国産×環境にやさしいモノづくりへの徹底的なこだわり。サーフィンのマチ湘南で生まれた「湘南ビーサン」誕生秘話
2024年11月、日本で初めて地球に優しい生分解性国産ビーチサンダルの開発に成功した株式会社まちプロ。
販売開始直後より、「環境に配慮したビーチサンダルを提供したい」と考える企業からの問い合わせも多く、地元湘南を中心に広がりつつある「湘南ビーサン」。そんな「湘南ビーサン」の誕生秘話やモノづくりへのこだわりについて、代表の大槻さんに話を聞きました。

<代表取締役社長 大槻 洋>
環境への意識が芽生えた原点は子ども時代に
――まちプロは創業当初からビーチサンダル作りを行ってきたわけではないようですが、なぜ環境にやさしいビーチサンダルを作ろうと思ったのか、大槻さんの経歴も踏まえて教えてください。
振り返って考えてみると、私が自然や環境に関心を持った原点は子ども時代にあります。父が環境アセスメント※の仕事をしていて、小さいころから連れまわされていたんですよ。水産試験場など、連れまわされる先が遊び場という子ども時代を送りました。生まれ育ったのが、自然環境が観光資源である湘南ということも加わり、自然と環境への意識を持つようになっていったのだと思います。
※大規模な開発事業を行う前に環境への影響を調査、予測、評価し、環境への悪影響を押さえた事業計画を練ること
成長するにつれ自分でもサーフィンをするようになり、シーズン中に砂浜にビーチサンダルがずらりと並んでいる景色は私にとってなじみあるものでした。湘南の人たちには、環境資源であり、自分たちの暮らすマチである湘南の海をきれいにしようという意識が強く、ビーチクリーンなどもよく行われていました。
最初の勤め先は役所で、その中で4年ほど環境課にいましたが、自然が好きで花に興味があったことから、花屋として独立しました。しかし、サーフィンで大けがをし、仕入れに行けなくなり休業。
懸命に仕事に取り組んだ結果、どんどん昇進することに。でも、私はどうにも昇進が嫌で(笑)。そこで再び独立し、自分で商品を仕入れて売ることにしたんです。そのときに決めたことが、ただ品物を集めてくるのではなく、環境に意識を向けて作られたものを扱うこと。木製のもの、紙製のものなど循環するECOな素材のものを中心に扱うことにしました。
――では、当初はビーチサンダルの扱いはなかったんですね。
ええ。ビーチサンダルはプラスチックの塊で、環境に決して良いものではないと思っていました。
そんなあるとき、出向いた展示会で「生分解性」の薬に目を留めました。
ただ、実は何も真新しい薬ではなかったんです。薬自体は30年ほど前からあり、海外では当たり前のように使われているものだったんですよ。海外では個人の環境への意識が日本よりも高いため、オーストラリアでは、サーファーたちの運動を機に生分解性のビーチサンダルが開発、販売されていると知りました。
なぜ日本には生分解性のビーチサンダルがないんだろうと思いましたね。サーフィンをしていると、波打ち際に置いていたサンダルがいつの間にか流されてしまうなんてこともあり、海洋プラスチックごみの問題は切っても切り離せないものです。少しでも環境負荷を下げられるものがあるなら、そうしたものを使っていくべきでしょう。
私は一年のうち、冬場以外はビーチサンダルで過ごすほどのヘビーユーザーでもあります。誰も日本で生分解性のビーチサンダルを作っていないなら、自分で作ってみよう。これが試作を始めるスタートでした。
原価は度外視し、環境にやさしい国産のモノづくりに振り切れ。
徹底的にこだわった商品開発

――取り組みを始めてみて、なぜ日本製の生分解性のビーチサンダルがなかったのか、理由は見えてきたのでしょうか。
そもそも、国内でビーチサンダルを作っている会社がすでに片手に収まるほどしかないことはご存知でしょうか。さらに、現在ではそんな状態ではあるものの、実はビーチサンダルは日本発祥のものであることも知らない方が多いのではないかと思います。
なぜ、国内メーカーがこんなに少なくなってしまったのか。理由のひとつが、安い海外製品の台頭です。ビーチサンダルの製造会社が多く集まっていた関西の地で阪神淡路大震災が起きたこともダメージとなり、だんだんと数が減っていってしまったのだと聞いています。
「安いものがほしい」というニーズに応えるには、環境配慮よりも利益のことを考えたモノづくりをしなければなりません。先ほどもお話したように、海外の人たちはユーザー自身が環境への意識を持っていますから、ニーズに応える会社側も利益より環境のことを考えたモノづくりをする必要があったのですね。
環境のことを考えたモノづくりは原価がどうしても上がります。さらに国産にこだわるとなると、半端じゃない原価になるんです。ですから、どのビーチサンダル屋さんも手を出せなかったのでしょう。
――そんな事情を知りながらも、挑戦することにしたのはなぜですか?
逆転の発想ですね。「だったら、徹底的に値段は無視して環境に良い国産のモノづくりにこだわろう」と決めたんです。
――開発にあたって大変だったことは何ですか?
ビーチサンダルの作り方自体は、一緒にやっていたビーチサンダル屋さんから教わったこともあり、基本の知識は持っていました。まず大変だったのは、生分解性の薬剤の仕入れですね。心に決めてすぐ行動に移したのですが、海外の企業と契約するまでに1年ほどかかりました。
そこから工場で生分解性の成分を混ぜて試作。これがまた難しかったですね。混ぜる量によって、サンダルのやわらかさが変わってしまうんですよ。硬くなったり、やわらかすぎたり、時には穴が空いたり・・・。ビーチサンダルとして使える良質なゴムのシートに行き着くまで、何度も割合を変えて試しました。
生分解性発砲ゴムシート「SEA Bio-Foam®」ができ、湘南ビーサンが完成したのは2024年11月ごろ。
ホームページなどに掲載している砂漠に置かれたビーチサンダルの写真は、合成ではなく私が自分で行って撮ってきたものなんですよ。砂漠に足跡がつかないよう、必死に腕を伸ばして軽く投げるようにして置き、撮影したなんていう裏話もあります(笑)。よくよく考えてみたら、高温の砂漠をビーチサンダルで歩こうなんていう無謀な人はいないわけですが、湘南以上の気温でも品質に変わりがないことを確かめられたのは良かったなと思います。

<オマーンのワヒバ砂漠にて耐熱試験> <当社商標登録SEA Bio-Foam®>
製品タグ・梱包袋・パッケージングする箱まで「環境にやさしい」ものを選定
――湘南ビーサンは、パッケージにもこだわりがあるんですよね。
ええ。「徹底的にこだわる」と決めたのならば、すべてにこだわらなければなりませんから。価格が上がるのは承知の上で、製品タグはFSC認証紙※にし、タグを付ける紐も生分解性のものにしました。
※森林管理協議会(FSC)が定めた基準に従い、適切に管理された森林の木材を原料とする紙
湘南ビーサンを入れる箱もFSC認証紙のものです。安いものを探せば、今の半分以下のコストになるのですが、一貫してこだわった資材を用い、パートナー企業である海と日本プロジェクト仕様の箱に入れています。箱には環境に配慮されたものであるという文章が書かれているので、手に取ってくださった方は、ぜひご覧ください。
――そもそも、箱がかなり薄いですよね。
そうですね。薄く小さくできれば輸送負荷も軽減できると考えました。また輸送時の品質保持のために真空圧縮して発送しています。
――聞かなければわからないところまでこだわったんですね。
ええ。これを読んでくださった方に知っていただけるとうれしいですね。「わかってくれる人にわかってもらえればいい」の精神で取り組んできました。
――心が折れそうになった瞬間はありましたか?
常に折れていますよ(笑)。天然ゴムは合成ゴムとは違って気温や湿度にも左右されるため、しばらく放置していたら縮んでしまったりするんです。そのため、大量生産して倉庫に置いておき、注文があったら出荷するというやり方が取れないんですよ。品質を守るためには、注文を受けたあとに製造して納品しなければなりません。作り置きができないとなると、販路も狭くなってしまいます。大量ロットで対応できないのは、やはり大変ですね。
――販売開始直後の反応はいかがでしたか?
自社HPに載せてみたはものの、「誰もうちのHPなんて見ないだろう」と思っていたんです。しかし、翌週には大手広告代理店や大手企業から問い合わせをいただきました。プレスリリースを出す前だったため、「一体どこでうちのことを知ってくれたんだろう」と驚きましたね。それを皮切りに、企業からの問い合わせが相次ぎました。ありがたいことだなと思います。
ただ、小売りはなかなか難しいですね。湘南ビーサンは、見た目はふつうのビーチサンダルと大きく変わらないですから、知らない人が見ると、他よりも値段の高いサンダルがあるようにしか見えないわけです。国産品にこだわって扱っているEC販売サイトや、Instagramを見てくださっている方に少しずつ知ってもらえるようになってきて、履いた方の口コミもあり、買ってくださる方が増えてきました。日本にも環境を意識している人たちがちゃんといたことがうれしいですね。
――履いた方から、何かご感想をいただいていますか?
100%、「他のビーチサンダルと違う!」と言ってくださいますね。湘南ビーサンは見た目ではわからない厚さ、クッション性、粘り気のある弾力性があるので、履いてみていただけるとわかる違いがあるんです。
「日本製」「環境にやさしい」「履いたらわかる質の高さ」を、どうにか少しでも多くの人に知っていただけたらと思い、今も挑戦を続けています。

<JAPANの刻印が本物の証> <商品の梱包にも徹底的にこだわる>
今後も日本製×環境にやさしいモノづくりへの挑戦を
――今の状況はいかがですか?
大手アパレルや地元エリアのサーフショップや飲食店経営企業、カーディーラー、水族館など多種多様な企業様とお打ち合わせさせていただいています。湘南という土地柄、何の業種でもコラボしやすいのがビーチサンダルのいいところです。また、どの企業様も環境に優しい取り組みをしていますので、お互いのコンセプトが合うということが一番だと思います。
自分から門戸を叩いたところも多くありますが、まず断られないのは、時代が変わり、環境への意識、国産のモノづくりへの意識が変わってきたことも後押ししているのかもしれません。この夏には、ふるさと納税のほぼすべてのサイトに掲載されます。藤沢市の職員の方からのご提案を受けて出したもの、百貨店から「当社の特選で出さないか」と言われて出したもの、きっかけはいろいろありますが、ぜひふるさと納税をご検討されている方は探してみてほしいです。
――今後の展望をお聞かせください。
ふるさと納税など、身近なところで手に取ってもらえることがいろいろな方に知っていただける良いきっかけになると思っています。その選択が環境問題の改善にもつながっていけばいいなと思っています。
企業と組むと、広がりを加速化できます。今後もいろいろな企業とご一緒し、動きを止めないようにしたいです。
あとは、未利用資源の活用、素材のリユース、新素材利用など、新しいことへの挑戦にも継続して常に取り組みたいですね。いずれは、すべてのビーチサンダルが生分解性のものになるかもしれません。近い将来、みんなが環境をが考えてくれる時代になった時にも、他社より一歩先をいった商品開発をしていきたいですね。

<新素材にも常に挑戦>
地球に優しい生分解性国産ビーチサンダルの開発に成功! ~すべては『海を守りたい』という想いから~PR TIMES×【商品概要】
◆商品名:生分解性国産ビーチサンダルSIX LINE(シックスライン)
◆紹介ページURL: https://machipro-eco.com/sixline/
【会社概要】
社名 : 株式会社まちプロ
所在地: 〒251-0045 神奈川県藤沢市辻堂東海岸1-6-28
設立 : 2010年1月5日
代表者: 代表取締役 大槻 洋(オオツキヒロシ)
URL: https://machipro-eco.com/
【お問い合わせ先】
https://machipro-eco.com/inquiry/
info@machipro-eco.com
Instagram:@sixline_shonan