げます。

(社長・増本 龍樹)

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人が健康で安心して暮らせる社会づくりに、ものづくりで貢献していく。

それが私たちの役目です。時代が変わっても、誠実な姿勢で。これからも、やることは変わりません。

私が常日頃から大切にしているのは、「感謝」・「礼儀」・「思いやり」。

いただいた役割をしっかり果たしながら、常に「ありがとう」の気持ちを持ち続けることを何よりも大切にしています。

令和6年秋の叙勲にて「旭日双光章」を賜りましたことは、私個人に対してではなく、シーホネンスという会社、そしてこれまで支えてくださったすべての方々に対して頂いたものだと受け止めております。歴代の社員、今を支える社員とそのご家族、そして長年にわたりお付き合いいただいているお客様、お取引先・協力会社の皆様、すべての方々へ、心より感謝申し上げます。

これからも、医療・介護に関わる皆様の一人でも多くの方を笑顔にするという大きな役割がある限り、何歳になっても感謝の気持ちを忘れず、誠実に邁進してまいります。

これからも変わらぬご厚誼を賜りますよう、お願い申し上げます。

(会長・増本 忠次)

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▲令和6年秋の叙勲において「旭日双光章」を受章

――貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

<会社概要>

社名:シーホネンス株式会社

英名:SEAHONENCE, INC.

所在地:〒537-0001 大阪府大阪市東成区深江北三丁目10番17号

事業内容:

医療・介護施設用 電動ベッドの製造、販売

在宅介護用 電動ベッドの製造、販売

移乗用リフトの施工・販売

取引先:

国立病院機構・大学病院・官公立病院・一般病院・介護老人保健施設・介護老人福祉施設・老人ホームおよび、医療機器卸業者・医科器械店・介護用品取扱店

URL:https://seahonence.co.jp

公式Instagram :https://www.instagram.com/seahonence_official

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▲東大阪工場



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▲東大阪工場 北東側

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▲本社ビル

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